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日本茶のスペシャリスト山上昌弘さんに聞いた“日本茶のいま”【Part 1】

2021.11.13
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日本茶のスペシャリスト山上昌弘さんに聞いた“日本茶のいま”【Part 1】

便利さではなく心の豊かさを重視する方向に世の中が変わる中、手間をかけてお茶を淹れる時間が見直されています。楽しみ方の多様性がますます広がっている“日本茶のいま”の動向を日本茶のスペシャリストである山上昌弘さんにうかがいました。

山上昌弘さん
企業で酒・調味料の研究開発に従事後、飲料スペシャリストとして大学などで1万人以上を指導。農研機構 世界茶講師、日本茶インストラクター、式正織部流茶道、茶健康科学講師、日本食文化会議、ジャパンビアソムリエ協会会長。著書に『知識ゼロからの日本茶入門』(幻冬舎)ほか

KEYWORD 01
旨みから「香り」重視へ

ワインやコーヒーなど異業種のプロが香り高いお茶を求め、出汁のような強い旨みを魅力に感じない若者が増える昨今。「よい日本茶=旨みが強い」というだけではなく、香りや個性を重視する流れがある。

品種では、「香駿」、「藤かおり」といったアロマティックな香りをもつものが、品種茶として人気が高まっている。産地でいえば、山間地のお茶に注目。斜面で水はけがよく、昼夜の寒暖差の大きい山のお茶は、テロワール由来の青々しくもフローラルでハーバルな香りがあり、香りを生かすために最小限の火入れの伝統製法で仕上げている。

繊細なお茶の香りをより感じるには冷茶もいい。ナチュラルな水色とともに楽しみたい。

<シングルオリジンの茶葉が買える店>
ワインのようにお茶を楽しみたい人に

100年近い樹齢の実生手摘み茶やシングルオリジンの品種茶が揃う。築地蒼風は日本最高の茶師と名高かった築地勝美さんの後継者が生産。豊かな旨みと花のような芳香をもつ。

錦園 石部商店
築地蒼風
3240円(50g/袋)
※購入は静岡伊勢丹B1Fおいしいふるさと村にて
住所|静岡市葵区山崎2-8-3
Tel|054-278-6895
www.nishikien.com

フランス人店主が惚れた日本茶の数々

数十種類の単一農園のお茶を扱い、職人がつくる急須も取り揃えている。静岡の山間地にある本山・梅ヶ島エリアは独特の香気のあるお茶をつくることで知られ、品種さやまかおりの芳香が最大限に引き出されている。

青鶴茶舗
本山煎茶 梅ヶ島 戸持 さやまかおり
1200円(100g/袋)
住所|東京都台東区谷中3-14-6 海野ビル104
Tel|03-5842-1315
www.thes-du-japon.com

<香り高い品種といえばこちら!>

【王道】
やぶきた
生産量の7割以上を占め、ワインにたとえれば万人に愛されるシャルドネ。繊細で上質な香り、余韻、戻り香を楽しめる。

ワイングラスなら、口径が大きく味わいの要素をバランスよく楽しめるシャルドネ用がおすすめ

【注目品種】
香駿
蘭やジャスミンのような、お茶の常識を覆す華やかな香り。味わいは軽やか。

藤かおり
藤の花のように上品で気高い香り。旨みが強く、余韻にほどよい渋みを感じる。

蒼風
蒼い爽やかな風やフルーティなマスカットを思わせる香り、旨みと甘みが特徴。

静7132
静岡市清水では別名「まちこ」。ほのかに桜葉の香りがして爽やかな余韻がある。

印雑131
アントラニル酸メチルを含み、強く甘い花香が個性的。存在感のある渋みをもつ。

香寿
静岡有数の茶処・本山のごく限られた地で栽培。マスカットに似た熟果香がある。

みなみさやか
クチナシなどオリエンタルな花香が特徴。釜炒り茶や発酵茶にされることも多い。

さやまかおり
凛とした花を思わせる清涼感のある香りを秘め、重厚なコクと渋みを味わえる。

KEYWORD 02
世界も日本茶に注目!

日本茶の輸出は右肩上がりで、昨年は輸出量、輸出額ともに過去最高を記録。欧米での日本茶の主流は抹茶ラテや加糖したグリーンティーなどだが、近年は煎茶をリーフで楽しむ人も増加。ナチュラルな緑の風味をそのまま感じて体内に入れることがヘルシーでクールだからだ。特にフランスでは日本の禅に共感する人も多く、日本的な煎茶の楽しみ方が広がっている。

パリ日本茶コンクール
日本茶専門店や、日本茶をメニューに取り入れるレストランが急増するパリ。一流シェフやバイヤー、食のプロによる審査会を開催し、注目を集めている。

https://japaneseteaselection-paris.com

KEYWORD 03
一般煎茶の数倍の香り!?酵素発酵茶がすごい

日本茶は品種特性、産地特性、製造特性で個性が生まれるが、製法にこだわって香りを生み出している一例が、「山梨商店」の「La 香寿」だ。もともと香り高い茶葉を、茶葉そのもののエキスで発酵させる特許製法により、香り成分を蒸し製法の数倍にも高めることに成功。茶葉がもつ香りのポテンシャルを最大限に引き出したお茶として注目を集めている。

新製法で香り高い究極のお茶を開発

独自製法による荒茶の火入れで知られる製茶問屋。「La香寿」は、もともと香り高く稀少な「香寿」を用いた酵素発酵茶。フルーティな香りが特徴で、マスカットに似た熟果香、ジャスミンのような芳香を感じられる。

山梨商店
La香寿
1080円(30g/袋)
住所|静岡県静岡市葵区一番町80
Tel|054-252-0503

 

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supervision: Masahiro Yamagami
text: Yukie Masumoto photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」

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