自分次第で、どこでも刺激はつくれる
ディスカバー・ジャパン最新号「積極的移住のススメ」に掲載中の、奈良・三重・和歌山との共同企画「紀伊半島で移住体験!」では、移住体験者として選ばれた3名のクリエイターが未来の自分像を探しに、各県への移住者たちのもとへと訪れました。ここでは誌面に盛り込めなかった、アナザーストーリーを随時更新。地方に住む人たちとの交流を経た先に彼らが見出した答えとは。
【移住体験した人】
立花実咲さん
1991 年生まれ。静岡県出身。これからの暮らしを考える情報ウェブメディア「灯台もと暮らし」の編集者として日本全国をめぐり、地域の魅力の発掘に携わる
http://motokurashi.com
和歌山県への移住体験者は、これからの暮らし方を考える情報ウェブメディア「灯台もと暮らし」の編集者として、全国各地を訪れている立花実咲さん。仕事柄、さまざまな地方都市へ訪れ、その現状もよく知る立花さんは、そうした土地への移住をどのように考えているのでしょうか。「東京での暮らしは、人との交流が希薄であるものの不満はありません。ただこの生活が続くなか、自分に合う生き方ってもっとあるのではないかなぁと……。地方を訪れ、その土地の暮らしを知るほどに悩むようになっています」と話す。今回の滞在先は那智勝浦町色川地域にある「農家民泊JUGEMU」。都会暮らしを経て、この土地へ移住してきた壽海夫妻が営む農家暮らし体験施設です。
貨幣に消費される社会システムから離れられるということを第一条件に移住先を決定した壽海夫妻。「移住前と同じ生活システムではなにも変わりません。自給自足の暮らしを理想としていた我々にとって、物々交換が残り、人との交流によって成り立つここでの生活は魅力的なものでした」と夫の真也さんは話す。また色川地域では、移住前に先輩移住者との交流会もあり、どのような暮らしになるのかがわかりやすいということもあり、移住を決意したとも話します。自給自足の生き方=かまどで米を炊き、鴨をさばき、野菜を育てる。そうした生活を体験するなかで、田舎暮らしの豊かな価値観に改めて気づくことになったと立花さん。夕食時には、海外での生活も経験した妻の千鶴さんの生き方や暮らし方についての話に。テント暮らしを経験していた真也さんのちょっと変わった体験談に花を咲かせる一方で、田舎ならではの体育祭の競技には何種目も参加しなければならないことや、青年会などの会に複数所属することなど、田舎あるある話でも盛り上がりました。こうした濃厚な時間を通じて、これからの生き方・暮らし方について改めて考えることができましたと立花さんは話します。
翌日は集落を巡るように朝の散歩を行いながら地元の人と挨拶を交わしたり、滞在中に開催されていた地元中学校移設に伴うさよならイベントにお邪魔するなど、地元ならではのコミュニケーションをリアルに体験。引っ込みがちだと考えていた田舎暮らしだが、自ら積極的にコミュニケーションを図ることで変わる部分もあるのだとイメージも変化したようです。「関わる人が内側だけに限定されるかもしれないと思っていた田舎暮らし。けれど、自ら動くことで内側とのコミュニケーションにも変化を生み出せるし、ゲストハウスという空間を営むことで外との交流も図れる。新しい出会いや刺激は、生活の仕方で別のものになるんだなぁとこれまでになかった発見が得られました」。