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日本の食の課題、知っていますか?
数字でひも解く「農」と「漁」
前編|日本の食の未来のキーは「米」!

2025.6.29
日本の食の課題、知っていますか? <br>数字でひも解く「農」と「漁」<br><small>前編|日本の食の未来のキーは「米」!</small>

日本の「農」と「漁」の現状、直面する課題とその解決のために進められている取り組みについて知り、日本の食の未来を考えよう。まずは、農林水産省の河村さん監修のもと、日本の「農」について紐解いていく。

農林水産省 大臣官房政策課長
河村 仁(かわむら ひとし)
1995年、農林水産省入省。大臣室勤務などを経て埼玉県農林部部長、農林水産省経営局金融調整課長、水産庁漁政部企画課長、同部漁政課長を歴任。2024年7月から現職。
 

米ひと口で、
食料自給率が1%上がる!

ちなみに2023年度の生産額ベースの日本の食料自給率は61%。食料安全保障のためには、食料自給率とともに食料自給力=食料の潜在生産能力を上げることも重要になる

日本の食料自給率は、2000年代以降はおおむね横ばいで推移しているものの、世界的には低い水準にある。

2024年に改正された「食料・農業・農村基本法」では、2030年度に供給カロリーベースで45%にするという目標を掲げている。食料自給率を上げるためには、単に生産を増やすだけでなく、消費者が国産の農畜水産物を積極的に選択することが必要。たとえば、国民全員が国産米のご飯を1日にもうひと口(14g)増やすだけで、食料自給率は1%上昇する。

健康の秘訣は米にあり。

おにぎりを世界のONIGIRIへ
おにぎりをはじめ、米を中心とした日本の食生活は海外でも注目を集める。食料供給安定化の点からも農畜水産物の輸出能力向上が期待されるいま、食文化や食生活を含めて、日本の食を世界に発信する重要性が高まっている
©Kousaku Kitajima

米の消費量は減少し続けているが、穀物の比重が大きいカロリーベースの食料自給率では、米の消費量の増減が与える影響も大きくなる。

同じ穀物である小麦は自給率が低い上、生産量を増やすには品種開発や農地改良など課題も多い。日本の気候風土に合っている穀物はやはり米。脂質が少なく、食物繊維を含むことから体脂肪になりにくいという利点もある。国産米を食べることが健康に、そして生産者支援、食料自給率向上にもつながる。

農業就業者111万人が
スマートに働く時代へ

仕事として主に自営農業に従事する基幹的農業従事者は年々減少し、高齢化も進んでいる。新規就農者も2015年頃から一定数を保っているものの減少傾向にある。

労働力が不足する中、IoTやAI、ロボティクス、ドローンなどの先端技術を活用し、農業の生産性や効率性を高めるスマート農業の導入が進んでいる。2019年度から全国217地区で「スマート農業実証プロジェクト」が実施され、2024年には「スマート農業技術活用促進法」も施行された。

荒廃農地の使い方のヒント

農林水産省の「令和6年耕地面積」によると、全国の耕地面積は427.2万haで、63年連続で減少。荒廃農地は病害虫の発生、災害リスク増大、廃棄物の不法投棄などの問題を引き起こす

再生利用可能な荒廃農地の活用法として「農地中間管理機構(農地バンク)」による耕地の集積・集約化が進んでいる。

小規模耕地を集約して団地化し、企業や新規就農者に貸し付けることで担い手不足の課題とともに解決する。中山間など集積が難しい地域では、地域の特性に応じた持続可能な土地利用への転換を模索。有機栽培や気候を生かした稀少作物栽培、都市と農村の交流拠点としての観光地化など、高付加価値化によって成功している例もある

米価格は一体どうなる?

持続的な食料供給実現には、農産物の生産コストを適正に価格に反映することが大切。2025年3月には農産物の適正な価格形成を進める「食品等流通法改正案」が閣議決定された

2024年夏、前年の猛暑による品質低下、訪日外国人客の増加、そして食料品全体の価格上昇が続く中で米の価格上昇が相対的にゆるやかであったことなどにより、米の在庫量が過去最低となった。

秋の新米出荷で復活したが、生産者から大手集荷業者への流通量が減少する一方で、卸売業者などへの直接販売量が増加。このことから、現在の米価格高騰の原因は在庫不足ではなく、流通の目詰まりと考えられる。これを解消するため、2025年夏まで毎月、備蓄米の放出が行われる予定だ。

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日本の「漁」の課題に迫る!
 
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日本の食の課題
01|食の未来のキーは「米」
02|漁獲量減少は地球温暖化の影響!?

text: Miyu Narita
2025年6月号「人生100年時代、食を考える。」

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