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茶会「つくよみ」から紐解く
オカズデザインのうつわと料理【後編】

2024.1.8
<small>茶会「つくよみ」から紐解く</small><br>オカズデザインのうつわと料理【後編】

野口悦士さんの個展で、会期中に行われた茶会「つくよみ」。オカズデザインの料理と、彗星菓子手製所の菓子が月のようなニュアンスがある野口さんのうつわで供された。

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静かな音楽に、秋の虫の音が重なる。15時からスタートしたこの日の茶会は、終盤は窓の外が徐々に暗くなっていき、いまにも月が出そうな雰囲気だった

オカズデザインのふたりがまだ駆け出しのころ、出張料理やクラフトフェアでうつわの作家と会う機会が多く、自然と「うつわと料理はともにある」と考えるようになったという。
 
野口さんのことを知ったのは、長崎・雲仙在住の友人を介してのこと。なんて盛り映えするんだろう、というのが第一印象。うつわの表情が一定でないところが、背景として料理を引き立たせてくれるのだ。

薯蕷の金団をつくり終え、共点てした抹茶を小ぶりな茶碗に注いでいく。「人数分を一度に点てたほうが、お客さまをお待たせしなくていいんです」と彗星菓子手製所さん。注ぎ分けるしぐさも美しく、抹茶の見え方も新鮮

野口さんのうつわの表情の揺らめきは、釉薬の重ね方と焼成で生み出される。23歳で鹿児島・種子島に渡り、いつしか陶芸にのめり込んでいくのだが、デンマークの陶芸工房で過ごしたときに衝撃を受けたという。
 
「彼らが使う土は1種類。限られた数の釉薬で、重ね方やかけ方で変化をつけ、焼きの段階での偶然の変化は求めていない。それなのに薪窯で焼いたのかと思えるぐらい、全部模様が違うんです。それを見ていて、僕も自分の土で、電気窯で、できることはまだまだあると気づかされました」
 
今回の茶会に合わせて茶杯や茶碗をつくることで、また新たな扉が開かれたと野口さん。「オカズデザインには、料理の引き出しをどれだけもっているのかと驚かされっぱなしです」。

<薯蕷/金団>
「抹茶に合うかなと思って昔つくった釉薬を試してみたら、いい具合の色が出ました」(野口)

山芋を蒸して裏ごしし、手亡(てぼう)あんと合わせた薯蕷生地を、籐で編まれたこし器に通して金団に。つくよみの歌に合わせて、月夜に咲く大輪の白菊をイメージ。中のあんには稀少な白小豆を使っている。

抹茶を数人分点てるための茶碗(片口)と、少量でも抹茶が美しく見える茶杯は、茶会「つくよみ 」のために野口さんがつくったもの。茶杯は漆器のように軽く、手馴染みがいい。抹茶を注いだ後、飲み干した後の「茶地図」も趣がある。黒の板皿は木工家・小山剛さんの作。菓子切りは木工作家のいしいりえさんとつくった、彗星菓子手製所のオリジナル

作家もののうつわは一期一会。
実際に使うことで深く実感できる

「カモシカ」のギャラリースペース。うつわの展示会開催中は毎日飲食席で使い心地が体感できる

釉薬と焼成で景色をつくる野口悦士さんのうつわ
主に使う土は鉄分が多く、粘土質できめの細かいもの。釉薬は、白、黒、透明などベーシックなもの。その濃度や重ねる順番、散らし方で、うつわの表情に「うつろい」を与え、焼成の際に酸素濃度をコントロールすることでさまざまな色合いを出す。「デンマークで学んだことを、こちらの素材と電気窯で、試行錯誤しながらやってみているところです」
https://etsuji-noguchi.com

菓子と茶をクリエイションする「彗星菓子手製所」
伝統的な手法や素材を用いながら、新しい感性でつくる菓子。今回は和歌や文芸作品などからそのイメージをかたちにした美しいひと皿。うつわ作家のほか、さまざまなジャンルのつくり手とのコラボレーションも。 店舗はもたず、国内外で「茶菓の会」を開催。目にも美しく、しみじみ美味しい菓子が多くの人の心をとらえている。菓子に合わせる茶も楽しみ
Instagram@feb08

展示会に合わせて料理を提案
うつわをはじめとする作家の展覧会を企画し、毎回テーマに添った料理や菓子を提供。「うつわと料理はともにあることを作家たちから教わった」とオカズデザインの二人。作家の側も、実用と美しさが共存するうつわを模索。ともに高め合ってきた。お客としては、作品の使い方の提案を受け魅力を体感しながら、季節の料理や菓子を楽しむことができる。
 
器と料理 カモシカ
住所|東京都杉並区下高井戸5-5-23
Tel|03-6304-6270
https://shop.okaz-design.jp

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text:Yukie Masumoto photo: Tetsuya Ito
Discover Japan 2023年12月号「うつわと料理」

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