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食卓を涼やかにする染付のうつわ
高橋みどりの食卓の匂い

2020.7.12
<b>食卓を涼やかにする染付のうつわ<br>高橋みどりの食卓の匂い</b>

スタイリスト・高橋みどりさんがうつわを通して感じる「食」のこと。五感を敏感に、どんな小さな美味しさ、楽しさも逃さない毎日の食卓を、その空気感とともに伝える《食卓の匂い》。今回は白地に藍色で描かれた図柄が涼しさを感じさせる、伊万里焼の染付のうつわを紹介します。

高橋みどり
スタイリスト。1957年、群馬県生まれ、東京育ち。女子美術大学短期大学部で陶芸を学ぶ。その後テキスタイルを学び、大橋歩事務所、ケータリング活動を経てフリーに。数多くの料理本に携わる。新刊の『おいしい時間』(アノニマ・スタジオ)が発売中

毎年刻々と暑くなりますが、せめて食卓の上くらいは涼やかな気分にしたいと思います。暑くても美味しく食べられる雰囲気づくりをしたい。とはいえ、夏だから使うというより、染付のうつわは我が家にとって、なくてはならない存在でもあります。

染付とは、白地に藍色で描かれた図柄のあるさまが、藍染めの着物を思わせることからそう呼ばれるようになったといわれます。伊万里焼は江戸時代にはじまり、その経緯をたどれば、かたち、質感や藍色の発色、図柄、筆のタッチからおおよその時代を探ることができますが、いやいやそう簡単にできる話ではないのです。

だからこそ知識をもってよいものをたくさん見ることが経験となり、その探求も楽しみのひとつとなります。長きにわたって愛され続ける伊万里の染付の魅力は、その奥深さにあるのではないでしょうか。

我が家で毎日のように使う染付のうつわは、きりっとした藍色のラインというよりは、どこか少しゆるめな雰囲気が漂い、藍の色みも明るめ。となると明治のはじめくらいのものなのか、などと想定してみる。古い物を求めるときには質問をし、ある程度そのうつわのバックボーンを知りたいと思いますが、耳を傾けながらも自分の知識と合わせ考えると、うつわを見る目がまた違うおもしろさを発見します。

私の求める目は、まずは「使いたい」ということ。我が家の食器との相性を考え、毎日食べる料理を想います。そのうつわに何を盛りたいか、どう使いたいかを考える。日々の料理は手軽なものばかり。だからこそ、このうつわに盛ると美味しそうと考える楽しみもある。そんな私の料理に似合ううつわを選ぶと、ちょうどこんな頃合い。

我が家の食器はさまざまな白いもの、新旧取り混ぜ、日本、フランス、中国のものがメイン。次に茶色のうつわが控えますが、こちらも同様に会津本郷、備前、南仏、ベルギーなどと素朴なものが多い。緑の野菜料理と茶色のコントラストも大好きな色合わせ。煮物にはこっくりと相性もいい。けれども民芸寄りの茶色いうつわばかりでは、ともすると食卓が重くなる。

大きめのうつわに料理を盛り、各自の取り皿に取り分ける我が家のスタイルには、染付のうつわが活躍するのです。茶色い鉢に、取り皿を染付と白い皿にしつらえればそれだけで手元がすっと軽やかに。ときには大きな鉢や皿の間に、個々に盛る染付の小鉢を置く。

白や茶色など無地のうつわが多い高橋さんの食卓に「染付」は差し色として欠かせない存在。トマトと紫蘇の和え物が入った「面取り向付」(幕末頃)、きゅうりとわかめの酢の物は「中鉢」に(明治末頃)、冷奴のオリーブがけが涼やかに映る「芭蕉なます皿」(明治初期頃)、グラフィカルな「吹墨小皿」には炒りそら豆を。うつわで料理はより美味しく映える

トマトの紫蘇和えを盛れば、パッと明るくなり、食欲をそそるポイントに。なます皿は冷奴にもよく似合う。シンプルにオリーブオイルと塩でいただけば、皿の芭蕉の葉の模様をより引き立てて美しい。吹墨と呼ばれる技法で生まれるスパター柄は、いまにしてみればとても現代的な模様に見える。夏に使えば、いかにも水滴のように映り涼しそうな印象になるし、グラフィカルなデザインと思えば自在に使える。

小皿で揃えておけば、取り皿、醤油皿、酒の肴に、はたまた和菓子にも重宝する。無地の多い我が家の食卓にひとつでも柄物が入ると、きゅっと引き締まる。染付のうつわがそこに入るだけで、気持ちのいい風が吹き抜ける、そんな存在です。

text&styling : Midori Takahashi photo : Atsushi Kondo
2019年8月号 特集「120%夏旅。」


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