コエドビールの物語
地ビールからの脱却、起死回生をかけた新生「COEDO」
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全3回の連載《クラフトビール火付け役、コエドの物語》の2回目は、コエドブルワリーの朝霧重治社長とブランディングデザイナーの西澤明洋さんに話を聞いた。地ビールからの脱却を図り、クラフトビールとして復権を果たした「コエドビール」復活劇の裏側に迫る。そして、この先に目指すものとは。
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国内の専門店やレストランでの提供に加え、アジアやアメリカ、フランス、オーストラリアなど世界各国にも輸出する日本を代表するクラフトビールブランド。2015年には、初の海外タップルームが香港に誕生。
1990年の終わり頃から地ビールブームが沈静化したとき、コエドが味わっていたのは「よいものをつくっているのに売れない」というジレンマだった。コエドブルワリーの朝霧重治社長は「当時、地ビールは”癖がある”という表現がつきまといよいイメージとはいえませんでした」と振り返る。
ビール事業の立て直しを図るなか2005年に出会ったのが、ブランディングデザイナーの西澤明洋さんだ。西澤さんがコエドを知ったとき最も衝撃を受けたのは、ビールそのものの美味しさだったという。「人の手できちんとつくられたものは誰が口にしてもわかる、まっすぐなおいしさがある。コエドビールの味わいはまさにそれでした」と西澤さん。
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株式会社協同商事 コエドブルワリー 代表取締役社長 朝霧重治さん
1973年、埼玉県川越市生まれ。三菱重工株式会社を経て、1998年にコエドの母体の株式会社協同商事に入社。ビール事業の再編を手掛ける
コエドの良さを正しく伝えるため、地域性ではなく、ビールの造り方である小規模で職人的なものづくりを伝えるべく、一度地ビールという言葉を離れることにした経緯について、朝霧社長は話す。「お伝えしたかった職人性は、まさにアメリカの方々がつくった言葉である“クラフトビール”という表現が内包するもの。クラフトビールとしてのコエドを打ち出すことにしました」。
一方、リブランディングをトータルで手掛けることになった西澤さんは、デザイナー目線でビールの色が種類によって異なることに着目。感動したコエドビールの特徴を、日本の伝統色を使ってラベルに表現した。こうして2006年に、新生「COEDO」ブランドが誕生した。
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上質な麦芽と川越産のサツマイモ「紅赤」を使ったオリジナルエール。独自の焼芋加工から生まれる香ばしい甘みと赤みがかった琥珀色、無ろ過・生の芳醇な味わいが特徴
本物の地ビールをつくり続けながらブームにのまれ、リブランディングによって復権したコエドは、クラフトビールブームの火付け役ともいわれている。ふたつのウェーブを経験したコエドが、次に目指すものは何なのだろうか。朝霧社長にたずねた。「私たちはいまのクラフトビールの盛り上がりはブームではなく、ムーブメントだととらえています。多くの愛好家に受け入れられ、多様なビールの個性も認められるようになりました。こういう時代になったいまだからこそ、一度は断念した地元産の麦からビールをつくることに挑戦したいと思っています」。
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1976年、滋賀県生まれ。「ブランディングで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発など幅広いジャンルで活動
いまも朝霧社長の考えを理解するよきパートナーの西澤さんは確信する。「過去いち早く地ビールから脱却を図ったコエドが、今度は一番乗りで地ビールに還ろうとしている。すでに次の景色を見ているコエドのこれからに、期待したいですね」。
百花繚乱な味わいが花開くいまを、朝霧社長は「ビールのルネサンス期」だという。「コエドの直営レストランがあった川越の建物にラボをつくりました。今後もビールの楽しさを伝えていきたいと考えています」。
COEDOクラフトビール醸造所
住所|埼玉県東松山市大谷1352
Tel|0570-018-777
www.coedobrewery.com
文=達 弥生 写真=工藤裕之
2019年7月号 特集「うまいビールはどこにある?」
《クラフトビール火付け役、コエドの物語》
1|「ほとんどが手作業。 だから〝クラフト〟なんです」
2|地ビールからの脱却、起死回生をかけた新生「COEDO」
3|ビールはブランド、そしてコミュニティへ