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日本庭園が主役の美意識が行き届いた日本旅館「庭園の宿 石亭」

2019.10.22
<b>日本庭園が主役の美意識が行き届いた日本旅館「庭園の宿 石亭」</b>
遊遷の1階。和室からは庭が一望。縁側からすぐに庭に出られる

日本三景のひとつ「宮島」を対岸に望むロケーションにある「庭園の宿 石亭」。この宿の特徴は美しい日本庭園。この庭園を囲むように客室は配されている。名物の穴子やカキをはじめ、瀬戸内名物の美味が待つ美食の宿でもある。

中守庵のテラス。こんな気持ちのいい場所がたくさんある

広島県宮浜温泉といっても、知る人は少ないだろうが、日本三景のひとつである宮島の対岸にある温泉、といえば大方の日本人なら場所の見当はつくだろう。その宮浜温泉に「庭園の宿 石亭」がある。この宿はその名の通り、日本庭園が主役になっていて、この庭と一体になって楽しむことを要諦としているのだ。

日本旅館を構成する大切な要素のひとつに、日本庭園がある。ガーデンではなく庭園。日本庭園は寺をはじめ、日本建築に不可欠な付随物として、独特の発展を遂げてきたものだが、その基本は「池泉回遊式」と呼ばれる、池を中心とした庭園である。池泉回遊式は目と心を休めるための庭である。

床下と呼ばれるライブラリースペースにはハンス・J・ウェグナーのベアチェアがお待ちかね

多くの日本旅館に庭は付きものだが、庭を中心に据え、その周りを囲むようにして客室をしつらえている宿はそう多くない。なぜなら、庭を共有するということは、客同士が絶えず視線を行き来させることになるからだ。ことのほか、プライバシーを声高に主張する向きには不具合なのかもしれない。

客室すべてがこの庭に面して窓を開いているから、部屋の中にいると、時折り、庭を歩く目線が届くことがある。すぐ部屋にこもりたがるイマドキのカップルは苦手とするかもしれないが、それを補って余りある魅力がこの庭には秘められている。

手入れの行き届いた芝を踏みしめ、池で跳ねる鯉の水音に心を騒がせる。庭のそこかしこにある東屋でしばしまどろむ。思い立ってフロントに連絡すればスプマンテなぞを運んで来てくれる。池のすぐ前にあるライブラリーやラウンジで、ぱらぱらとページをめくるのもいい。ゆるゆると流れる時間は、この庭があればこそだ。

中守庵の隣にある貸し切り風呂。深夜でも貸し切り可能。2階はリビングがあり、ゆったり寛げる

無防備な姿をさらす風呂となれば、さすがにこの庭の中で、というわけにはいかないが、それでも宿の名に恥じない庭園を備えた温泉があり、ここもまた開放感に身を委ねる至福の時間が味わえる。

庭よし、湯よしの宿はさらに、部屋のつくりも洗練されていて、すべての客室はデザインも違えば、つくりもまったく異なる。極めて使い勝手のいい客室になっていることだけは、どの部屋も同じだが。

石亭名物の穴子茶漬け。シソ、ワサビをお好みで入れていただく。〆であるが、思わずお代わりしたくなる

そして料理。実はこの宿の母体は宮島口で行列の絶えない店として知られる「あなごめし うえの」。日本一の駅弁とも称される“あなごめし”はいつ、何度食べても美味しい。そんなわけで、宿の食にも抜かりはない。穴子はもちろん、冬のカキをはじめとする瀬戸内の幸や、地の野菜を洗練の技で調える。

庭園の宿は美食の宿でもある。ワインや地酒のセレクトも見事なら、家具や調度のセンスもいい。庭園のみならず、すべてが美しい日本旅館である。

庭園の宿 石亭
住所:広島県廿日市市宮浜温泉3-5-27
Tel:0829-55-0601
Fax:0829-55-0603
E-mail:info@sekitei.to
客室数:12室
料金:3万1470円〜(税込)
カード:AMEX、DC、JCB、MASTER、UC、VISAほか
IN:15:20 OUT:10:20
夕食:会席料理(部屋食) 朝食:和食(食事処または部屋食)
温泉:宮浜温泉(単純弱放射能泉/源泉掛け流しではない/加温あり/加水あり/神経痛、筋肉痛、慢性消化器病など)
風呂:大浴場男女別各1(14:00〜12:30、温泉)、露天風呂1(温泉)、貸切風呂(無料、温泉)、部屋風呂全室アクセス:車/山陽自動車道大野ICから約10分 電車/JR山陽本線大野浦駅から送迎あり(要予約)
館内施設:サロン、カフェ、ライブラリー、庭園
Wi-Fi:あり
www.sekitei.to

文=柏井 壽 写真=野口祐一
Discover Japan_TRAVEL「味わいの名宿」