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京都人・柏井壽が教える、
この秋の京の奥のめぐり方【後編】
《神光院、西方寺、紫竹貴船神社》

2021.10.23
京都人・柏井壽が教える、<br>この秋の京の奥のめぐり方【後編】<br><small>《神光院、西方寺、紫竹貴船神社》</small>

京都人・柏井壽さんに、ガイドブックでもあまり書かれていない、京都の神髄に触れるめぐり方を案内いただく本企画。後編では、神光院や西方寺、紫竹貴船神社など、東へ西へジグザグに南へ下っていきます。また京都旅には欠かせない、知られざる「食」の名店もご案内。

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神光院と西賀茂大将軍神社

神光院の本尊は、真言宗の開祖・弘法大師空海で、「厄除け大師」として信仰される

次なるお寺は「神光院」。京都三弘法のひとつで、夏に行われる「きうり加持」という厄除祈願の行事で知られています。

1217年に上賀茂神社の神職・賀茂能久が——霊光が照らした地に一宇を建立せよ——との神託を受けて建立したことから神光院と名づけられたお寺は、幕末の女流陶芸家で、歌人でもある太田垣蓮月が晩年に隠棲していた寺としても知られています。

そのすぐ西南に位置する「西賀茂大将軍神社」は京都の北方を守護する役目を担っています。

江戸時代には「一村一社」と呼ばれるほど、多くの大将軍神社が建立され、いまも京都の各地に残っています。いわゆる産土神として地域の信仰を集め、地元住民に親しまれています。

本殿は上賀茂神社の摂社から移築された由緒正しき建築で、本殿前につくられた「立砂」も本家さながらです。

また境内に生い茂る大木は、輪廻によって再生した「実生の木」であることから、「世代受け継ぎの木」と呼ばれ、老舗の主人にも崇拝されています。境内3カ所の朱色の玉垣で囲まれた場所がそれです。京都に長く続く老舗が多いのは、この社のご利益かもしれませんね。

西賀茂大将軍神社は一間社流造で、賀茂社最古の建物とされ、1985年に京都市指定有形文化財に指定

神光院
住所|
京都府京都市北区西賀茂神光院町120

西賀茂大将軍神社
住所|
京都府京都市北区西賀茂角社町129

西方寺→久我神社→紫竹貴船神社

浄土宗の寺院で、本尊は阿弥陀如来。慈覚大師(円仁)による創建と伝えられる

少し西へ行ったところにある「西方寺」は〈もうひとつの苔寺〉と呼ばれ、同じ読みの「西芳寺」に負けず劣らずの苔が見事なお寺です。

京の夏に終わりを告げる「五山の送り火」のひとつである「船形」のふもとにある西方寺には、先述した太田垣蓮月や、北大路魯山人の墓があることでも知られています。

ここから少し南に下ると、上賀茂神社の境外摂社の「久我神社」があり、航空安全の守り神としても知られていますし、さらに南に下ると「紫竹貴船神社」があり、ここも久我神社と同じく、ふたば葵を神紋としています。

西賀茂界隈はさほど広くなく、ほぼ住宅街なので、気軽に逍遥でき、しかも知られざる古刹名所が点在しています。加えて美味しいものに事欠かないのも、洛奥逍遥の魅力のひとつです。

紫竹貴船神社は北区に3カ所ある貴船神社のひとつで、水難除けの御神・高 神が祀られている

西方寺
住所|
京都府京都市北区西賀茂鎮守菴町50

紫竹貴船神社
住所|
京都府京都市北区紫竹西北町55

洛奥の味処

和菓子店「御菓子司 霜月」。写真の木の芽琥珀は、店主・水田良明さんが考案。季節ごとに7種類の琥珀を製造販売

上賀茂エリアでは、人気割烹の「京 上賀茂 御料理秋山」が一番のおすすめで、ランチを予約しておきたいところです。お菓子なら「神馬堂」のやきもち、漬物なら「京都なり田」がお土産に最適でしょう。

西賀茂でのおすすめは「パティスリー 菓欒」。西賀茂チーズというチーズケーキが人気です。

和菓子なら「御菓子司 霜月」です。地元民に愛される気軽なお店ですが、「琥珀」という季節替わりの小さな干菓子は、茶人好みの愛らしくも粋なお菓子です。

気軽なランチにおすすめなのは、洋食の「舟形」と、中華の「中華料理 紅華」です。どちらも予約要らず、行列無縁の地元密着型ながら、美味しくて安くてボリューミーなランチを満喫できます。洛奥逍遥の行き帰りにぜひ立ち寄ってみてください。美食の街京都の奥深さを実感できるでしょう。

住宅街にある知る人ぞ知る洋食の名店「舟形」。タルタルやデミグラスなど自家製ソースが絶品
地元民に愛される町中華「紅華」。早く安く旨い料理を食べてほしいと、ランチはライスとスープがおかわり自由

御菓子司 霜月
住所|
京都府京都市北区西賀茂榿ノ木町5
Tel|075-491-5556

舟形
住所|
京都市北区西賀茂大栗町71-2
Tel|075-492-9485

中華料理 紅華
住所|
京都府北区大宮南椿原町21-3
Tel|075-493-5046

text:Hisashi Kashiwai photo:Hisashi Kashiwai
Discover Japan 2021年10月号「秘密の京都?日本の新定番?」

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