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陶芸家《沼田智也》のうつわ
しゃれっ気のある絵付けに食卓が和む

2025.10.30
陶芸家《沼田智也》のうつわ<br>しゃれっ気のある絵付けに食卓が和む

“楽しく生きる”を大切にする沼田智也さんのうつわは、古典的なかたちや色調、伝統的な文様をベースにしながらもユーモアにあふれ、遊び心が光る。東京・渋谷パルコにて2025年11月8日(土)~11月16日(日)にかけて《沼田智也 個展》を開催。独特の世界観で食卓に華やぎと笑顔をもたらす、沼田さんのうつわの魅力に迫る。

※個展初日の入店について、一部時間帯に整理券が必要です。詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)、または公式オンラインショップをご確認ください。

Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を11月11日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)

沼田智也(ぬまたともや)
1979年、茨城県生まれ。2003年、嵯峨美術短期大学専攻科日本画コ ース卒業。2004年より陶芸家・田中いさお氏に師事。2012 年、愛知県立窯業高等技術専門校を卒業後、郷里に戻り、作陶に励む。

一期一会から生まれる
暮らしに馴染む沼田さんのうつわ

「作品が完全に出来上がるまで、もっと言えば展示されるまで、自分でもどんなものになるのかはわからないんですよ」

個展のテーマについてたずねると、沼田さんはそう教えてくれた。

「つくり手によると思いますが、僕の場合は、『個展のテーマはこれ』と、かっちりと決めてつくるのではなくて、気ままにつくったら今回はこういうものになったということが多いですね」

土練り
粘土の中の気泡を取り除き、硬さを均一にする作業。土を折りたたんで押し出す「粗練り」で土をよく混ぜ全体的に均一にしたら、「菊練り」で気泡を完全に抜いて粘りを出す。菊練りでは、菊の花びらのような模様ができる

沼田さんのうつわづくりは、土練りをして、ろくろで成形することにはじまり、素焼き、下絵を描いて釉掛け、本焼き、上絵を描いて再度焼くという長い工程を経る。全工程を通して意識しているのは、「料理が映えるか」という視点。

「生活の道具としてのうつわをつくっているという想いが強いので、そこは常に意識していますね」

ろくろ挽き
砲弾形にまとめた土を、ろくろを回しながら上下に押して均一にし、中心を出して成形しやすい状態に。成形時は、焼き上がりの縮みを計算して、実際の仕上がりの大きさがわかるように印をつけた自作の物差しを使っている

ただ、たとえばろくろで成形している段階で、こんな絵付けにしようと思い浮かべたとしても、出来上がってみたら、最初に思っていたものとまったく違っていたということもよくあるという。

「陶芸ってそういうものだと思うんです。最初のイメージと異なるものができるのは、もちろんつくり手の気分にもよりますが、素材による部分も大きいと思います。粘土だったり灰だったり、自然のものが素材ですから。僕は素材をコントロールして思ったようにつくるというよりは、どんなものになるかわからないからこそおもしろいという気持ちでつくっていますし、それが自分にとっての楽しみにもなっています」

絵付け
沼田さんの作品の中心である上絵付けは、素焼きした生地に絵を描き、釉薬をかけて本焼き(下絵付け)したうつわに、さらに絵を描き、低温で焼成して完成する。下書きをせず、一発勝負で描くのが沼田さん流

そんな沼田さんが陶芸の道を歩みはじめたのは、陶芸家・田中いさお氏との出会いがきっかけだった。沼田さんは当時、東京のデザイン会社でディレクターとして働く中で、現代のものづくりにおける大量生産・消費・廃棄のサイクルに疑問を抱くようになっていたという。

「そんなとき、友人に誘われて田中さんのところで窯焚きの手伝いをさせていただいたんです。それが本当に楽しくて。自分で調達した本物の素材でものをつくる陶芸は、嘘がない仕事だと身をもって感じました。もともと土だったものがうつわになって、人々の暮らしの一部になる。なんて素晴らしいのだろうと思いましたし、そういう暮らしをしたいと考えました」

身近なものが作陶のインスピレーションに
「海や山に入るほかにも、工房の周りをよく散歩するんです」。そこで目にする季節を映す色や草花、田畑の様子、野生の生き物など、暮らしの中で出合うものが絵付けのモチーフになりやすいという

田中氏の下で修業後、地元・茨城県高萩市に工房を構えた。

「田畑が広がって、海も山も近い高萩は本当にいいところ。両親が農業をやっているため土地があるし、うちの山から土や薪を調達できるのもありがたいですね。いまは僕も田んぼや畑の仕事をしています。そういうものは、思春期という名の反抗期(笑)には見向きもしなかったものばかりですけど、陶芸をやるとなったら、全部が財産になりました」

自然と遊び心が息づく、
沼田さんの“絵付けの世界”

沼田さんの絵付けの代表格であるタコの絵柄は、海に潜って銛(もり)ではじめてタコを捕ったとき、自然の力強さや命と向き合うことへの感動から生まれた

沼田さんの真骨頂といえば独自の世界観が光る絵付け。その源になっているのは、海や山をはじめ、幼い頃から親しんできた故郷の風景や自然とともにある日々の暮らしはもちろん、サブカルチャーが好きなこと、異業種での社会人経験など、沼田さんの人生をかたちづくるすべてといえる。

陶芸をはじめた当初、沼田さんが手掛けていたのは、地元で自ら掘り出した土を手びねりで成形し、自分でつくった穴窯で焼く、素朴で作家性の高いうつわ。その後、愛知県立窯業高等技術専門校を経て、ろくろで成形した絵付けのうつわを手掛けるようになった。

「もともと日本画を学んでいたこともあり、古典文様の染付けのうつわをつくるようになりました。でもあるとき、なんだか物足りなくなっちゃって。落書きをするような気持ちで、UFOを描き添えました。一点もののつもりで出していたら、お客さまやギャラリーの方が『これが欲しい』って言ってくれたんです。そこから、もっと自分らしく自由につくろうと思うようになりました」

とはいえ、奇抜なものばかりをつくりたいわけではないという。古典への敬意や憧憬と、生まれ育った環境や自然とのかかわり、現代を生きる自身の感性とが混ざり合った結果、うつわをつくるそれぞれの工程のその瞬間に出てきたものを、忠実に表現することを心掛けている。

「逆に言えば、それしかできないですし、何が出てくるのかは自分でもわかりません(笑)」

そんな沼田さんのモットーは、“楽しく自由につくること”。だからこそ、“楽しく生きる”ことを大切にしている。

「楽しく生きていれば、そこから楽しい何かがまた出てくると思うので。そしてそれがうつわに投影される。切り離せない部分ですね。そうやって楽しくつくったうつわばかりなので、手に取ってくださった皆さんにも楽しく使ってもらえたら幸せです」

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渋谷パルコ《沼田智也 個展》開催!
個展作品ラインアップ

 
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沼田智也 個展
会期|11月8日(土)~16日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※初日は混雑緩和を目的とした入店整理券を事前配布のうえ開催いたします。
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。

《沼田智也 個展》
01|陶芸家《沼田智也》のうつわ
02|個展作品ラインアップ

text: Miyu Narita photo: Shiho Akiyama
2025年12月号「京都/冬こそ訪れたいあの旅先へ」

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