香川県観音寺市 白栄堂の「一夜庵」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は1897(明治30)年に創業し、香川県観音寺市内に4店舗を構える白栄堂の「一夜庵」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
「香川県には明治から平成を生きた和田邦坊という、マルチクリエイターが存在しました。邦坊は民藝の理念に共感しましたが、柳宗悦が創設した日本民藝協会に属することなく、独自の創作活動を行った人物です。
例を挙げると、邦坊は1965(昭和40)年に開館した「讃岐民芸館」の初代館長に就任していますが、本館は讃岐の風土にこだわった邦坊独自のスタイルとなっていて見応えがあります。また地元香川で数多くのお菓子のプロデュースを手掛けました。
「白栄堂」は昭和30年代から邦坊と協働していた老舗です。銘菓「一夜庵」もそのひとつ。この菓名は、元享禄(1528)年に俳諧の始祖・山崎宗鑑法師が、いまでいう観音寺市に位置する興昌寺のかたわらに庵を結び、一夜庵と名づけたことに由来します。一夜庵は法師の好物だった蕎麦を使用したお菓子。厳選した蕎麦粉を使用した生地で、こしあんをくるんだお饅頭は素朴で飽きのこない味わいです。邦坊の筆による焼き印「一夜庵」の文字を愛でながらお召し上がりください。
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白栄堂
住所|香川県観音寺市観音寺町甲1125-7
Tel|0875-25-3888
営業時間|9:00〜18:00
定休日|木曜
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
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