理想の睡眠をかなえる
朝と夜の過ごし方
睡眠の効果やよりよい睡眠をめぐる科学的研究が進んでいる。ここでは、睡眠学の第一人者である内村直尚さんに、眠りについてうかがった。
監修=内村直尚(うちむら なおひさ)
久留米大学学長。日本睡眠学会理事長。睡眠医療の第一人者として、幼少期からの睡眠の大切さを知り、生活習慣の改善を目指す学習「眠育」の普及にも尽力。『知識ゼロでも楽しく読める!睡眠のしくみ』(西東社)など著書多数。
まずは、快眠チェックシートで
確認しよう!

〈6:30 起床〉
二度寝や仮眠は
20分までならセーフ

人はどうしても、昼過ぎや夕方になると眠気が出てくる。そのため、日中に襲う眠気や朝の寝足りなさを解消するために、仮眠はとても有効。昼休みの仮眠は15~20分程度が最適で、これを超えると深いノンレム睡眠に入り、目覚めが悪くなる「睡眠慣性」が起こって逆効果となる。また、15時以降の仮眠は夜の寝つきを阻害するため避けたいところ。朝の二度寝も20分以内であれば、覚醒を促すホルモン「コルチゾール」が全身に行き渡り、スッキリとした目覚めを助けてくれる。ただし、二度寝や仮眠はあくまで一時的にパフォーマンスを向上させる方法であり、根本的な睡眠負債の解消にはならないので、注意が必要だ。
〈7:00 朝食〉
朝日と朝食が
体内時計をととのえる

質のよい睡眠には、24〜25時間で周期を刻む「体内時計」のずれをリセットし、リズムを正確に働かせることがとても重要。その最も有効な方法が朝日を浴びることだ。強い光が目に入ると脳からシグナルが送られ、精神を安定させるセロトニンが分泌される。この物質は14~16時間後に眠りを誘うメラトニンの原料となり、自然な入眠を助ける。また、朝食時の「噛む」行為も脳への刺激となり、セロトニンの分泌を促すため、覚醒に効果的だ。毎日同じ時間に食事をとり生活リズムをととのえることは、夜の熟睡を生むための基礎となる。寝る時間や起床時間を記録して、体内時計をととのえてみよう。
〈19:00~21:00 運動・入浴〉
運動と入浴で
深部体温を上げよう

脳や内臓の温度である「深部体温」のコントロールについても押さえておこう。深部体温は、一度大きく上がるとその後急激に下がる性質があり、この低下時に眠気が訪れる。入浴は就寝1~2時間前に40℃前後の湯に15~20分浸かることがおすすめ。これにより深部体温が約0.5℃上昇し、寝床に入る頃にちょうど体温が下がってスムーズに入眠できるというわけだ。また、運動も体温を上げて下げる効果をもつが、体温低下には3時間ほどかかるといわれている。そのため運動は夕方から就寝3~4時間前までに終えるのが理想。寝る直前の激しい運動は目が冴えてしまうので要注意だ。加えて、就寝時に靴下を履くのはNG。深部体温が下がりにくくなってしまうためだ。就寝から逆算した時間帯に、入浴や運動することを意識しよう。
〈22:00 入眠儀式〉
眠気を誘う
ルーティンを欠かさずに

最高の睡眠というパフォーマンスを発揮するために必要なのは、「これから眠る」というサインを脳に送るためのルーティンである。毎日同じ行動を同じ順番で繰り返すことで、脳が「入眠スイッチ」を入れ、副交感神経が優位になり自然な眠気が訪れるようになる。具体的なルーティンとしては、まず就寝用のパジャマに着替えること。当たり前のことのように聞こえるが、これだけでも脳に睡眠モードへの切り替えを促すことができる。ほかにも、ぬるめの湯での入浴、歯磨き、軽いストレッチ、ゆったりとした音楽やラベンダーなどのアロマを活用したリラックスタイムを規則的に行っていく。大切なのは脳を退屈な状況に置くことであり、スマートフォンやテレビといった情報の刺激を避け、深く考え過ぎずに単調な習慣をこなすことが熟睡への近道となる。
〈22:30 就寝〉
就寝前のデジタル機器は、
睡眠の大敵

寝る前のデジタル機器使用は、睡眠の質を著しく低下させてしまう。スマートフォンの画面が発する強い光(ブルーライト)が目に入ると、眠りを誘うメラトニンの分泌が抑制され、脳が覚醒状態になってしまうためだ。特に10代後半から20歳前後は体内時計が一生で最も夜型に傾く時期であり、夜間のスマートフォンやゲームがその傾向をさらに助長している。また、刺激の強い動画やSNSの閲覧は交感神経を優位にし、脳が寝室を活動場所と誤認識する原因にもなるため、就寝前はデジタル機器を手放し、入眠儀式を行い、脳をリラックスさせることに徹しよう。
眠れないときは
ホットミルクやハーブティーを

布団に入っても目が冴えてしまうときは、無理に寝ようとせず、いったん布団から出て温かい飲み物をとったほうがよい。カフェインレスであるホットミルクやハーブティーなどで意図的に体温を少し上げると、その後の体温低下とともに眠りやすくなるのだという。これは、温かい飲み物によって上昇した深部体温が、その後30分から1時間ほどで急速に下がる性質を利用したもの。この体温の落差が自然な眠気を誘発してくれる。ただし、スマートフォンなどの明るい光を見ながら飲むと逆効果になるため、照明を落とした環境で静かに過ごすことがやはり重要だ。
line
01|基礎知識や理想の睡眠を解説!
02|睡眠の質を高める環境(部屋、枕、パジャマ)
03|睡眠の質を高める環境(理想の寝姿勢、香り、音楽)
04|睡眠のための朝と夜の過ごし方
text: Kazunori Morikawa
2026年6月号「ウェルネス入門」



































