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熟成日本酒の世界【後編】
無限の可能性を体感する注目の9本

2024.2.5
熟成日本酒の世界【後編】<br><small>無限の可能性を体感する注目の9本</small>

さまざまな要因がからみ合い、時を経て生まれる熟成日本酒。その無限の可能性を体感すべく、まずはこの9本に注目してみよう。

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<10℃以下で熟成させる熟成酒>

01|「天壽 秘蔵 純米吟醸」天寿酒造
1997年のヴィンテージ。精米歩合53%の純米吟醸酒は7℃でキープされることで、フルーティな香りが柔和になり、ドライアプリコットやアマレットに似た風味が立ち上がる。口中いっぱいに広がる旨み、また穏やかな戻り香も心地いい

02|「雪漫々」出羽桜酒造
品評会に出品する規格の華やかな香りが特徴の新酒を、5年間マイナス5℃で熟成。新酒特有の荒々しさが消えて口当たりもまろやかになり、じっくりと大吟醸の旨みを堪能できる。それでいて若々しい飲み口も楽しめるのが、また魅力である

03|「水芭蕉」永井酒造
2008年のヴィンテージ。マイナス2℃のセラーで10年以上の時間をかけて熟成させる。純米大吟醸の華やかな香りがほどよく落ち着くことで立ち上がるのはバニラやヘーゼルナッツ、ハチミツを想起させる香味。味わいの余韻は長く、後味も上品だ

<常温で熟成した古酒>

04|「古今」木戸泉酒造
熟成日本酒の先駆けともいわれる蔵元。兵庫県産の山田錦を全量使用した純米原酒を30年以上熟成。それらいくつかの原酒を杜氏自らがブレンドして、味わいのバランスを調整する。精米歩合60%ゆえにタンパク質の旨みもしっかりとにじむ

05|「月の桂 純米大吟醸古酒」増田德兵衞商店
京都の軟水を用いて磨き上げた日本酒を、甕に入れて熟成。その遠赤外線効果によって、よりまろやかで、たおやかな飲み口に仕上がる。大ぶりなグラスに注ぐ、あるいは常温ないしぬる燗で平盃を使って飲めば、その馥郁たる香りも堪能できる

06|「熟露枯 大吟醸」島崎酒造
1970年より品評会用の大吟醸酒の貯蔵を開始した蔵元。冬は5℃、夏は15℃と年間平均10℃の温度帯を維持できる自然の洞窟を活用した熟成法が上品で繊細、かつ複雑な香味をもたらす。風味のバランスがよく、旨みが自然に身体に染み込む

<お燗におすすめ>

07|「玉川 自然仕込 純米酒(山廃)」木下酒造
2017年のヴィンテージ。杜氏はイギリス出身のフィリップ・ハーパーさん。酵母無添加の自然仕込みの山廃純米を常温で熟成させる。約70℃の高い温度で燗をつけることでコクと香ばしさに優しさが加わって、力強い味わいがグッと引き立つ

08|「小鳥のさえずり 純米吟醸酒」神亀酒造
純米酒の先駆けで、熟成の魅力を引き出す手法にも長けた蔵元の純米吟醸熟成酒の代表作。上槽(もろみから生酒を搾る工程)後にマイナス10℃で取置することで、バランスを整え、その後温度を上げて熟成させることで力強い旨みを創出

09|「奥播磨 山廃純米スタンダード」下村酒造店
高品質な酒米・山田錦の産地として知られる兵庫県播州地域に位置する蔵元。山廃造り、火入れなしの生原酒を2年ほど熟成させた酒で、燗酒にすると生酒特有の熟成のニュアンスと独特の香味が楽しめる。すっと口中に広がる旨みも魅力

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販売コーナーには厳選した銘柄が並ぶ。非公開の地下セラーには、貴重なヴィンテージも並ぶ

熟と燗
住所|東京都千代田区三番町7-16
Tel|080-8015-5274
営業時間|15:00〜20:00
定休日|火・水曜

text: Koji Okano photo: Hiroshi Abe
Discover Japan 2024年1月号「ニッポンの酒 最前線 2024」

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