『Kabi』目黒の発酵ガストロノミー
最先端レストランのトップシェフは発酵の力に気づいていた!
北欧を中心に西洋料理に新たな風を生んだ発酵。今回はデンマークと日本料理の共通性から生まれた斬新なスタイルとして注目されている目黒のレストラン「Kabi」(カビ)の新しい日本料理の魅力をご紹介。
安田翔平さん大阪の料理学校卒業後フランスへ。帰国後大阪や都内のレストランで働く。2015年からデンマークの二つ星レストランKadeauでシェフとして活躍。共同経営でソムリエの江本さんと2017年にKabiを開店。
デンマークに行ってはじめて日本の発酵の魅力に気づきました
酢漬けやぬか漬け、味噌といった発酵調味料を多用した料理で、新スタイルの日本料理を提供するKabi。その店名からも発酵に特化していると思われがちだが、フレンチの経験を積み重ねてきたシェフの安田翔平さんが料理に発酵を用いるようになったのは、デンマークの二つ星レストランKadeau(カドー)に行ってからだという。
「北欧では日本と同様、保存のために発酵させる文化があります。ピクルスだけでつくる料理もありますが和食でぬか漬けをメインにはしません。それをヒントに滞在中に日本からぬかを送ってもらい、人生初のぬか床をつくったら地元の人にも好評でした。ここ数年で日本の発酵調味料を使う店も増えましたが、味噌ひとつをとってもデンマークでの使い方のほうがおもしろい。日本の外に出てはじめて発酵の魅力に気づきました」。
安田さんはデンマークで自由な発酵に出合い、「日本で店をやるなら、これまでにない日本料理を」と、オリジナルの料理を完成させた。そこに発酵という手段がふんだんに用いられているのは確かだが、それを“発酵料理”と表現されるのは違和感があるという。
「醤油や味噌、鰹出汁を使うからといって和食や寿司店を発酵料理店とはいいませんよね。僕らにとって発酵させた調味料を使うというのは、それくらい当たり前のもの。発酵はブームでもスタイルでもありません。保存のために発酵の力を借りることがありますし、日本の気候で育った食材は、発酵で旨みや酸味をプラスしたほうが美味しいから使っているだけのこと。僕がフランスでフランス料理をつくるなら発酵は必要ないと思います」。
いわば、味噌や醤油を使った和食はすべて発酵料理であり、Kabiの料理が奇をてらっているわけではない。シェフがデンマークに行くまで日本の発酵の魅力に気づかなかったように、日本人が身近過ぎる発酵に対して固定観念をもっているという表現が適切だろうか。Kabiは、そんな食べ手の発酵に対する凝り固まった考えを楽にし、美味しさの幅を広げてくれる。
発酵の旨みと酸味で日本料理はもっと楽しくなる
アルコールならナチュラルワインや日本酒、カクテルを。ノンアルコールならKabi特製ジュースなど、日本のKabiでしか味わえないペアリングが楽しめる。
Kabiの味を支える発酵棚
住所:東京都目黒区目黒4-10-8
Tel:03-6451-2413
(予約専用 受付時間12:00〜17:00)
営業時間:19:00〜/20:00〜
(完全予約制)、ランチ(土・日曜のみ)12:00〜13:30(L.O.)
定休日:不定休
料金:コース1万2000円
(追加でアルコールかジュースのペアリングあり。税・サ別)
https://salon-tea.jp
文=山本章子 写真=福井麻衣子
2019年11月号『すごいぜ!発酵』
≫“東京のローカルファースト”をテーマにした薪火料理レストラン調布「Maruta(マルタ)」
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