日本酒は米で決まる。酒蔵と米農家の協業で日本酒は次なるステージへ
米は酒の命。その一方で、精米から醸造まで、技術を高めて酒造りは進化してきた。いま、よりよい日本酒を求める人々は、原点である米、そして田んぼへ回帰しようとしている。松本酒造の特別顧問・勝木慶一郎さんに日本酒のいまを聞いた。
日本の米には長らく等別制度が敷かれてきた。これは、戦時下における配給制度が基盤となって定められたものだが、現在も農産物検査の一検査として行われている。
「等級を決める基準は検査員による目視検査。整ったかたちをしている米粒の割合(整粒歩合)や虫食いの有無、透明感などを判定し、特上、特、一等米、二等米、三等米、規格外へと分類されます」。
日本酒もまた、1940年から級別制度が敷かれ、戦後からは特級、一級、二級の三段階に分類されてきたが、日本酒や消費動向の実態に合わせ、1992年に廃止された。現在は、普通酒のほか、原料や精米歩合により、特定名称酒として本醸造酒、純米酒、吟醸酒などに分類されている。
「これまで米農家は限られた田んぼの面積で、効率よく収益を上げるため、より効果的な肥料や農薬を開発し、米の品種改良も重ねてきました。しかし休耕田が数多くある現在では、生産量や等級だけに左右されるのではなく、米の生産者はどういう米が必要とされているのか、考え直す時期にきていると思います」。
そのとき、酒米としての利用を想定することで、その可能性は広がる。
「『原料に勝る技術なし』これは私の師の言葉ですが、日本酒にとって、米の品種は何よりも大切。品種の個性を超えることはできません。しかし、それぞれの品種の持ち味をどのように生かすか、そのアプローチも重要です。そのためには、米が栽培されている環境を知ることが第一なのです。
気象条件、地形による風の通り方、水温などよって、米の品質は変わります。また、刈り取りのタイミング、乾燥させるスピードなど、すべて最適なバランスで行うためには、ひとつの農家では難しい。そのためには、ある程度のコミュニティで栽培することが必要になるでしょう」。
こうしたコミュニティを育てるには、酒蔵からのアプローチが不可欠だと勝木さん。酒蔵と米の生産者が協働することで、日本酒は次なるステージに進んでいく。