ART

《川口まちこうば芸術祭》
町工場の職人×クリエイターが技術とアイディアで磨き合う

2023.5.22 PR
《川口まちこうば芸術祭》<br>町工場の職人×クリエイターが技術とアイディアで磨き合う

荒川を隔て東京に隣接する川口市は、鋳物産業を中心に栄え、現在では金属加工をはじめとした多種多様な町工場が数多く存在する。時代とともに磨かれた技術は、多くの現代建築や最先端の機械の製造に貢献している。
この技術の高さやものづくりの魅力を、多くの人に知ってもらいたいという願いが高まり、それに共鳴した5社が考え出したひとつの形が、「川口まちこうば芸術祭」だ。

職人たちのモチベーションに
火が付いた理由とは?

村松秀俊作「Transfer eyes」。造形から漏れる光が美しいインテリア照明。一枚の板から作り出された波目模様の照明と、回転するとモアレ模様が美しい照明

きっかけは、各社で連携したオープンファクトリーや、若いアーティストとの出会いだった。普段の仕事とは違うものづくりや、制作者の情熱に触れ、ともに作っていくプロセス、技術や熱意を外の人に伝えられることに、現場で働く職人たちも目が輝いた。このようなことから、デザイナーやアーティストとコラボし、自分たちの持つ技術をアートという形に昇華させることで、多くの人たちに見て触って感じてもらう機会を作ろうと考えた。

開催に至るまでは試行錯誤を繰り返し、さらにコロナ禍もあり、足掛け4年をかけて2022年3月に第1回「川口まちこうば芸術祭」を開催した。初の自主運営で準備が不十分なこともあったが、多くの来場者の笑顔や、心温まる応援エールに私たちのものづくりの情熱はさらに高まった。

石田己和作「fish block」。金属の表面研磨による質感の違いを楽しめる積み木。さまざまな積み上げ方が可能で、互いにフィットする形も特長

2回目を迎えてさらに
職人とクリエイターの想いが「広がる」

さかざきちはる作「モビール ペンギン空を飛ぶ」。絵本『ペンギンゴコロ』からペンギンが飛び出して、自由に空を飛ぶ様子をモビールにして表現

第1回に続きディレクターを務めた石田和人氏は、川口町工場の技術が日本中に広がり、世界へ広がっていく思いを込め、第2回のテーマに「拡張・広がり」を掲げた。集まったクリエイターは大手広告代理店のクリエイティブディレクターや、suicaペンギンやチーバくんのデザイナーの坂崎千春氏をはじめ各界で活躍する多様な方々。どんなコラボになるか、ワクワクする気持ちと緊張が町工場の面々に広がった。

はじめに、クリエイターを工場に招き各社の技術の特徴を伝えた。各々のアイディアはどれもステキだったが、製造現場から考えると “ムチャぶり”以外の何ものでもない。
石田ディレクターは語る。「製造現場を理解しているプロダクトデザイナーだと無理をし過ぎない納まりや、無駄をしない設計をするけれど、製品設計の経験値が少ないデザイナーやアーティストはそれを考えないところに面白みがある。そのうえ、それぞれの分野の第一線で活躍している方々は妥協を許さない。そのアイディアと町工場の製作能力との激しいバトルを期待した」
この予想は的中し、クリエイターの要望に応えるため、5社は奔走した。

「大変なことは目に見えていた、だけど中途半端では終わらせたくない。原案から設計図に落とし込む段階で苦労したが、クリエイターとの距離を縮めながら理解を深めた」
「研磨や印刷の指示はひとつの作品の中でも何通りもあり、現場も苦しんだ部分もあったが、職人本人が『やってよかった』と一番思えているからこの経験は宝」
「実にシンプルなデザイン。だから細かい部分の技術力が表れている。見る人が見れば感動する、どうやって作ったのか聞きたくなる作品」
どの作品も、一社で抱え込んでいたのではできなかった。互いの技術を熟知していて製造するためのアイディアや技術を各社が出し合い連携したからこそ、形にすることができた。 クリエイターの“ムチャぶり”は、結果として私たちに「技術革新」と「作品制作の経験」を授け、この数カ月の間に何年分もの相乗効果が生まれた。

石田和人(いしだ かずひと)
1967年川崎生まれ。1991年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。1993年同大学大学院修士課程機器デザイン専攻修了。1998年石田和人デザインスタジオを設立。家具や生活用品のプロダクトデザインを中心に活動中。2007年セルフブランド「YOCI」をミラノサローネにて発表。デザインフォーラム銀賞、PORADA DESIGN AWARD最優秀賞、グッドデザイン賞などを受賞。
https://www.kazuhitoishida.com

石田和人作「kawaguch-air『yurari』」。柔らかいラインでつながった、ゆらゆらと揺れるチェア。会場デッキでは子どもたちが代わる代わる楽しみ、笑顔であふれた
石田和人作「kawaguch-air『ameagari』」。雨上がりに現れる水たまりをイメージしたチェア。満開の安行桜を映し出す

もうひとつ、「CHUMS」とのコラボが実現し、共同開発したアウトドア商品を数量限定で販売するに至った。 金属加工とアウトドア用品は相性がよく、人気ブランドとのコラボは、商品開発や知名度拡大という意味でも今後の展開が大きく飛躍するチャンスであった。参加クリエイターからの紹介ではじまったご縁は多くの好意と協力をいただき、芸術祭に華やかさが生まれた。すでに新商品開発に向けた話し合いもはじまっており、テーマの通り、広がりと拡張がはじまっている。

2回目の芸術祭は、昨年を大幅に上回る来場をいただき、想像を超える反響にうれしさと驚きでいっぱいである。振り返れば、NHKをはじめとする多くのメディアでの慣れないテレビ出演や、準備から本番まで連日意見をぶつけ合った居酒屋……。終わってみればクリエイターと町工場の人のつながりという、何ものにも変えられない、深くて熱い信頼関係が生まれていた。

本業では、原材料価格や燃料費の高騰、人手不足等、目下の課題は山積している。そのような中で、今回いただいたご縁から、クリエイターとのコラボ作品の販売や、新たなBtoBの取引、販売チャネルの拡充等、展示発表からビジネスへの良い循環が生まれている。坂崎千春氏の個展での新たなタッグやコラボ商品の販売、各者がデザインした個性豊かな金属製の時計も早速に注文が入り、今後もラインナップを揃えていく(時計販売「空のカケラ」)。

高品質・高付加価値のものづくり、川口のものづくり力、日本のものづくり力をアピールをするため、世界フィールドでの発信の場を求め海外の見本市も視野に、活動を続けて行く。
「BASE TIMES kawaguchi」。私たちが立ち上げたこの組織は、クリエイターや町工場、学生など異分野の人と掛け算し、挑戦し、進化し続けていく。さらに、掛け算の相手を面白い人たちへ求めながら。 

読了ライン

眞鍋玲作「Heart Beat」。時計の形をしているけれど時刻を見る機能はない。左右に振ると、鼓動【Heart Beat】が動き、針が動きだす
ワークショップで製作したオリジナルキーホルダー。さまざまな色・形の金属版やアクリルパーツ、部品などを組み合わせて製作
左)増井あづみ作「円柱を切って現れたようなスタンドミラー」。土台の筒と鏡の板を別々に加工し、精密にはめ合わせて作った鏡。技術が生きたシンプルな形が特徴だ
右)大沼勇樹作「grind reflection」。軽く触れると揺らぎ、視線や光の当たり方が少し変わるだけで特殊研磨のアルミ板が宝石のような輝きを見せる
清田直幸作「one plate journey 1枚板の旅」。1枚板が各工場へ旅をしさまざまな用途や形へ変化していく。旅の過程を想像し、好奇心を生み出すオブジェと家具のシリーズ
ホワイエでは5社の技術を可視化した椅子のシリーズ「kawaguch-air」が並び、来場者は体感しながら各社の技術を理解することができる

 


川口まちこうば芸術祭
 
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