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フランスアンティークの絵になる白皿
高橋みどりの食卓の匂い

2020.7.25
フランスアンティークの絵になる白皿<br><small>高橋みどりの食卓の匂い</small>

スタイリスト・高橋みどりさんがうつわを通して感じる「食」のこと。五感を敏感に、どんな小さな美味しさ、楽しさも逃さない毎日の食卓を、その空気感とともに伝える《食卓の匂い》。今回は19世紀にフランスでつくられた「ファイアンスフィーヌ」の細長いオーバル皿を紹介します。

高橋みどり
スタイリスト。1957年、群馬県生まれ、東京育ち。女子美術大学短期大学部で陶芸を学ぶ。その後テキスタイルを学び、大橋歩事務所、ケータリング活動を経てフリーに。数多くの料理本に携わる。新刊の『おいしい時間』(アノニマ・スタジオ)が発売中

うつわを求めるときには、我が食器棚を思い浮かべます。うつわ同士の相性や重複はないか、納まりはどうかなど。そして大事なのは、自分が日々家でつくる料理が浮かぶかどうか、ということ。

とはいえ、ひと目惚れしての衝動買いもときにはよしとしよう。そんな買い物が想像以上の楽しさを生むこともあるから、なんて逃げ道をつくっておきます。今回のフランスアンティークのやけに細長いオーバル皿も、予定外に我が家へやってきた代物。古道具店を営む夫から、どうにも残念な染みがあり、店頭に置くにはちゅうちょするけれど、この美しいオーバル皿をうちで使わないかと手渡されたのです。

渡されてびっくり、かなり大きなサイズであるにもかかわらず、思わずふわっと浮くような軽さ。その象牙色といい、フォルム、エッジがきりっとしたさまは緊張感とともに品格を感じるうつわでもあります。先のうつわを求めるときの条件にはまったく適さない物ではあるけれど、その美しさに思わず手が伸びました。染みなんて感じないほどの魅力的なうつわです。

それは「ファイアンスフィーヌ」と呼ばれる、19世紀のフランスにてごくわずかな期間のみつくられたもの。磁器のように薄く、象牙色を素地として、透明な錫釉をかけ低温焼成した繊細な陶器。英国のクリームウェアに憧れたフランスの貴族の下、技術流出もなく同じような陶土も得られなかった中、陶工たちは開発を続け、フランスならではの美しい陶器を生み出しました。

そのきめ細やかな質感と肌合い、軽やかなつくりや洗練されたフォルムに加え、温かさも感じます。ところが産業化の進む中、1830年代以降は徐々に量産向きの半陶半磁器に取って代わられることとなり、姿を消すことに。

それゆえ現存するものは稀少価値のあるうつわといわれています。昨今、日本ではアンティークの白皿の人気に目を見張るものがありますが、古いお皿の中にもこうしたさまざまな背景があり、そんな歴史を探りながら白いお皿を見比べることも、おもしろいと思います。

ファイアンスフィーヌの「ファイアンス」はファインアンス焼、「フィーヌ」はきめ細かいという意味。名前からもその佇まいの美しさが感じられる。この白いキャンバスのようなオーバル皿を日常使いとし、「食材を盛りつけるのが愉しみのひとつ」と語る高橋さん

さて、こうして我が家の仲間入りをしたオーバルのお皿に、まずはさまざまなグリーンの葉野菜をたっぷりと盛り、上からオリーブオイルを垂らし塩を振る。緑色の濃淡に、たまに紫がかった葉が重なり深い森のようなサラダとなりました。それだけのことなのに、なんともドラマチックなひと皿に。

これもこのファイアンスフィーヌのなせる術なのかもしれません。この長さがまた新たな楽しみを誘ってくれるのです。余白を生かし、絵を描くような気分でチーズや果物を点在させたり、デザートとしての細長いケーキをリズミカルにカットして盛る。ときにはサンドイッチを、おむすびを淡々と並べても美しい。

このお皿は、かつて使ったことのない白いキャンバスのような存在。うつわ自体が美しいので、その上に何を置いても絵になる魔法をもっているかのようです。これからのクリスマス、お正月には大活躍間違いなしのうつわですが、普段使いしてこそ、その魅力がわかります。

text&styling : Midori Takahashi photo : Atsushi Kondo
2019年12月号 特集「人生を変えるモノ選び。」


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