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鳥取の美意識が育んだ、
民藝とアート。
|歴史的な街に新鋭のアートが芽吹く

2025.9.24 PR
鳥取の美意識が育んだ、<br>民藝とアート。<br>|歴史的な街に新鋭のアートが芽吹く

鳥取砂丘に代表される雄大な自然、豊饒な海と大地が育む食文化が息づいた鳥取県。新作民藝運動が興った鳥取市を中心とした東部、歴史的な街に新鋭のアートが芽吹きはじめた中部の“美意識”を体感する旅へ――。今回は、新たなに誕生した鳥取県立美術館など、アートの街として進化する倉吉のおすすめスポットをご紹介。

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新たなアートの風が吹き込む倉吉

倉吉市に誕生した「鳥取県立美術館」は、新しいアートスポット。自由に寛げる開放的な展望テラスなど、すべての人に開かれ、市民とアートを心地よくつなぐ

倉吉市周辺でも芸術団体「砂丘社」や早世の鬼才画家・前田寛治、版画家・長谷川富三郎らによる民藝運動など独自の芸術が育まれてきた中、2025年3月に開館した「鳥取県立美術館」が斬新なアートの息吹をもたらした。世界的芸術家、アンディ・ウォーホルの作品の購入がアート界を賑わせた県立美術館のブランディング・ワードは“OPENNESS!”。

館内中央、3階まで吹き抜けの「ひろま」は心地よい開放感にあふれ、屋外スペースの「えんがわ」は、国史跡「大御堂廃寺跡歴史公園」とシームレスにつながり、展望テラスから大山の雄姿も望める。多くのゾーンが自由に出入りできるフリースペースとして開放され、「誰もに開かれた美術館」として市民とアートをつなぐ憩いの場だ。

倉吉のレトロな街並みは、室町時代に形成された打吹城の城下町がルーツ。かつての蔵や町家を生かしたカフェやショップ、アトリエなども点在し、街歩きが楽しい

また、倉吉をめぐる上で外せないのが、市のシンボル・打吹山の北側に位置する、玉川沿いの歴史地区。「倉吉かすり」の生産地として栄えたかつての城下町は、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、漆喰仕上げの白壁と赤い石州瓦の白壁土蔵群が趣深い景観を生み出し、江戸・明治期に建てられた蔵や商家の建物がいまも多く残る。歩いているだけで心が和む風情豊かな街には、古くより根づいた個人商店だけでなく、移住者が新たな彩りをもたらしている。

「saon」を営む大家具子さん(左)と中村好伸さん(右)

吹きガラスと音楽のショップ「saon」を営む神戸出身の吹きガラス作家・大家具子さんもその一人。
「地元産のうつわで、地域の食材を使った料理を食べたりと、倉吉は暮らしの中にアートが息づいています。ゆったりめぐればその独特の風土が感じられますよ」

伝統の民藝と新鋭のアートが融合した鳥取の美意識にフォーカスする旅は、心に響く潤いをもたらしてくれる。

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アートを愉しむ
おすすめスポット3選

〈鳥取県立美術館〉
地域に開かれた県立美術館が誕生!

3階まで吹き抜けの「ひろま」は誰でも無料で利用可能。鳥取砂丘の風紋や倉吉絣の織模様を思わせる天井など風土を表現したデザインも魅力

「鳥取県立博物館」の美術部門が独立するかたちで設立。画家・前田寛治や写真家・植田正治といった鳥取にゆかりのある作家を中心に約1万点の優れた美術作品を収蔵。展示だけでなく1階にショップやカフェ、キッズスペースも併設し、交流しながら毎日アートを気軽に楽しめるのが魅力だ。

2階のコレクションギャラリーでは日野郡生まれの世界的彫刻家・辻晉堂の作品を展示。3階では企画展も開催

鳥取県立美術館
住所|鳥取県倉吉市駄経寺町2-3-12
Tel|0858-24-5442
開館時間|9:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日|月曜
料金|入館無料、企画・コレクション展は有料(展覧会によって異なる)
アクセス|車/米子自動車道湯原ICから約50分、中国自動車道院庄ICから約60分 電車/JR倉吉駅からタクシーで約9分、バスで県立美術館前下車すぐ
https://tottori-moa.jp

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〈saon〉
倉吉の空気を作品に昇華する、吹きガラスと音楽の店

店内では、自然光を浴び、刻一刻と表情を変える大家さんのガラス作品を手に取って選べる

宙吹きガラス工芸作家の大家具子さん、ミュージシャンの中村好伸さん夫妻が白壁土蔵群の一画で営むガラスと音楽の店。かつて銀行と宿舎だった古い土蔵をDIYで改装した空間には心地よい音楽が流れ、大家さんの作品や作家仲間の作品、セレクトされた洋服などが並ぶ。

「液体だった気配を残しつつ、ガラスの軟らかさと美しさを大切に、暮らしに合ったうつわをつくっています」と大家さん。インスピレーションと感性にゆだねて生み出す自由で伸びやかな作品は、新時代の民藝と称される。イタリア語で「かばん」を意味する「borsa」は、壁に掛ける花器。曲線が空間の余白に寄り添う。1万9800円
無数の泡を閉じ込めた「泡のうつわ」、遠心力と重力でつくり、ねじることでガラスの軟らかさを表現した「スクリュー」シリーズ、水滴や雲のかけらを想起させるペーパーウェイト「雲粒」、「水粒」など、独自の美意識が光る作品

saon
住所|鳥取県倉吉市魚町2521
Tel|0858-38-9023
営業時間|11:00~18:00
定休日|月・火曜
アクセス|車/米子自動車道湯原ICから約45分、中国自動車道院庄ICから約1時間5分 電車/JR倉吉駅からタクシーで約15分、バスで市役所・打吹公園入口で下車、徒歩約3分
http://saon.jp

 

〈割烹 喜太亭 万よし〉
版画家・棟方志功ゆかりの料亭で松葉がにを堪能

鳥取在住の型染め作家・くじら氏が大山と打吹山、石州瓦をモチーフに描いた暖簾が目印。店内には美術に造詣が深い先代が収集した古道具のギャラリーもある

白壁土蔵群から徒歩5分の場所に位置する老舗日本料理店。かつて世界に名を馳せた版画家・棟方志功むなかたしこうや長谷川富三郎など、芸術家のサロンとして愛された。二人の作品をはじめとした多くの美術品が展示されている空間では、鳥取和牛や地元野菜、日本海の海の幸をふんだんに使用した美食が味わえる。

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冬は、刺身や焼きガニ、カニ鍋など上質な松葉がにが1人1杯半楽しめる「松葉がにコース」が県内外のリピーターに人気。要予約
店名の「喜太亭」は、棟方志功が奥座敷を訪れた際、仲間に「来たでぇ」と言ったことから名づけられたとか。奥座敷は団体で利用可能

割烹 喜太亭 万よし
住所|鳥取県倉吉市仲ノ町766
Tel|0858-22-2778
営業時間|11:30~14:00、17:30~21:00
定休日|月曜(祝日の場合は翌日休) ※夕食は予約制
アクセス|車/米子自動車道湯原ICから約40分、中国自動車道院庄ICから約1時間5分 電車/JR倉吉駅からタクシーで約10分、バスで瀬崎町で下車、徒歩約2分
http://kitatei-manyoshi.com

鳥取の美意識が育んだ、民藝とアート。
01|受け継がれる民藝の神髄に触れる
02|歴史的な街に新鋭のアートが芽吹く!

text: Ryosuke Fujitani photo: Atsushi Yamahira

2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」

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