小笠原諸島「父島」
亜熱帯気候が育んだ食文化。
東京宝島は、なぜ美味しい?
空路、または海路でしか渡れない「島」がもつ魅力とは……。先住者のみならず、移住者も少なくない昨今、そこには人が居つく理由があるはずだ。そこで今回は旅の最大の魅力のひとつ、食を入り口に、「父島」に行きたくなる理由を探っていく。
世界遺産で多種多様な固有種に出合う
小笠原諸島の玄関口、父島。亜熱帯海洋性気候に属し、通年暖かい。大陸と陸続きになったことがないため独自の進化を遂げた動植物が多く、多種多様な固有種に出合える地でもある。
小笠原諸島を発見したのは小笠原貞頼だと伝わるが、最初に定住したのは欧米人とハワイ諸島先住民。日本が本格的な開拓に着手したのは1876年であった。小笠原島内務省出張所初代所長の小花作助は、内務省勧農局へ父島の温暖な気候に合う農作物の取りまとめを依頼し、さっそく栽培を実施。そのかいあって果樹や野菜の栽培が盛んになるも、太平洋戦争の影響で全島民が本土へ強制疎開。農地は自然に飲み込まれていった。
1968年、小笠原諸島は米国から日本に返還。いま島民たちは先祖の意思を継ぎ、かつてこの地で培われたコーヒー栽培や西洋ミツバチによる養蜂などを復活、食文化の歴史を紡いでいる。島の植物の葉を使った日用品、タコノ葉細工も大切な文化のひとつといえよう。青い海と南国特有の風を感じられる父島は、食の面からも多彩な魅力にあふれている。
瀬堀養蜂園
西洋ミツバチが150種以上の小笠原の固有植物から蜜を集めてできたハチミツ。ゆえに季節によって味が異なり、濃厚で個性的な風味は絶品のひと言だ。
住所|東京都小笠原村父島宇西町
Tel|04998-2-3067
※見学不可、ハチミツの直接販売は行っておらず、JA農産物観光直売所(小笠原アイランズ農業協同組合)などで販売(売り切れの場合あり)
東平アカガシラカラスバトサンクチュアリー
小笠原諸島森林生態系保護地域。小笠原の固有種、アカガシラカラスバトの生息環境に適した森林の保全・整備が行われ、現在ではさまざまな固有植物も生育。
住所|東京都小笠原村父島東平
https://sanctuary-ogasawara.com
※小笠原諸島森林生態系保護地域のため、入林許可の交付を受けたガイドの同行が必要
小笠原タコノ葉細工 あすか工房
タコノ葉細工とは小笠原に多産するタコノキの葉を用いた編物細工のこと。先住移民がつくっていた敷物やカゴなどを工夫・改良し、現在の民芸品となった。
住所|東京都小笠原村父島字宮之浜道
Tel|04998-2-2386
時間|おがさわら丸入港翌日・翌々日10:00~17:00、おがさわら丸出港日9:30~13:00 ※事前に要確認
定休日|おがさわら丸出港中、不定休
Nose's FarmGarden
ここで栽培されるコーヒーのルーツは、1878年に父島で試験栽培が行われたアラビカ種のコーヒーの木。無農薬栽培で自家焙煎まで行い、優しい味わいがする。
住所|東京都小笠原村父島字長谷
Tel|04998-2-3485
www.nosefarm.com
※コーヒー体験ツアー参加者(4500円/1人、要予約)のみ、1人100g分までコーヒー豆の購入が可能(1080円/50g、要予約)
アクセス
船|東京・竹芝桟橋から父島・二見港まで定期船「おがさわら丸」で片道約24時間
04998-2-2587(小笠原村観光協会)
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text:Hazuki Nakamori,Tomoko Honma (Let It Be),Nao Ohmori,Akiko Tanazawa photo:Hiroyuki Kudo,Yuri Yamasaki,Yuichi Yokota,Hiroyuki Yoda illustration:Romi Watanabe map:Alto Dcraft
2022年2月号「美味しい魚の基本」