吉田真一郎「白の気配」展
暗の空間から見える“白”本来の姿。
HOSOO GALLERYは、これまでに織物をメディアとして捉え、布の歴史と未来を考察していく中で、織物を通じ「美とは何か」を問う様々な企画展示を発表してきた。2020年より「HOSOO STUDIES」を立ち上げ、染織にまつわる歴史文化・技巧を、オーラルヒストリーを中心に収集・アーカイヴし、文献調査と合わせてリサーチの活動を展開している。
この展覧会は、リサーチ活動の一環として、美術家であり、自然布の蒐集家・研究家として知られる吉田真一郎氏とともに、作品「白」を公開。本作は、吉田が自身のルーツを模索し、麻布(大麻・苧麻)を蒐集し続ける中で、40年の歳月を経て完成した作品となっている。
HOSOO
『細尾』は元禄年間(1688年)、京都西陣において大寺院御用達の織屋として創業。京都の先染め織物である西陣織は1200年前より貴族をはじめ、武士階級、さらには裕福な町人達の圧倒的な支持を受けて育まれてきた。『細尾』は今、「帯」や「きもの」といった伝統的な西陣織の技術を継承しながら、革新的な技術とタイムレスなデザイン感性を加えることによって、唯一無二のテキスタイルを生み出し、国内外のラグジュアリーマーケットに向けて展開。
吉田真一郎(よしだ・しんいちろう)
1948年、京都府生まれ。近世麻布研究所所長。20代から絵画制作を始める。75年に西ドイツへ渡り、現代美術家のヨーゼフ・ボイスに出会い、帰国後、ボイスの影響から古美術や民俗学を独学で勉強し始める。江戸時代の苧麻布、大麻布の繊維と糸の研究を発表してきた。主な博物館展示に、奈良県立民俗博物館「奈良晒」展、滋賀県愛荘町立歴史文化博物館・東近江市立能登川博物館「高宮布」展、新潟県十日町博物館「四大麻布」展などがある。2012年、国立民族学博物館「布と人間の人類学的研究」にて研究発表。共著に『別冊太陽 日本の自然布』(2004年/平凡社刊)がある。2018 年には、麻布の蒐集と研究が評価され、第6回水木十五堂賞を受賞。
白とは、光の状態を示す言葉。光の観点から捉えると、白とは様々な色の波長が混じり合った未分化な状態を指す。一方、色の観点から捉えると白とは「素」であり、素材そのままの状態を表す。
古来、日本において最も身近な繊維の一つであった大麻繊維は、生成りの状態でも水につけて日光に晒せば白く色が抜けていく。このように、白とは日光によって素材の色が失われた「空」の状態でもある。
ここに展示される作品は、全て同じ平織、同じ大麻繊維によって織られた布だが、並べてみると織りや糸の加減が、それぞれの布に微妙な明暗の差を与え不思議な気配を纏って浮かび上がる。
この展覧会は「白」を主としつつ、対となる新作「黒」も公開。これらの作品を色や素材の意味世界から離れ、暗の空間の中で、ただ眺めていただくことに主眼を置くものだ。作品を通じ、吉田が40年に亘り、白く晒された大麻布を観察し続ける中で到達した、物事を見ることの難しさを感じられるだろう。
吉田真一郎「 白の気配」
会期|2022年3月20日(日)まで開催中
会場|HOSOO GALLERY(京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F)
Tel|075-221-8888
開館時間|10:30〜18:00(年末年始、祝日を除く、入場は閉館の15分前まで)
入場料|無料
https://www.hosoogallery.jp/
Photo by Kazuomi Furuya Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]