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渋谷パルコ《出西窯展》
用の美が息づくうつわ
民藝を暮らしに取り入れたい

2025.8.8
渋谷パルコ《出西窯展》<br>用の美が息づくうつわ<br>民藝を暮らしに取り入れたい

のどかな田園地帯に佇む出西窯しゅっさいがま。創業から78年の月日が過ぎたいまなお、民藝の志は消えることなく、現代の陶工たちに脈々と受け継がれている。東京・渋谷PARCOにて《出西窯展》が2025年8月16日(土)~8月24日(日)にかけて開催。素朴で美しい、暮らしのうつわはいかが?

Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を8月19日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)

 

写真=出西窯

出西窯(しゅっさいがま)
島根県出雲市斐川町出西。地元の青年5人が共同で1947年に創業。柳宗悦をはじめ、民藝運動の提唱者たちの指導を受け、日用の陶器を焼きはじめる。現在、16名の陶工が働く。

 

民藝の地・出雲で生まれる
用の美が宿るうつわ

1947年、戦後間もない出雲の地で、地元の若者5人が集まり、共同体として創業。「美しいものをつくりたい」、「堂々としたものをかたちで表現したい」。ものづくりに対する漠然とした思いを抱いていた彼らは、もともと興味のあった焼物づくりに着手。しかし、作品として世に出すまでには至らず、悩んでいたときに柳宗悦の著書『私の念願』と出合い、はじめて民藝という考え方を知る。

簡素で飾らない美しさ、すなわち用の美の世界に感銘を受けた5人は、地元・島根県出身で、民藝運動の提唱者の一人でもある陶芸家・河井寬次郎から直接指導を受ける機会に恵まれる。ものづくりの本質とは? 氏から薫陶を受け、ようやく自分たちの進むべき方向性を見出し、1949年に共同体を「出西窯」と改名。以降、窯元には柳宗悦やバーナード・リーチをはじめ、民藝運動のメンバーたちが訪れ、うつわづくりを指導。こうして出西窯の礎が出来上がった。

 

分業せず、 一人が最後まで担当

大規模な工房では、複数の陶工がそれぞれの専門分野を担当し、共同でひとつの作品をつくり上げる分業制を採用することが多い。一方、出西窯では創業当初からうつわの種類ごとに一人の陶工がすべての製作を担当。何十年と生涯をかけてひとつの作品と向き合うことで、作風が安定し、より腕が磨かれていく
写真=出西窯

現在、陶器の製造に携わるのは、研修生を含め16名。作業は分業制ではなく、一人の陶工がろくろ挽きから成形、装飾、焼成に至るまで、一貫して行っている。

写真=出西窯

「一人ひとりに担当するうつわが決められています。同じうつわを何十年と徹底してつくり続けることで精度が高まり、お客さまにもより満足していただける商品をお渡しできるのです。驚かれるかもしれませんが、定番のモーニングカップも、築窯以来、作陶に携わったのはたったの二人だけなんです」(代表・多々納たたの真さん)

 

細部に宿る美しさが
使いやすさにつながる

青色の呉須釉と縁に施したグレーの鉄砂釉が化学反応を起こし、繊細なグラデーションを生み出している

材料にもこだわり、島根県内で採取した土を水と混ぜて精製し、粘土に仕上げていく。一方、釉薬には昔ながらの呉須釉や鉄砂釉を使用。ファンから“出西ブルー”の名で親しまれている鮮やかな青色は、この呉須釉から生み出されるものだ。「実は我々の間で“出西ブルー”と呼んだことは一度もないんです」と多々納さんは笑う。

ハンドル上部の「指置き」は、親指を置くのにちょうどいい。使い手のことを考えた気配りが、支持される理由

出西窯のうつわを語る上で、機能性も外せない。たとえば前述のモーニングカップは、ハンドル部分に「指置き」を設け、持ったときの安定性を出している。縁に唇を当てたときのフィット感にも感動してしまう。縁鉄砂呉須釉皿は、ほどよい深みとシンプルなデザインが使いやすく、時流に関係なく普段使いができる。

いつの間にか暮らしの道具として定着している。そんな喜びに出合えるのが出西窯のうつわなのだ。

長く使い、経年変化も愉しみたい、
出西窯のうつわ
《作品ラインアップ》

価格|4070円 サイズ|Φ90×H85㎜(取っ手30㎜) 重量|305g

モーニングカップ 呉須
バーナード・リーチの指導の下で誕生した定番カップ。コーヒーカップよりひと回り大きい、たっぷりとした容量。ハンドル上部に付けた「指置き」が持ちやすさのカギ。

価格|4510円 サイズ|Φ183×H90㎜ 重量|765g

丸深鉢(ボウル)
30~40年前にお客から依頼を受け、製作されたボウル。外側の鉄砂釉(黒)と内側の呉須釉(青)のコントラストが斬新。メインのうつわとして、または丼鉢としても重宝する。

価格|2万5630円 サイズ|Φ330×H42㎜ 重量|1485g

縁鉄砂呉須釉皿
出西窯の顔ともいうべき皿。縁の釉薬と内側の釉薬が混ざり合って生まれる青とグリーンのグラデーションが幻想的。深過ぎず、浅過ぎない、ほどよい形状で使いやすい。

価格|4070円 サイズ|Φ90×H85㎜(取っ手30㎜) 重量|270g

モーニングカップ 飴
手にしたときの持ちやすさ、唇を当てたときのフィット感、使い心地のよさを追求したモーニングカップ。コーヒーやミルクなどの飲み物はもちろん、スープにもちょうどいい。

価格|1650円 サイズ|Φ80×H72㎜ 重量|200g

丸紋番茶碗
手の中に収まる小ぶりの湯飲み。厚みがあるので、温かいお茶を入れても持ちやすい。丸紋が大胆に描かれた勢いのあるデザイン。普段使いの湯飲みとして、朝昼晩と愛用したい。

価格|2万350円 サイズ|本体W185×D140×H235㎜、蓋Φ90×H45㎜ 重量|本体580g、蓋100g

丸紋土瓶
丸紋がかわいらしい土瓶。ぽってりとした丸みのあるフォルムと竹の持ち手のバランスが絶妙。湯切れのよさにこだわり、注ぎ口の角度を微妙に変えながらいまなお進化し続けている。

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作品の一部がオンラインで買える!

公式オンラインショップ
 

出西窯展
会期|8月16日(土)~24日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※初日に整理券配布予定。
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。

text: Misa Hasebe photo: Shiho Akiyama
2025年9月号「木と生きる2025」

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