世代を超えて受け継ぐ
祈りの伝統行事「御木曳(おきひき)」
|伊勢神宮・式年遷宮と木
いまから約2000年前、倭姫命による巡行の旅を経て、伊勢の地に天照大御神が鎮座したのが伊勢神宮のはじまり。20年に一度行われる式年遷宮は、神様に新しい御社殿に遷っていただくお祭り。2033(令和15)年に63回目を迎える予定の式年遷宮。いま「御神木のお祭り」がはじまっています。今回はそのお祭りのひとつである、「御木曳」に迫る。
それぞれの背景をもつ奉曳団の
個性豊かな奉曳車のしつらえも
御木曳の見どころ

「エンヤー!」。伊勢の街中を威勢のいい掛け声とともに、勇壮に飾られた御用材を、揃いの法被をまとった人々が綱で曳く御木曳。伐採された木を神宮に運ぶ行事・御木曳には「川曳」と今回撮影を行った「陸曳」がある。

遷宮の諸祭行事の中でも、市民がかかわることができる数少ない機会で、各地域で「奉曳団」が結成され、伊勢市の人口(約12万人)の半分が、さまざまなかたちで参加する一大行事だ。奉曳団ごとにその背景や規模もさまざま。例えば曳き手を唄で鼓舞する「木遣り」。木遣り唄の節回しや歌詞、木遣り子が手に持って振る「采」のかたちにも団の伝統と個性がある。


心をひとつに世代を超えて受け継ぐ

御木曳については1462(寛正3)年の『造内宮記』に最古の記録があり、560年以上の歴史がある。中世から近世にかけ、神領地の住民「神領民」が年貢の代わりに御用材を運搬する労役を担っていた。江戸時代になると、神宮を取り巻く地域は神領地として自治が認められ、神領民は神宮への奉仕が義務づけられる代わりに納税免除の特権を得ていたという。


川曳は五十鈴川の中をそりで内宮に向けてさかのぼり、陸曳は奉曳車を使い市街地を通って外宮を目指す。奉曳団ごとに揃いの法被を着て、声を合わせて木遣りを唄い、心をひとつにして曳く御木曳は旧神領民の誇りであると伊勢神宮奉仕会の民俗行事委員長である中村基記

「今回の御木曳には前回よりも若い世代が積極的に参加。20年に一度の御遷宮に携われる名誉を感じているようです。前回の経験がない人ばかりですが、チームで力を発揮しています」
伊勢の人々に限らず、
全国からの2万人が参加

そして「特別神領民」による陸曳。特別神領民とは、旧神領民以外の全国の神宮崇敬者なども奉仕できる特別な制度だ。来年の御木曳、そして2033(令和15)年に行われる御白石持

「神宮の事例が全国の祭礼の参考になれば」と語るのは神宮司庁広報室次長の音羽悟さん。日本のお祭りの原点がある神宮の遷宮の行事が、各地域の祭礼を見つめ直すきっかけになればと語る。昨今、全国の祭礼の担い手不足が課題となっているが、その伝統をいかに継承していくか、ひとつの手掛かりにもなりそうだ。
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text: Discover Japan photo: Mariko Taya
2026年9月号「木と生きる2026」



























