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宮崎・日南市《PAAK DESIGN》
地域循環を実現する、“建築まちづくり”
|九州観光まちづくりAWARD2026 大賞

2026.9.30
宮崎・日南市《PAAK DESIGN》<br>地域循環を実現する、“建築まちづくり”<br><small>|九州観光まちづくりAWARD2026 大賞</small>

JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2026年も開催。過去最多の100組を超えるエントリーの中から、大賞を受賞したのは「PAAK DESIGN」。江戸時代の町並みが残る飫肥で、建築家の鬼束準三さんが挑むのは、歴史ある建物を生かした“街全体をひとつのホテルに”するまちづくり。建物がもつ個性や地域の魅力を読み解き、新たな価値を創造していく。

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城下町全体をホテルに見立てた
持続可能な建築再生が拡大中!

武家屋敷と石垣が残り、水路に鯉が泳ぐ、城下町の風情漂う飫肥

川と緑に囲まれた城下町・飫肥。飫肥城址を中心に武家屋敷や石垣が残る町は、重要伝統的建造物群保存地区に選定され、江戸時代から変わらない町割りがいまも受け継がれている。

PAAK DESIGNが目指す文化継承のかたち
行政が運営する観光施設に、鬼束さんが手掛ける宿泊施設や飲食店が加わり、点在することで、街全体がひとつのホテルのようにかたちづくられている

この歴史ある町で、“街全体をひとつのホテルに”というイタリア発祥のアルベルゴ・ディフーゾ構想を掲げ、地域の価値を高めているのが、建築家・鬼束準三さんだ。

代表取締役 鬼束準三さん

東京の建築事務所を経て地元へ戻り、2017年に「PAAK DESIGN」を設立。建築設計で培った、土地や建物の歴史・文化を読み解く力を生かし、施設や店舗の運営、プロダクトデザインなど、複合的な事業で地域づくりにも活動の場を広げた。

〈宿泊滞在拠点〉
一棟貸しの宿「PAAK HOTEL 犀 -sai-」は、飫肥の歴史や文化を細・再・彩・差異という4つの「さい」で表現。築100年の古民家を見事に再生した。「お風呂を少し大きくしたり、場所によって特徴を変えたりとチャレンジングな設計もおもしろいです」と永山さん

背景にあったのは、日帰り観光が中心で、一人あたりの観光消費額約2000円という飫肥の課題だ。そこで鬼束さんは、「宿泊で滞在時間を延ばし、飫肥での消費を10倍に高めたい」と考えて、空き家を活用した宿づくりに着手。一棟貸しの宿泊施設「PAAK HOTEL 犀 -sai-」は伝統とモダンが共存する空間で、室内はあえて無彩色に整え、地域の食や文化など「体験」が彩るよう設計している。

〈食文化の発信〉
旧伊東邸を改装した食事処「武家屋敷 伊東邸」。油津港で揚がったマグロや宮崎名物のチキン南蛮が味わえるランチを中心に、宮崎産の抹茶やコーヒーでカフェタイムも満喫できる

さらに後継者不足などで失われつつある歴史的建造物を生かし、宿泊客が町歩きを楽しめるよう、レストラン、展示施設、ショップなど現在12拠点を分散配置し、町全体がひとつの宿という滞在体験をかたちにしている。

〈暮らしの継承・還元〉
毎週火・土曜に開催される倉庫市「PAAK STOCK」。空き家の解体時に回収された、うつわなどの古道具や職人の技術を感じる建具などをリペアして販売。地域に眠る宝を次世代へつなげている
〈文化施設再生〉
「小村寿太郎記念館」は、「展示50%+周遊50%」をテーマにリノベーションした施設。周遊観光を促すため、市民とプログラムをつくったりと、多彩な切り口で飫肥の魅力を伝える空間展示を設計

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土地の歴史・文化・資源を
建築と掛け合わせ新たな価値に

〈地域住民が集う複合施設〉
淡い青の外観が印象的な「ベーカリーおびにたすき」。2026年6月のオープン時には、地元の人や観光客で長蛇の列ができた

大正時代に建てられた和洋折衷の洋館・旧梅村邸をパン×宿の複合施設に改修し、次の100年につなげる「おびにたすき」にも注目したい。「帯に短し、たすきに長し」という言葉をあえて掲げる。旧梅村邸の和と洋が混在し、時代の境目に生まれた“定まらなさ”を唯一無二の魅力としてとらえ直し、価値へとつなげている。プロジェクト名には「(未来の)飫肥にたすき(をつなぐ)」という思いも込めた。

約50種のパンが並び、店内でも味わえる。パンという日常と旧梅村邸の建築が生み出す非日常を楽しめる。2階の宿は2027年開業予定

メニューや商品開発、グラフィックデザインまで手掛けることから、「『何屋さんでしたっけ』と言われることもあります」と鬼束さんは笑う。しかし、その答えは明確だ。設計という枠を越え、飫肥の未来をデザインしていくこと。歴史ある町並みを守りながら、新たな滞在価値を生み出す挑戦が、城下町に賑わいを育んでいる。「自分で問いを立てながら、建築家として新しい場を生み出す姿に驚きました」と建築家・永山祐子さん。菓子研究家・福田里香さんは「ベーカリーでは400個のパンが完売!近くへ出掛けることも観光だと気づかせてくれる、見事なお手本です」とたたえた。

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福岡・大川市《庄分酢》
 
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PAAK DESIGN(ベーカリーおびにたすき)
住所|宮崎県日南市飫肥6-7-26
Tel|0987-55-0088
営業時間|7:30〜15:00
定休日|水・木曜
https://obini-tasuki.jp

text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2026年10月号「感性の刺激する場所へ。/九州」

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