毎日の食卓でも美味しい魚が食べたい!
魚の達人と行く、東京の築地場外市場ツアー
今回は、「おがわはな食堂」として魚を美味しく食べる活動をする魚の達人・小川貢一さんと、料理人・うすいはなこさんによる築地場外市場ツアーに参加してみました!また、お二人が築地場外市場ツアーをはじめたきっかけや、魚へのアツイ想いも伺いました。
〈案内をしてくれたお二人〉
うすい はなこ
料理人。日本料理、食文化講師。料理教室主宰。季節や行事食、食卓文化を伝えながら、地元江戸料理の研究、地域の魚食文化を残す活動をする。著書に『干物料理帖』(日東書院本社)がある
小川 貢一(おがわ・こういち)
1956年、東京・築地生まれ。仲卸三代目として築地で育つ。魚を知り尽くし、かつて築地で魚料理店の店主を務めた料理人でもある。著書に『本当に美味しい魚の見極め方』など多数
小川さんとうすいさんによる、魚のよもやま話
うすい もともと私は日本料理をやっていて、魚を料理することはしていましたが、お店に届けられた状態の魚だけを見ていて。小川さんに出合って本当の魚の見方を知るようになったんです。
小川 市場に通わないとなかなかわからないでしょうね。
うすい 実は料理人さんで魚の調理は知っていても、魚自体のことは知っているようで知らない人も多いかも。小川さんはいろいろなお店に目利きした魚を届けていますよね。
小川 どんな料理にするかでも、どの魚が適しているか違ってきますからね。お客さんが使いたい料理に合うものを選んでいます。
うすい たとえばマナガツオを買おうとしたときに、漬け込むなら、むしろある程度熟成されたもののほうがいいよとか、教えてもらって。その後、私の料理教室の魚クラスの生徒さんたちを案内してもらったのがはじまりなんです。
小川 コロナ禍の前は市場をめぐって魚を買い、築地場外市場のキッチンスタジオで料理をして、食べるところまでやっていたね。
——それは最高ですね。魚大好きですが、調理するのはちょっとハードルが高くて……。
小川 魚好きでも外でしか食べない、って人多いですよね。はなちゃんが出した干物料理の本は、そんな人にもおすすめ。
うすい 私、めちゃめちゃ干物が好きで。干物って焼くだけでいいし、そもそも完璧な味つけがされていて。フライパンでも焼けますし。料理の材料としても使えます。
小川 干物ってちょっと手をかけるだけで、すごく美味しくいろんな料理ができるよね。
——干物! 確かに冷凍して常備できますね。市場ツアーではどんなことを知れますか?
小川 たとえば、マグロの見分け方とかね。いいマグロはやはりそれなりの値段はしますが、その中でもどういう部位、サクを選ぶといいかとか。赤身はこういうところにスジがないほうがいいとかね。そして安いマグロでもこう料理すると美味しいとかもお伝えします。
うすい そうそう。そこもすごく大事で。マグロの会のときにネギマ汁をつくったんですけど、切り落としや端切れのマグロでも、これだけ美味しくできるよ、ということを実感してもらって。高かろうよかろう、という感覚でいると、この先どんどん魚が食べられなくなってしまう。養殖は駄目、としてしまうと、もう日本人は魚食べられなくなっちゃうと思うんです。
小川 まあ20年先、30年先になると、天然魚は肉でいうところのジビエ、になってしまうかと。天然魚=ジビエで「今日はジビエの鯛だよ」という感じで出されるようになるかもしれない。
うすい そうなるよね。水産資源は枯渇していくだろうし。
小川 温暖化の影響は大きいね。
——SDGsの視点も重要ですよね。新潟・村上では鮭の卵をふ化、放流をしていて。江戸時代から資源管理をしていたそうです。
うすい ほかの魚でも同じですよね。これから先、資源管理をしていかないと、どの魚も駄目になっていってしまう。卵をふ化させることを養殖と呼ぶのかどうかっていう論議もありますが
小川 北海道のほうでは川に戻ってくるように稚魚の品種改良をしていたりもするんですが、もっと北、ロシアのほうで捕れているという話も聞きますし、やはり温暖化の影響は大きいですね。数十年単位の海の環境の変化が、海水温や海流、そして餌の分布に影響を与えることで周期的に捕れたり捕れなかったり、という「魚種交代」もありますが。これは特に青魚に見られる現象なんだけど、昔はアジはないけどサバでいいか、ということでよかったんだけど、いまスーパーでアジもサバも一年中置いちゃっているからね。無理に置かなければいいと思うんだけど。そういうことをするから、資源がなくなってしまう。
うすい 消費者も問題ですよね。「アジないの? アジがないとつくれない!」とリクエストするからスーパーも置くんですよね。アジがなければほかの魚でつくろう、という応用を消費者側ができるようになればいいのですが。
——消費者側の意識や知識量も問題ですね。これからも美味しく魚を食べ続けられるように、消費者側もできることがありますね。今後もいろいろ教えてください!
1軒目|「築地京富」の鮮魚
今晩は何食べよう? と迷ったらこちら。旬の美味しいものしか置いていないから、何を選んでも間違いなし。どんな料理がいいかはお店に聞くのが一番。
築地京富
住所|東京都中央区築地6-27-1 海幸橋棟
Tel|080-3719-6417
営業時間|7:00〜14:00
2軒目|「樋栄」のマグロ
マグロは用途によって選ぶものが違うので、どんな食べ方をしたいか相談しながら決めるといい。お買い得な中落ちなら中落ち丼にして食べるのも◎。
樋栄(ひえい)
住所|東京都中央区築地6-27-1 海幸橋棟
Tel|03-6264-7015
営業時間|5:00〜15:00
3軒目|「秋山商店」の鰹節
お吸い物を上品に仕立てたいなら鰹上削り、おでんや煮物に使うコクのある出汁づくりには、サバやムロアジを加えた混合削りがおすすめ。
秋山商店
住所|東京都中央区築地4-14-16
Tel|03-3541-2724
営業時間|5:30〜13:30
http://akiyamashouten.com
4軒目|「熊出屋 山野井商店」の調理道具
道具がいいと料理の腕前も上がる。18-8ステンレス盆ざるは、食洗機にも入りかさばらないサイズ。ゆでたジャガイモなどを粗く裏ごしすることもできる。
熊出屋 山野井商店
住所|東京都中央区築地4-12-6
Tel|03-3541-6772
営業時間|5:00〜14:00
5軒目|「吹田商店」の昆布
昆布といってもいろいろで、産地や品種により出汁の取り方も違えば合う料理も変わる。迷ったら昆布のエキスパートである吹田さんに聞けば即解決!
吹田商店
住所|東京都中央区築地4-11-1
Tel|03-3541-6931
営業時間|6:00〜14:00
6軒目|「築地わたなべ」の貝
土曜日などは、貝と魚を組み合わせた「アクアパッツァセット」などセットものを出している。家で簡単につくれ、しかもリーズナブルなのでおすすめ。また、築地魚河岸屋上広場に誰でも参加できるBBQ広場があり、ここで調達した貝を焼けば贅沢なBBQに!
築地わたなべ
住所|東京都中央区築地6-26-1小田原橋棟
Tel|03-6264-7760
営業時間|6:30〜15:00
築地BBQサービス
https://tsukiji-bbq.com
7軒目|「三栄商店」のエビ
活き伊勢エビ、活き車エビ、活きオマールエビなどは三栄商店の右に出る者なし。お祝い料理など、ここぞというときに頼りになる存在。
三栄商店
住所|中央区築地6-26-1小田原橋棟
Tel|03-6264-2247
営業時間|5:00〜14:00
買い物途中に魚河岸食堂でお昼休憩
築地魚河岸の3階にある「魚河岸食堂」は、フードコートスタイルで築地の名店の味を気軽に楽しめる。「ランチはここが一番!」と小川さんの太鼓判付き。
築地場外定休日|水・日曜、祝日(ほか市場休市日あり)
text: Yukie Masumoto, Discover Japan photo: Asami Endo
Discover Japan 2022年2月号「美味しい魚の基本」