TRAVEL

山、川、海の循環を体感できる
大分・佐伯の旅【前編】

2023.11.5
山、川、海の循環を体感できる<br>大分・佐伯の旅【前編】

豊かな森、川、海をもつ大分県佐伯市。2023年、その自然を守るための一大プロジェクトが発足した。テーマは「自然の循環」。プロジェクトを通して私たちは何を学べるのだろうか。前編では、佐伯が誇る美しい山、川、海の魅力を紹介する。

佐伯の「浦」を100年先の未来へ

佐伯は大分県随一の漁業生産地。漁獲量は全体で1万8000トン近くあり、大分県の約7割を占める。鯵やブリ、鯖をはじめ、セリ場に集まる魚は日々100種類、年間で350種類以上。栄養を蓄え、どれも特大サイズ! 黒潮にもまれ、身の締まりがよいなど、良質な魚が揃うのも魅力だ

九州最東端で大分県南東部に位置する佐伯市は、九州最大の面積をもち、そのほとんどが森、川、海。豊かな自然環境を生かし、古くから農林水産業が盛んに行われてきた町である。特に漁業は佐伯の一大産業であり、日向灘の荒波にもまれ、栄養豊富な豊後水道で育った魚介は鯵、鯖、鯛、鰯など多種多様。年間350種類以上が水揚げされ、日本トップクラスの漁獲量を誇る。またブリ類、平目、牡蠣を中心とした養殖業では生産量が大分県内の約7割を占め、全国屈指の産地としても知られている。

<山>
森林面積は九州で最大規模

市の約9割が森林で、漁場の豊かさにもつながっている生き物の栄養の“生産地”として活躍。ジビエや広葉樹の原木で栽培されるシイタケなど、森の産品も豊富

漁業が栄えている理由として、佐伯特有の地形である海、「浦」の存在が大きい。漁業の歴史はおよそ400年前、佐伯藩の城下町として栄えた江戸時代にまでさかのぼる。「佐伯の殿様浦でもつ」という佐伯藩を評していわれた言葉が伝えられており、当時から佐伯の「浦」の漁場はとにかく豊かで藩政の経済を支えていたことがわかる。そしてこの海を守るため、藩祖の毛利高政公は山林伐採を規制する触書を出すなど、現代でいうSDGsの先駆けといえる取り組みが行われていた。生き物を育てる栄養素を蓄える山、その栄養素を海へと届ける川の重要性を理解し、自然循環を守ることを推進していたのだ。

<川>
山々のふもとに流れる一級河川の番匠川

佐伯市の三国峠を源に発する清流。52の支流が集まり、佐伯湾へと森の栄養を届ける重要な役割を果たす。透き通るような水質のよさから“本匠ブルー”と称される

2005年、佐伯市は周辺の5町3村と合併したことで、約903㎢の広大な町となった。町全体を見ると、九州山地から続く山間部が多いのが特徴。 人々が暮らす町に沿って流れるのは、「自然の循環」の要となっている一級河川の番匠川だ。森からの栄養分が番匠川によって海へと運ばれることで、いまも海岸線には、多様な生物が集まり、豊かな海が形成されている。川による「自然の循環」は森でも見られる。たとえば、市の南部から宮崎県の県境にまたがっている祖母傾国定公園の一角をなす「藤河内渓谷」では、透き通る清流や巨大な花崗岩など、原生林が生い茂る山道を歩きながら、水による自然の造形美を体感することができる。

<海>
たかひら展望公園から見下ろす佐伯の町と豊かな「浦」

浦とは海岸地帯のこと。豊後水道に面した約270㎞の海岸線が広がり、鶴見や蒲江など日本屈指の好漁場が点在。リアス式海岸が織りなす入り組んだ湾の様子が一望できる

しかしながら、佐伯市ではここ数年、漁獲量が減少傾向にあり、その問題解決には、佐伯藩の言葉に倣い「浦の恵みは山でもつ」として、海を守るための森、川の保全活動、「自然の循環」を知ることが大事だと考えている。今回、そんな自然の循環が肌で感じられる体験をふたつ紹介しよう。

line

 

≫次の記事を読む

 

text: Manabu Kubota photo: Hiromasa Ohtsuka
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」

大分のオススメ記事

関連するテーマの人気記事