FOOD

《ビリヤニ大澤》の魅力を
料理家・樋口直哉が紐解く
前編|ビリヤニ文化を日本で広める大澤さんの挑戦とは

2026.1.1
《ビリヤニ大澤》の魅力を<br>料理家・樋口直哉が紐解く<br><small>前編|ビリヤニ文化を日本で広める大澤さんの挑戦とは</small>

インドやパキスタンで愛されるスパイスを使った炊き込みご飯、ビリヤニ。同じ米食文化ながら、日本ではこれまで馴染みが薄かったビリヤニに、いま熱い注目が集まっている。その立役者の一人が「ビリヤニ大澤」の大澤孝将さん。一度食べたら忘れられない。また食べたくなる……。そんな大澤さんのビリヤニを通じてビリヤニの日本での可能性を、作家で料理家の樋口直哉さんが探る。

文=樋口直哉(ひぐち なおや)
作家・料理家。料理教室勤務などを経て、2005年『さよならアメリカ』で作家デビュー。料理家としても活動。著作は『料理1日目』(光文社)など多数。

ビリヤニ大澤が開く
新たなビリヤニの世界とは?

「ビリヤニ大澤」を象徴するのがマトンビリヤニ。スパイスとマトンの香りをふんわりと軽やかに炊き込んだ、湯気上がるビリヤニ。ひとさじごとに違う味わいを見せる重層的なスパイスとマトン、バスマティライスの表情に痺れるひと皿

ビリヤニとは、スパイスと肉(または魚、卵、豆、野菜など)と長粒米(バスマティライス)を層にして炊いたもの。

インド・パキスタンを代表する米料理だが、中東や東南アジアでも親しまれ、現地では日常的に食される一方、「手の込んだおもてなし料理」として結婚式や宴会などハレの日にも提供されている。日本でも各地方で料理が異なるように、インドにおけるビリヤニも多種多様。味わいやつくり方もさまざまだ。

オンラインでの販売用に仕込んだ80人前の大鍋ビリヤニの炊き上がりは圧巻! バスマティライスの粒立ちぶりは、ため息ものだ。白いバスマティライスの下にはマトンが潜んでいて、底からすくい上げるとスパイスの湯気を立てながら登場する

いまでこそ日本でもビリヤニは注目されているが、数十年前までビリヤニは、日本人がまだ知らない料理だった。ビリヤニは手間がかかるうえ、大鍋でたくさん炊く必要があり、通常のお店のオペレーションでは提供しづらかったからだ。

その状況を変えたのが「ビリヤニ大澤」の店主・大澤孝将さんである。

挽きたてのコリアンダー、ブラックカルダモン、クローブ、メース、ブラックペッパー、カルダモンのブレンドの香りに顔をほころばせる樋口さん

南インドを訪れたときに食したビリヤニに衝撃を受け、日本に帰ってから食べられない状況を嘆いた大澤さんは、店を貸し切りにして、人数を集めればビリヤニが食べられることを知る。それからSNSで「ビリヤニ」と呟いている人を誘っては、ビリヤニを食べる会を開く。

食べるだけでは飽き足らず、つくり方を習い、研究をはじめインド料理店で働きながら間借りのビリヤニ店を開き、さらにはビリヤニを食べたい人たちが集まるシェアハウス「ビリヤニハウス」を立ち上げた。

神田にある「ビリヤニ大澤」の看板

その後、新型コロナウイルスの流行によって人が集まれなくなったことで窮地に陥るが、クラウドファンディングで資金を集め、2021年8月「ビリヤニ大澤」をオープン。完全予約制、いっせいスタート。提供するのは1種類のみ。ビリヤニが最もおいしい状態で提供できることを追求した結果、導き出された営業形態だ。

「SNSに特に力を入れているわけでもないし、予約制なので気楽に足を運べるお店でもない。それでもお客さんが来てくれるのは、それだけビリヤニという料理が魅力的な証拠」大澤さんはそう言い切る。

line

 

【後編】
大澤さんのビリヤニとの向き合い方

 
≫次の記事を読む

 

text: Naoya Higuchi, Discover Japan photo: Masaharu Okuda
2025年11月号「実は、スパイス天国ニッポン」

東京のオススメ記事

関連するテーマの人気記事