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ボールを蹴って壊したガラスの破片を
女性ガラス職人が再構築?!
女子サッカーWEリーグ優勝トロフィー完成。

2022.3.8
ボールを蹴って壊したガラスの破片を<br>女性ガラス職人が再構築?!<br><small>女子サッカーWEリーグ優勝トロフィー完成。</small>

昨年9月に開幕し、2022年3月5日にシーズンが再開した女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」。その優勝チームに贈られるトロフィーが、先月完成した。

このトロフィー 。デザインもさることながら、その開発ストーリーも、普通のものではない。

なぜトロフィーの多くが、盾やカップのカタチをしているのか?ご存知だろうか。

トロフィーの語源は「戦利品」。つまり戦争で勝った時、相手の盾や鎧など高価な物を持ち帰り飾ったことからはじまっているから、なのだ。

今回、制作を依頼されたクリエーティブディレクター、キリーロバ・ナージャ氏は、このトロフィーの歴史とともに、現代の様々なスポーツや各業界の世界中のトロフィーを徹底リサーチすることから企画をはじめた。

過去の功績や権威を讃える男性的なトロフィーではなく、女性の目線を取り入れたWEリーグらしいトロフィーをつくりたい。そんな想いを共有するWEリーグ岡島喜久子チェアらとの議論を重ねると、彼女たちの間で、あるひとつのアイディアが浮かび上がってきた。

それは、「ガラスの天井」*など女性の前に立ちはだかる障壁としてたとえられるガラスでできた壁を、ボールを蹴って壊し、その破片でトロフィーをつくる、というものだった。

2021年8月。

幕張のJFA夢フィールドに、岡島チェアと各年代のなでしこジャパンが集合。ゴール前に設置されたガラスの壁に向かって、一人一人ボールを蹴った。そして、壊した。

※資質・実績があっても女性を組織内の一定の職位以上には昇進させようとしない、見えない障壁のこと

ボールを最初に蹴る岡島チェア。その後、荒川恵理子選手(ちふれASエルフェン埼玉)、鮫島彩選手(大宮アルディージャVENTUS)、田中美南選手(INAC神戸レオネッサ)の順にガラスの壁に向かってシュートを放った

翌月9月。そのガラスの破片は、九十九里の菅原工芸硝子に届けられた。

数年前よりガラスのリサイクルに取り組んでいるこの工房で、桑升桃子さんはじめとする女性ガラス職人たちの手によって、壊れたガラスの再構築が開始された。

今回のガラストロフィー制作をメインで担当したガラス職人、桑升桃子さん
前例のないトロフィー 完成はたくさんの女性社員の方々の力が合わさって実現した
破片を、また一つひとつ重ねていって再構築して、ひとつの形になって上昇していく、エネルギーが上に向かっていくイメージが形として出せてたらいいかなと思いました」と桑升さんは語る

そして数々の試行錯誤の後。2022年2月。ついにトロフィーが完成。

WEリーグは「Women Empowerment League」の略である。その女性をエンパワーするという理念を込めた「Women Empowerment Trophy」という名称とともに、お披露目された。

お気づきの通り、ガラスを割ったチェアや選手もガラス職人もみんな女性だったが、それだけではない。台座や展示に携わったアートディレクターはもちろんのこと、メイキングムービーの撮影スタッフも、プロデューサーから監督、カメラまで、みんな女性というチームでつくられている。

FIFAのスタッフも見て感動したというこの動画。ぜひ見てみてほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=J1ALDtO1Tsk

着想から完成までのプロセスで、たくさんの女性が関わり、才能を発揮して制作されたWomen Empowerment Trophy。動画の最後のコピーにある通り、たくさんの女性をエンパワーする「未来と可能性の象徴」になっているように感じる。

菅原工芸硝子の作品は
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菅原工芸硝子の作品一覧

 

text : K.Nozomi

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