FOOD

広島・呉
ベーカリーショップ《Ripi/リピ》
無機質な素材×透明感の高い空間。

2022.1.20
広島・呉<br>ベーカリーショップ《Ripi/リピ》<br><small>無機質な素材×透明感の高い空間。</small>

広島県呉市の呉駅前にオープンしたベーカリーショップ「Ripi/リピ」。設計を手がけたのは、広島・呉の建築・インテリアデザイン事務所ファゾムの中本尋之さん。オーナーから受けた最初の要望は、透明度の高い空間づくりだったそうだ。そんな打ちっぱなしのコンクリートが特徴的で、Ripiらしさ溢れる空間デザインとは・・・・・・。

「お客さんにリピートしてまた来店してほしい」という思いを込め、「Ripi/リピ」と名付けたそうだ。コンクリート打ちっぱなしの壁にネオンサインがアクセントとなった店内には、7〜8種類の生地を使い分けた菓子パンや惣菜パンなど約30種類が並んでいる。牛乳やたまご、バターなどを使わず、国産小麦と天然酵母を用いた食パンやお店自慢のクリームパンなどを用意している。

最初は、「概念が変わるようなこれまでにない新しいパン屋さんを作って欲しい」というオーナーの要望から始まった。

中本さんは、これまでのパン屋はパンの小麦の色に同調した茶色やベージュやアクセントの黒で構成される温かみのある空間が多かったなか、そういう暖かさや温もりに同調させることでなく反対の方向で無機質に空間を作ることで温もりを表現するなどこれまでのルールや様式を疑うことからデザインを始めたと語る。

厨房も通常は隠すものですがここではあえて一番大きい厨房機器であるオーブンをメインに空間を構成してその機器の性能からロゴデザインの構想も思いたそうだ。

中本尋之(なかもと・ひろゆき)
1978年 広島県呉市生まれ。2001年広島工業大学環境デザイン学科卒業後、設計施工会社勤務を経て2017年1月にFATHOMを設立。https://fathom-design.jp/


厨房と売り場の境界をスチールとガラスで組みフルオープンにできるように仕切ることで、厨房は売り場に開かれライブ感のある演出が可能となった。しかし、視覚的には透明度を演出できたが、オーナー求めるカタチはより感覚的な意味での透明度ではないだろうかと透明度づくりを模索。

そこで新たな手法として、厨房と売り場の設えのバランスを平均的に揃えることで、ふたつの空間の連続性を高めることが感覚的な透明度に繋っていくのではと考えたそうだ。ただふたつの空間をまったく同じにするのではなく、各空間の基本的な設えや機能は残しつつ平均化させることを目指した。

厨房は排気フードにボリューム感をもたせ、特殊な石灰ペイントで色むらとグラフィックデザインを取り入れた。

売り場は機能的に装飾を少しだけそぎ落とし、照明にはあえて看板照明を用いるなど、厨房機器の一部のように機械的な手法や素材での空間構成を試みた。また厨房で3段4枚のオーブンをモチーフに、売り場部分にも3 x 4のコンセプトで作られた12本の「 /(スラッシュ)」を表すネオンサインを設置し、売り場にもオーブンの気配を演出。

無機質な素材と色で空間を平均化したことで、有機的なものは中央の白い平台とパン、植栽、人間のみになった。パンの焼く香りや艶感、職人のパンに対する思い、売り手の温もりは、無機質な空間と対比させることで、アートピースのように意思をもち、輝きを放ちながら、訪れた人に雰囲気として自然に伝達していくデザインができあがった。

ゆったりとした呉のまちで美味しさとお洒落さを求めに「Ripi/リピ」へ足を運んでみてはいかが。

Ripi/リピ
住所|広島県呉市中央1丁目6-3メゾンフェニックス1階
営業時間|平日 10:00〜16:00、土日祝 10:00〜17:00(売り切れ次第終了)
定休日|月・火(月火が祝日の場合は営業)
https://www.instagram.com/ripi_kure/

Photo: 足袋井写真事務所 足袋井竜也

広島のオススメ記事

関連するテーマの人気記事