日本茶のスペシャリスト山上昌弘さんに聞いた“日本茶のいま”【Part 4】
便利さではなく心の豊かさを重視する方向に世の中が変わる中、手間をかけてお茶を淹れる時間が見直されています。楽しみ方の多様性がますます広がっている“日本茶のいま”の動向を日本茶のスペシャリストである山上昌弘さんにうかがいました。
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ほうじ茶は高級路線も
ラテやお菓子に使われ、ペットボトル商品が増えるなどほうじ茶人気が続いている。そんな中で注目したいのが高級ほうじ茶だ。「丸八製茶場」の献上加賀棒茶は庶民のお茶であった茎のほうじ茶を、良質な原料を焙煎することで価値を高めた。特許製法で茶葉自体の香りを引き出す「茶工房 比留間園」は、半発酵による香りと焙煎香を巧みに合わせる。店内で少量ずつ焙じ、焙煎度の違いを楽しめる「櫻井焙茶研究所」も加わり、ほうじ茶のステータスが上がっている。
パリ日本茶コンクールグランプリ受賞
紫外線照射芳香装置で極限まで萎凋(いちょう)を進めて蜜香を引き出し、浅炒りで仕上げた「かろやか」540円(50g/袋)。甘く香ばしい魅力的な香りが特徴。
茶工房 比留間園
住所|埼玉県入間市上谷ケ貫616
Tel|0120-51-4188
gokuchanin.com
3段階の焙煎度合いから好みを選べる
緑茶の風味を感じる浅炒り、緑茶の風味と焙煎香のバランスが取れた中炒り、バニラのような香りを放つ深炒り。いずれも店内で焙じ上げる。各800円(50g/袋)。
櫻井焙茶研究所
住所|東京都港区南青山5-6-23 スパイラル5F
Tel|03-6451-1539
www.sakurai-tea.jp
ほうじ茶を好んだ昭和天皇のための棒茶
一番摘みの良質な茎を芯から浅く焙じた「献上加賀棒茶」1296円(60g/缶)。品のいい渋みと旨みがある。藤かおりなど印雑品種でつくるほうじ茶「焙茶noma」もぜひ。
丸八製茶場
住所|石川県加賀市動橋町タ1-8
Tel|0761-74-1557
www.kagaboucha.co.jp
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高級ボトリングティーが日常で楽しめる
高級でギフト用の価格帯が多かったボトリングティー。近年はスパークリングティーやハーブと合わせたブレンドティーが登場するなど、品揃えが増えてきた。また、買いやすい価格帯ながらクオリティの高い商品も魅力だ。静岡の丸七製茶はボトリングティーの専用工場をつくり、自宅で日常的に飲めるよう価格を抑えた商品を発売。「香駿」、「かなやみどり」といった香りに特徴がある品種別、農園別、収穫日限定のシングルオリジンを楽しめる。
究極のシングルオリジンをボトリング
8品種それぞれが個性を生み出すその日に収穫。茶葉はペットボトルで使用される量の3〜5倍使用し、濃厚な味わいに仕上げてある。「Etude 2021」各500㎖、864円〜1620円。
丸七製茶
住所|静岡県藤枝市上青島1870(営業本部)
Tel|054-643-2421
www.marushichi-group.jp
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山上流ティーペアリングのすすめ
ノンアルコールが世界的潮流の中、食事のペアリングとしてお茶は外せない。そして料理だけではなく、チーズやチョコレートでもペアリングを楽しめると山上さん。繊細なカカオが香るチョコレートは、コーヒーよりも煎茶が合うとはトップパティシェたちも認めるところ。右のおすすめの組み合わせ、自宅でぜひお試しを。
<チーズと>
カマンベール×深蒸し煎茶
クリーミーな味わいに負けない深蒸しのコクと旨み、新緑の香りがカマンベールを際立たせる。
コンテ×山の煎茶
香ばしいナッツの風味のチーズと、繊細な旨みと香りが調和する。ゴマを加えてもおもしろい。
ゴルゴンゾーラ×阿波晩茶
乳酸発酵茶の風味が、個性の強いチーズの味をやさしく包む。+ハチミツでほうじ茶も。
<チョコレートと>
ボンボンショコラ(プレーン)×山の煎茶
フローラルで繊細なカカオの香りに、繊細な花香のある山間地産の伝統煎茶がよく合う。
フランボワーズチョコ×ほうじ茶
しっかり噛んでフランボワーズの風味を楽しんだ後に、ベリーと相性のいいほうじ茶を。
99%カカオチョコ×抹茶
ともに強い味わいのフルボディ、対照的な香味ペアリングにより、互いの魅力を引き立てる。
<アイスクリームと>
バニラアイス×山の煎茶
余韻を重視したペアリング。上品なバニラの風味を、繊細な煎茶がやさしく引き出す。
チョコアイス×抹茶
口の中で合わせれば抹茶チョコ風味が楽しめ、余韻で合わせればコントラストが際立つ。
抹茶アイス×京番茶
温茶の効果で味覚が回復し、一口ひと口に京を感じるペアリング。ほうじ茶も合う。
supervision: Masahiro Yamagami
text: Yukie Masumoto photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2021年11月号「喫茶のススメ お茶とコーヒー」