現代美術館《ラビットホール》
岡山の城下町街道に、 アート誕生。
後編|食文化や教育の発信地でもありました。
岡山市北区丸の内に誕生し、城下町の歴史を見つめながら街と共存する「ラビットホール」は、新しい価値観を常に提示し続ける現代アートに特化した“生きた美術館”だ。また、アートだけではなく食文化や教育の発信地としての役割も担う。ラビットホール別館 福岡醤油蔵のギャラリーや隣接する日本茶専門店「SABOE OKAYAMA」の魅力に迫る。
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〈福岡醤油ギャラリー〉
歴史的な空間で貴重なアートを鑑賞

ラビットホールにほど近い弓之町には「ラビットホール別館 福岡醤油蔵」が建つ。明治時代に醤油蔵などを営んでいた歴史的建造物「旧福岡醤油建物」を当時の面影を残しながらリノベーションし、芸術を中心としたイベントを開催してきたが、ラビットホール開館を機に芸術・食・教育の複合施設として新たなフェーズに入った。

その中で芸術を担う「福岡醤油ギャラリー」では、世界中から独自の視点でキュレーションされた工芸品や現代アートなどを、その時々でコンセプチュアルに展示。彫刻や絵画、映像、出版など多元的な表現形態が世界中で高い評価を得ているイギリス出身のアーティスト、ライアン・ガンダー氏の個展を今春から開催している。

福岡醤油ギャラリー
住所|岡山県岡山市北区弓之町17-35
開館時間|10:00〜17:00(最終入場16:30)
休館日|⽉・⽕・水曜(祝⽇の場合は開館)
料金|1000円、18歳以下無料
https://fukuokashoyu.org
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〈SABOE OKAYAMA〉
日本茶文化を再定義し世界へ発信

隣接するのは、日本茶専門店「SABOE OKAYAMA」だ。日本茶を現代の様式に再定義し、次世代に継承する活動「茶方薈」の実店舗で、茶房と売店で構成される。蔵を改修した茶房では、茶釜から湯気が立ち上る重厚な空間で、厳選した日本茶と季節の和菓子のコース「一服一煎の小茶会」などが楽しめる。

中でも注目が、お茶と酒を融合したオリジナルの「茶酒」だ。注文ごとに目の前で焙煎し、アイリッシュウイスキーのようなスモーキーな香りを引き出した「焙じ茶ハイボール」(上写真左)や、宇治茶と八女茶の玉露をブレンドし、端麗辛口の日本酒と合わせた斬新な「玉露マティーニ」(上写真中央左)など、ほかにはない食体験は国内外の美食家を虜にしている。不定期で地元の茶農家「茶下山」の3代目茶師・下山桂次郎さんが直々に茶を淹れる特別な日も見逃せない。

SABOE OKAYAMA
住所|岡山県岡山市北区弓之町17-35
Tel|086-207-2779
営業時間|売店11:00~17:00、茶房13:00~23:00(日曜、祝日13:00~17:00、祝前日13:00~23:00)
定休日|月・火・水曜(祝日の場合は営業)
https://saboe.jp
〈なる塾〉
子どもの可能性を引き出す取り組み
「ラビットホール別館 福岡醤油蔵」で教育を担うのは、「なる塾」だ。発達障害や知的障害、不登校など、日々の生活に不安をもつ子どもを対象に「なりたい自分になるための塾」は、子どもの可能性を引き出す取り組みを行っている。さらに、ラビットホール、福岡醤油ギャラリーは18歳以下の入館はフリー。定期的に小中学生向けの対話型鑑賞プログラムを無償で開催するなど、石川さんは子どもたちの創造的思考を育む活動への情熱が深い。
「子どもたちの未来が輝けば、世界もまた光を放ちます。現代アートの魅力は、考えを柔軟にして多様な視点を提示してくれること。子どもたちがそれらを体感することで、AIでは代替できない創造力や思考力、ディベート力を養うことに寄与していきたいです」
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岡山観光の未来とは?
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岡山からはじまる瀬戸内文化ツーリズム
01|現代美術館《ラビットホール》とは?
02|食文化や教育の発信地の役割
03|アートを起点とした岡山観光の未来
04|名建築と食を愉しむ11の観光スポット
text: Ryosuke Fujitani photo: Sadaho Naito
2025年8月号「道をめぐる冒険。」



































