FOOD

奈良県吉野郡十津川村
十津川深瀬の「十津川ゆべし」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》

2024.11.11
奈良県吉野郡十津川村<br>十津川深瀬の「十津川ゆべし」<br><small>《福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は奈良県吉野郡十津川村にある和菓子店・十津川深瀬の「十津川ゆべし」を紹介します。

福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

1個1000円。箱入りは要相談

「十津川ゆべし」。その美しい包装に思わず見とれてしまいます。自然素材の食品包装が消えゆく中、昔ながらの藁を編んだ包みが、奈良県吉野郡の十津川村では現役です。

製造元である「十津川深瀬」代表取締役の深瀬眞理子さんのこだわりは、すべて十津川村の里人の手づくり、かつ自然の味をそのままに保存料や人工甘味料は一切不使用ということだそう。
「名は体を表す」という諺がありますが、十津川ゆべしは「包装は中身を表す」の素晴らしい一例です。藁ひもに付けた栞も含め、名著『包 日本の伝統パッケージ』の著者・岡秀行(1905‒1995)が存命だったなら、きっと深く感嘆したことでしょう。

柚餅子は地方によってさまざまな製法がありますが、十津川ゆべしは伝統的な昔ながらの味つけ。ユズの香味を生かし山菜などを田舎味噌で加工してあるため、和風チーズの趣があります。チーズと同様に薄切りにして、ドライフルーツに挟めば、酒の肴に打ってつけ。茶漬けに溶かして食しても美味しい。

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包装の絵や墨書は東大寺別当の故清水公照師の揮毫。師はゆべしを毎朝汁物に入れて食しておられた

十津川深瀬
住所 |奈良県吉野郡十津川村大字重里997
Tel|0746-66-0031
Fax|0746-66-0232
※営業は月・水曜のみ

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
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