式年遷宮へつなぐ、御神木の伐採
樹齢約300年の檜を未来へ
|伊勢神宮・式年遷宮と木
いまから約2000年前、倭姫命による巡行の旅を経て、伊勢の地に天照大御神が鎮座したのが伊勢神宮のはじまり。20年に一度行われる式年遷宮は、神様に新しい御社殿に遷っていただくお祭り。2033(令和15)年に63回目を迎える予定の式年遷宮。いま「御神木のお祭り」がはじまっています。今回はそのお祭りのひとつである、「仮御樋代木伐採式」に迫る。
江戸時代から伝わる「三ツ緒伐り」で
樹齢約300年の檜に挑む

青く澄み切った空が広がった2026(令和8)年5月17日。木曽の山の爽やかな空気の中、カツンカツンと樹齢約300年の檜の大木に打ち込まれる斧の音が響き渡る。檜から50mほど離れた場所でも爽やかな香りがしてくるから、斧を打ち込む人のあたりでは、さぞかし鮮烈な香りがするのだろう。

檜は「三ツ緒伐り」と呼ばれる江戸時代から行われている方法で伐られていた。3方向から斧を入れはじめて1時間近く経った頃「大山の神、左斧、のぼり山、1本寝るぞー」という杣頭の掛け声が。「いよいよ寝るぞー」の声とともに斧を振り下ろすと、メキメキと音をたてて檜は山に横たわるように倒れた。

杣人が倒れた檜に駆け寄り、一本の梢を切り取って、切り株に挿す。「鳥総立て」という、伐採した木の再生を願い山の神への感謝を表す『万葉集』にも記された、由緒ある風習だ。これは、遷御の儀※の際にご神体を納める仮御樋代とする木を伐採する「仮御樋代木伐採式」の様子である。
※新しく造営された社殿にご神体を遷す儀式
遷宮のために選ばれ、育まれた
木曽山中の檜

“日本人の心のふるさと”として知られる伊勢の「神宮」。唯一神明造の社殿が建つ皇大神宮(内宮)、豊受大神宮(外宮)は、宮域林と呼ばれる5500haもの広大な森に抱かれるようにある。宮域林は檜のほかさまざまな広葉樹も広がる混交林で、この森を源とする流れは五十鈴川となり、やがて伊勢湾へ流れ込む。森からの恵みは水田の稲、海の魚介類を育み、伊勢の豊かな食につながる。海水はやがて水蒸気となり、雨となり森を潤す自然の循環が出来上がっている。

そんな循環の象徴といえるのが20年に一度の「式年遷宮」。式年遷宮とは、社殿と御装束神宝を新調し、古い社殿から新しい社殿に神様に遷っていただく祭儀だ。持統天皇の時代に行われて以来、戦国の世に途切れたが、1300年以上続く日本最大のお祭りである。いつでも若々しく、清浄で変わらない姿をつなぐ「常若」の思想の下、行われてきた式年遷宮。20年に一度行われてきたことで、建築や御装束神宝をつくる技術が受け継がれ、解体された社殿の木材は、全国の神宮とゆかりのある神社で再利用される。

そして御杣山。御杣山とは、遷宮で必要とされる御造営用の木材を産出するとして定められた山のこと。持統天皇の世、690年に行われた第一回式年遷宮から伊勢の神宮宮域林が御杣山であった。しかし御用材に適した大木の欠乏により、現在は木曽谷・裏木曽の国有林も御杣山とされている。その一方で、伊勢の神宮宮域林でも後世の遷宮を見据えて、檜の大樹を育てるために木を植えて育てる森林計画に基づいた管理が大正時代からなされている。そのかいあって、前回の遷宮では御用材の2割余りを神宮宮域林が担った。
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「仮御樋代木伐採式」の様子を追う
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text: Discover Japan photo: Mariko Taya
2026年9月号「木と生きる2026」



































