愛知県津島市 総本家 角政の「くつわ」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は愛知県津島市にある総本家・角政の「くつわ」を紹介します。
福田里香(ふくだ りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
総本家 角政の「くつわ」は、前回ご紹介した津島神社の神饌「あかだ」と対のように販売している由緒ある門前菓子。開運招福を祈る縁起菓子でもあります。白米ともち米の粉を蒸したものに、砂糖とゴマ麻を和えて餅をつき、団子を輪にして油で揚げたシンプルな製法です。香ばしい味わいに、ついひと袋完食してしまいました。
ドーナツ状の揚げ菓子は、尾張藩主・徳川宗春公が当時の幕府の倹約令に背き、庶民に産業文化の開発を奨励されたのがはじまりで、津島神社の無病息災を願う神事「茅の輪くぐり」の茅の輪をかたどったものだそう。馬のくつわに似ていることが、名の由来といわれています。美味しい上に縁起がいいって最高です。
前号の繰り返しになりますが、お菓子の製法と民藝の手仕事の工程は似ています。もちろんお菓子は“食品”で、民藝は“工芸品”と別物ですが、多くの工程を必要最低限の手作業で行い、気軽に買える値段で売られています。民藝の理念を体感したいなら、実際にくつわの食感を体験してみるのがおすすめです。
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総本家 角政
住所|愛知県津島市馬場町7
Tel|0567-26-2857
営業時間|8:00~19:30
定休日|第2・4水曜
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
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