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日本茶のスペシャリスト山上昌弘さんに聞いた“日本茶のいま”【Part 2】

2021.11.13
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日本茶のスペシャリスト山上昌弘さんに聞いた“日本茶のいま”【Part 2】

便利さではなく心の豊かさを重視する方向に世の中が変わる中、手間をかけてお茶を淹れる時間が見直されています。楽しみ方の多様性がますます広がっている“日本茶のいま”の動向を日本茶のスペシャリストである山上昌弘さんにうかがいました。

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KEYWORD 04
コロナ対策にも?日本茶が健康にいい理由

お茶は古来、健康長寿の秘訣とされてきた。特にお茶に多く含まれる成分・カテキンの抗酸化作用や、テアニンの抗ストレス効果などが挙げられる。煎茶なら、カリウムやビタミンCを手軽に摂取できる。コロナなどのウイルスに対しては、変異に関係なくウイルスのスパイクタンパク質にカテキンが結び付くことで感染力を抑制すると知られている。そして人類が長く飲み続けている安心感と、心身にとって総合的によい効果があると体感されているのが大きな魅力だ。

KEYWORD 05
品評会でも個性を評価できるように

日本茶業会で昔から行われているのが「全国茶品評会」。茶業者が自分たちの製造技術を向上させる目的で行われ、採点は減点方式。ゆえに、最近のワインのように個性を評価するには向かない。そこで、個性の強いお茶もきちんと評価したいと生まれたのが「日本茶AWARD」だ。予選を勝ち抜いたお茶は、決勝の舞台で一般人も参加し、茶種のカテゴリーも超えてナンバー1を決定する。

<日本茶関連の主な品評会&コンテスト>

全国茶品評会
全国茶生産団体連合会ほか主催。お茶のプロが栽培・製造技術者の最高峰を決める。各部門最高賞が農林水産大臣賞。次回第75回を11月に開催予定。

日本茶AWARD
日本茶インストラクター協会ほか主催。一般人や多分野のスペシャリストが参加し、個性的で消費者が好むお茶も評価される。

https://nihoncha-award.jp

世界緑茶コンテスト
世界緑茶協会主催。ボトリングティーも含め、商品コンセプト、ネーミング、パッケージデザイン、コストパフォーマンスなどの総合的な商品性を競う。

全国茶審査技術競技大会(闘茶会)
全国茶業連合青年団主催。茶業者の審査技術を高めるための競技会で、さまざまな鑑定やテイスティングにより日本一を決定する。最高位は十段。

KEYWORD 06
日本茶の多様性を広げる注目の生産者たち

テロワール由来の繊細な香りを大切にする「山のお茶」、生産者の技により生み出される香りと飲み応えある「里のお茶」。前者はボディはミディアムでシャープな苦み・渋みがあり、水色は金色透明。後者は濃厚で鮮やかな緑色の深蒸しに仕上げられることが多く、しっかりとした旨みとボディをもつ。

名実ともに手もみ茶日本一

茶工房 比留間園(埼玉県狭山茶)
「色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす」とうたわれる銘茶の里で、極上手もみ茶、微発酵煎茶、半発酵茶など個性豊かなお茶を生産。お茶通が絶賛する茶園。

住所|埼玉県入間市上谷ケ貫616
Tel|0120-51-4188
gokuchanin.com

第28回全国手もみ茶品評会で日本一に輝いた手もみ茶。熟練の茶師が2日かけてつくり上げる芸術品。2021年版もまもなく販売予定。

日本で一番高価な茶
日本一の手もみ茶2020
6480円(3g/袋)

段々の石垣畑に茶畑が縞模様を織りなす

茶蔵園(美濃白川茶)
岐阜県東部の東白川村。450年ほど前、宇治から茶の実を持ち帰った蟠龍寺(ばんりゅうじ)の住職が広めたとされる。急峻な山間の地形が独特の味と香りを育む。

住所|岐阜県加茂郡東白川村越原1061
Tel|0574-78-3123
www.sakuraen-tea.jp

蟠龍寺参道の石垣に自生する在来種を守り、受け継いできたもの。生産量が極めて少ないためほとんど流通せず、小誌の限定販売。

大門茶
1080円(30g/袋、100袋限定)

静岡・天竜川沿いに開けた茶処

カネタ太田園(静岡県天竜茶)
標高が高く川霧が育むお茶として名を馳せてきた。天竜茶の持ち味である爽やかな香気と水色、力強い旨みがある。30万円の最高級ボトリングティーの原料茶も提供。

住所|静岡県浜松市天竜区西藤平36-1
Tel|053-928-0007
www.kanetaotaen.jp

手摘みのやぶきたを使用。数々の日本一を受賞したお茶名人がつくり、山のお茶本来の旨みと口の中に残る爽やかな甘みがある。

山育ちのお茶
1080円(30g/袋)

世界農業遺産認定の環境と共生する茶農家

つちや農園(静岡県川根茶)
川根地域でも標高の高い斜面。ススキなどの有機物を茶園に投入する伝統的な茶草場農法で生物多様性を育んできた。山のお茶ならではの爽やかな香りと上品な旨みを楽しめる。

住所|静岡県榛原郡川根本町水川972
Tel|0547-56-0752
www.tsuchiya-nouen.com

品評会出品茶と同じ方法で栽培された手摘みのやぶきたを使用。新鮮な香りと濃厚な旨みがある優雅な味わい。

極上 天空の風
2808円(90g/袋)

自然自生の茶木を自然農法で育てる

国友農園(高知県りぐり山茶)
人里離れた山深い森に自生する茶の木を開墾し、昔ながらの自然農法で育て上げた「りぐり山茶」。蒸し製法ではなく、あえて釜炒りで山茶の隠れた香りを引き出している。

住所|高知県吾川郡いの町小川東津賀才206-2
Tel|088-867-2544
www.kunitomo-f.co.jp

岩場で野生に近い状態で育つお茶は岩のミネラルを吸収し、口当たりが柔らかくすっきり。余韻を長く楽しめる。

​​りぐり山茶:龍
3240円(30g/袋)

玉露や手揉みの高い技術を誇る

栗原製茶(福岡県八女茶)
創業70年、八女地方のさらに山奥の矢部村で4代にわたりお茶づくりを続ける茶農家。標高700mの急峻な谷に囲まれ、日照時間が短い環境でつくられる玉露が評判。

住所|福岡県八女市矢部村北矢部4236
Tel|0943-47-2073
www.e-yamecha.com

約20日覆いをかけ旨みをしっかり蓄えた茶葉を手摘みに。福岡県茶業共進会玉露の部で農林水産大臣賞を受賞。

八女伝統本玉露 匠
1620円(50g/袋)

くるっと丸まった「蒸し製玉緑茶」

茶友(長崎県そのぎ茶)
長崎・大村湾に面した東彼杵(そのぎ)町で50年続く茶農家。新芽に稲藁をかけ丁寧に育み、蒸し製玉緑茶に仕上げたお茶は、日本茶AWARDで日本茶大賞を2回受賞した逸品。

住所|長崎県東彼杵郡東彼杵町一ツ石郷874
Tel|0957-47-0611
chayou.jp

濃厚な旨みがあり天然玉露と称される品種あさつゆを使用。口中に茶葉の甘みと藁掛けのやさしい香りが広がる。

あさつゆ
1620円(100g/袋)

※農作物であるお茶、特にシングルオリジン(単一農園、単一品種)は、ロットや年ごとに微妙に味が違うのが通常。一期一会の味わいを楽しんでください。

 

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supervision: Masahiro Yamagami
text: Yukie Masumoto photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」

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