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日本酒ソムリエ・「EUREKA!」オーナー 千葉麻里絵さんが推す日本酒
花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生
|私が夏に飲みたいお酒②

2024.7.11
日本酒ソムリエ・「EUREKA!」オーナー  千葉麻里絵さんが推す日本酒<br><small>花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生<br>|私が夏に飲みたいお酒②</small>

太陽が燦々と照らし、汗が滴る日本の夏。酒を飲みたくなるときもきっとあるはず。ビール、日本酒、スピリッツ、ワイン、焼酎……。酒のスペシャリスト6名がこの夏に飲みたい名酒を語ります。
 
今回は、日本酒ソムリエで、東京・西麻布の人気店「EUREKA!」オーナーの千葉麻里絵さんが登場。夏の暑い日におすすめの日本酒を紹介します。

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千葉麻里絵(ちば まりえ)
岩手県出身。日本酒ソムリエ。大学で学んだ化学の知見から独自の日本酒ペアリング体験を提案。著者『日本酒に恋して』など多彩なメディアで日本酒の魅力を発信している

無邪気な夏の記憶がよみがえる偏愛酒

「夏」と聞いて思い出すのは、幼少期に、実家のある岩手の山奥で過ごした記憶。おじいちゃんとおばあちゃんが米農家で、夏休みによく遊びに行っていた。田んぼの横に川が流れていて、そこに朝採れのキュウリやトマト、スイカが冷やしてあって。私はオロナミンCかラムネを冷やして、のどが渇いたらシュワシュワした炭酸を「プハー」ってビールを飲むみたいにやるのが楽しみだった。家に帰ると、おばあちゃんがカルピスの原液を水で割ってつくってくれるのだけど、それが市販の味よりも濃い。その濃いめのカルピスが入ったグラスには氷がいっぱい詰まっていて、氷が溶けるカランカランという音と、ヨーグルト的な爽やかな味が、私の夏の定番。もちろん、夜は線香花火をして……、みたいな偏愛的な思い出が、私にとっての「夏」だ。
 
そんな偏愛的な夏の記憶をよみがえらせてくれる日本酒が奈良・吉野にある「美吉野醸造」の「花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生」である。名前のごとくシュワシュワとしていて、味わいもポップなニュアンス。まさに大人のカルピスみたいで、そのまま飲んでも美味しいけど、ぜひ味変も楽しんでほしいお酒。氷を入れたグラスに注いで、ふた口くらい飲んだ後に、山椒(ちなみに、弊店「EUREKA!」では、大阪にある「やまつ辻田」のブレンド山椒を使っている。とても香りがよくおすすめ!)の粉をパラパラっと振りかける。そうすると、甘みの輪郭がくっきりと感じられる。ロックで日本酒を飲むだけだと氷が溶けて味が薄くなっていくが、山椒を入れると甘さを感じながら、飲むたびに爽やかな香りが鼻を抜けていく。ちょっと汗をかくくらいの夏の暑い日に飲むと、さらに美味しく感じるはず。活性にごりの泡がシュワシュワとはじける音も、一緒に楽しんでほしい。
 
花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生が発売されたのは5年ほど前になるが、2024年からラベルデザインがリニューアルされて、プリント瓶になった。夏酒って瓶が汗をかいてしまうから、シールで貼ったラベルだとビローンと剥がれちゃって、なんだか切なくなることも……。でも、今年の出荷分からはプリント瓶! 心配無用。蔵元杜氏・橋本晃明さんが、飲み手のことを考えてくれたところも、さらに好きになったポイントだ。
 
私の夏酒のイメージは、冒頭で書いた岩手の思い出もあって、バーベキューやキャンプなど、アウトドアで楽しみたいお酒だ。クーラーボックスに氷を詰めて、花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生を突っ込んで。お店で提供するときはもちろんグラスだが、アウトドアで飲むならプラカップでも雰囲気も相まって十分楽しく味わえる。山の冷たい川の水に浸けて、自分の足も川で冷やしながら、石の上で涼を感じながら飲むのも理想的。川で冷やしたスイカを割って、そこに花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生を注いでフルーツポンチにしても美味しいし、ロックに山椒、炭酸割りでぐびぐび飲むのもあり。バーベキューの肉にも合うし、カレーやスパイス料理にも合わせられる。夏のアクティブなノリで、ワクワク感を楽しみながら、いろいろと遊んでみてほしいお酒だ。

大人のカルピスみたいな日本酒は、ほかにもあるが、やっぱり花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生のワクワク感に勝るものはないと思っている。このワクワク感って、いたずら心に近いというか……。幼少期に食べたスイカバーは当たり付き(※1986年の発売当初はアタリ付きだった)で食べながらワクワクしていたし、駄菓子店には、少ないお小遣いでも楽しめるワクワクがたくさんあった。そういった無邪気な駄菓子店的なワクワク感が、花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生には詰まっているのだ。
 
無邪気なワクワク感がお酒に宿るのは、結局のところ蔵元のスタンスだと思う。花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生はポップな味わいだけど、花巴の酒造り自体は決して消費者に寄り添ったアプローチではない。誰にも媚びずに、造り手がやりたいことを貫いているのだ。それを当たり前のようにやっている姿が、私はとても好き。だって、消費者に寄り添うのは私たちサービスする側の仕事だから。造り手には、自分が造りたいお酒を造り続けてほしいという気持ちがある。そして、そのお酒でワクワクさせてほしい。そういったワクワク感って、味でいうとノイズになる。ノイズなのだけど、オフフレーバーとまではいかない心地のいいノイズ。花巴の酸の表現には、どこかいたずらっぽさがあるから、それが心地のいいノイズに感じるのかもしれない。
 
夏酒と聞いて、どんな日本酒を思い浮かべるかは、人それぞれだと思う。私のように、夏の記憶をよみがえらせてくれる何かをイメージする人も少なくないはず。そんな童心に帰れる日本酒や、思い出がよみがえるお酒を自分の中にもっておくのは、とても楽しいことだと思う。だって、日本酒は偏愛でいいんだから!

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花巴 水酛 SODA POP“活性にごり”生
価格|2200円/720㎖
原材料|米(奈良県産)、米麹(奈良県産米)
精米歩合|非公開
アルコール度数|17度
問い合わせ|美吉野醸造
Tel|0746-32-3639
www.hanatomoe.com

text: Nobuhiko Mabuchi illustration: Kako Kuwayama
Discover Japan 2024年6月号「おいしい夏酒」

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