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経験者が語る、地方移住や多拠点生活
新しいライフスタイルの魅力を発見【前編】

2022.4.9
経験者が語る、地方移住や多拠点生活<br><small>新しいライフスタイルの魅力を発見【前編】</small>

地方移住や多拠点生活への具体的な第一歩として利用できる、地域おこし協力隊の制度。今回は、全国各地で活動していた3名の卒業生に、地域の情報発信や卒業後の生業についてなど、さまざまな地域おこしの在り方やその後の暮らしをうかがいました。

地域おこし協力隊とは?

主に過疎地域などに生活の拠点を移した者を地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として委嘱。隊員は一定期間地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援といった「地域協力活動」を行い、その地域への定住・定着を図る。

接点がなくてもいい!
恋からはじまる地元づくり

下田さんがプロデュースしたキャラクター「りんご飴マン」。“生ゆるキャラ”として、メディア出演やSNSでの情報発信、地域との交流を積極的に行い、地元で認知度も高い

東京で生まれ育った下田翼さん。仕事と並行して学生時代の友人たちと立ち上げたウェブメディアの活動の一環で青森県・弘前市を訪れたところ、人々の温かさや故郷への想いに魅了され、気がつけば週末ごとに訪れるほど青森の虜に。

地元の人たちとの交流を重ねる中で、広告代理店で培ったウェブプロモーションやマーケティングの経験と知識を生かして役に立ちたいという思いが芽生え、2015年に地域おこし協力隊として移住した。

協力隊の活動では、過疎地域に指定されている相馬地区を中心に、それまでなかった地域のホームページやSNSを開設。地元の中心産業であるリンゴ生産の手伝いにも参加し、収穫時期を迎えるまで農家の元へ通って交流を繰り返した。

「それまで地域に関心のなかった人が行事に参加したり、意見を出してくれたりするようになり、人と地域が変わっていく姿を見られたことは協力隊ならではの大きな収穫。仕事を通し、そして実際に移り住むことでしか得られない経験がたくさんありました」

現在もその経験を生かし、ご当地キャラクターやアイドルプロデュースなど、多彩な活動を続けている。

下田 翼(しもだ・つばさ)/青森県・弘前市
移住前|広告代理店勤務
移住後|実業家/映像制作/アイドルプロデュース など

移住者FILE
年齢|36歳 出身地|東京都小金井市
移住前の居住地|東京都杉並区
家族構成|独身
移住のきっかけ|友人と立ち上げたウェブメディアの活動で訪問し、地元の方々の温かさや故郷への想いに惹かれたこと
移住の情報収集先|JOIN移住・交流&地域おこしフェア、ふるさと回帰支援センター
利用した補助制度|特になし

地域おこし協力隊としての活動
期間|2015年5月~2016年4月
活動ペース|週5日、1日8時間程度
主に行った仕事|ご当地キャラクターのプロデュース、メディア出演、SNSの情報発信など
月収|約17万円(+副収入で約8万円)

リンゴアメ
Mail|info@ringoame.co.jp
URL|www.ringoame.co.jp

自分の役割を伝えることが
関係づくりへの近道

コーヒースタンドにはイートインスペースはあえて設けていない。地元の人たちが商店街で購入したコロッケや総菜をベンチで食べながらおしゃべりする光景もよく見られる

「いつかは生まれ故郷の市原市で地域貢献を」。長年そう思い続けてきた高橋洋介さんは、地域おこし協力隊への応募をきっかけに千葉県・市原市にUターン。小湊鐵道上総牛久駅につくったコーヒースタンドは、コーヒーを片手に牛久商店街へ繰り出してもらうための案内所のような役割を担い、商店街でのコミュニケーションなど、地域に新たな風景をつくり出している。

「協力隊は肩書きではなくあくまでも制度」と語る高橋さん。「自分の役割やつくりたい仕事を端的に伝えることを意識し、行動や結果で丁寧に理解してもらうことがとても大事なこと」だと言い、活動の中で常に意識してきた。そうした協力隊での活動で得られた人とのつながりは、卒業後のいまも、仕事にいい影響を与えてくれる。

「コーヒースタンドはコロナ禍で観光客がゼロになりましたが、逆に地元の人たちが毎日のように通ってきてくれる場所になっています。空き家を預かり移住者に貸し出す家守会社では、空き家情報や家主の方を紹介してくれるのも地元の人たち。スーパーもカフェもない場所だけれど、暮らしはすごく豊かになったと感じています」。

高橋 洋介(たかはし・ようすけ)/千葉県・市原市
移住前|デザイナー
移住後|デザイナー/カフェ運営、家守会社運営

移住者FILE
年齢|32歳 出身地|千葉県市原市
移住前の居住地|東京都目黒区
家族構成|(移住前)独身(移住後)夫婦2人
移住のきっかけ|生まれ故郷に帰って地域貢献したい想いがあり、地域おこし協力隊の募集を発見したこと
移住の情報収集先|特になし
利用した補助制度|特になし

地域おこし協力隊としての活動
期間|2017年2月~2020年2月
活動ペース|週3日、1日7時間程度
主に行った仕事|小湊鐵道・上総牛久駅舎内にコーヒースタンドを設立、空き家マッチング会社の設立
月収|約16万円(+副収入で約10~20万円)

#牛久にカフェを作りたいんだ
住所|千葉県市原市牛久897-2 小湊鐵道上総牛久駅舎内
営業時間|7:30〜10:30、13:00〜16:00(土・日曜、祝日は10:00〜16:00)
定休日|月曜
開宅舎
URL|http://kaitaksha.com

目的があれば直感的移住でも生業はつくれる

ワイン醸造を目標にブドウの栽培を行うかたわら、協力隊の活動中に出合った古民家を改装し、自宅兼宿泊施設に。ナチュラルワインや佐渡の食材を使った料理を提供する

2015年から3年間、新潟県・佐渡市で地域おこし協力隊に参加した下川千里さん。応募のきっかけとなったのは、当時パートナーだったご主人がブドウ栽培からのワイン醸造を志したのを機に、移住先を探しはじめたことだった。候補地の条件は、ワイン醸造の未開拓地であること。この条件を満たし、人との縁や離島であることに直感的に惹かれ、佐渡島を選んだ。

「移住の最初のハードルである家と仕事、このふたつが3年間得られるという点が、協力隊の最大のメリットでした。暮らしと心に余裕が生まれ、じっくりと地域に溶け込んでいくことができたと思います」

着任前から、任務終了後のイメージもしっかりともっており、現在は古民家を改装して宿泊施設を経営。

「家とのめぐり合いから改修の協力者、宿のお客さまなど、協力隊の活動中に出会った人たちとの縁が生かされています。そのおかげで、縁もゆかりもない土地で生業を起こせていることは間違いありません」

いまでは一島民として佐渡島を訪れる人を受け入れる立場に。島外からやってくる旅人との一期一会を楽しみながら、佐渡の魅力を実感する日々を送っている。

下川 千里(しもかわ・ちさと)/新潟県・佐渡市
移住前|PRプランナー
移住後|農家民宿オーナー

移住者FILE
年齢|33歳 出身地|埼玉県狭山市
移住前の居住地|東京都品川区
家族構成|(移住前)パートナーと2人(移住後)夫婦2人
移住のきっかけ|国内でブドウ栽培からワイン醸造ができる未開拓の地を探しており、移住先探しの旅の中で地域に惹かれたこと
移住の情報収集先|某メディア主催の移住イベント
利用した補助制度|青年就農給付金(就農前の研修を後押しする資金として最長2年、年間最大150万円を交付)※配偶者が利用

地域おこし協力隊としての活動
期間|2015年3月~2018年2月
活動ペース|週5日、1日7時間半程度
主に行った仕事| 商店街のイベント企画や広報など
月収|約13~14万円(日給制のため出勤日による変動あり、副業なし)

Andante 葡萄農家の宿
住所|新潟県佐渡市大倉谷672-3
料金|1泊7150円~(税・サ込)※食事料金別(朝食1320円、夕食3300円)
IN|16:00 OUT|10:00
URL|https://andante-sado.com

 

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text: Miki Yagi photo:Tomohiro Mazawa,Hikaru Tanaka
Discover Japan 2022年3月号「第2の地元のつくり方」

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