静岡県・熱海市《ATAMI 海峯楼》
水とガラス、光が織りなす
絶景の贅沢なリゾート
大海原を独り占めするかのような海のリゾート。海との一体感に包まれ、心穏やかな寛ぎの休暇がはじまる。
せきねきょうこ
ホテルジャーナリスト。1994年から現職。仏アンジェ・カトリック大学留学後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所に勤務。環境・もてなし・癒しを軸に現場取材主義を貫く。www.kyokosekine.com
時を忘れる浮遊感と
オーシャンビューの醍醐味
日本有数の温泉地である熱海の高台に、緑に包まれるようにガラスの建物が佇んでいる。企業の迎賓館として建築家の隈研吾氏が設計を手掛け、1995年に竣工。2010年には宿泊施設「ATAMI 海峯楼」としてスタートした。
当時からスモールラグジュアリーリゾートとして知られ、全4室の施設にはいまもプライベート感が漂う。建物のデザインテーマは“水とガラス”。最上階のウォーターバルコニーは周囲の水盤に浮かび、海に続くサロンのようだ。
この特筆すべき建物が、2022年夏からリニューアル工事がなされ、新たな魅力を放っている。4室の客室のうちウォーターバルコニーに寄り添うラグジュアリースイート2室が、2022年12月にリニューアルオープンを迎えた。 全面改装されたのは、相模湾の大海原を前面に見渡す「誠波」、海とともに街並みも望める「風科」。周囲の水盤とガラスが織りなす、水に浮かぶ浮遊感があり、自然との一体感もたまらない。客室内のインテリアは、両室ともにホワイトとブルーに統一され、特に「誠波」の床には波柄の大判タイルが使われる。一方「風科」はR形を描く7mもの高さがある天井など、いずれも高級感のある個性的な部屋づくりが印象的である。
伊豆の恵みを日本料理で
熱海に滞在する人が楽しみとするのが、やはり食事であろう。ATAMI 海峯楼では、地元や近郊で採れる旬の食材を使い、漁港が近いことから、水揚げされたばかりの新鮮な海の幸をあしらう料理を提供している。
ウォーターバルコニーで味わえる朝食
ラグジュアリースイートに滞在のゲストはウォーターバルコニーか、または客室内での食事を選択。別の階にある2部屋「爽和」、「尚山」滞在のゲストは、落ち着いた雰囲気のメインダイニングにて食事が用意される。いずれも海に包まれる景色と絶品の料理が滞在の満足度を上げている。うつわや彩りに配慮し、出汁やひと皿ごとの際立つ香りにこだわる料理長・神山亮氏の技を食す幸せな瞬間だ。
外来利用も可能な「日本料理 楽精庵」
そして、新たに2023年1月、宿泊者以外の利用も可能な和室の食事処「日本料理 楽精庵」がオープンした。室内は煌びやかな金の襖に囲まれている。版画家・徳力富吉郎が描いた松と波が大胆に表現された金の襖絵が、最上階の“水とガラス”のウォーターバルコニーとはまったく別の独特な世界を演出。現在、1日2組の限定とされ、滞在者同様に、豊かな食材でつくられるATAMI 海峯楼のオリジナル料理が振る舞われる。
2月初旬の取材時は、献立「初卯月」から神山流の繊細な料理に舌鼓を打った。料理のみならず、大切に選ぶといううつわからもメッセージが感じられる。
読了ライン
ATAMI 海峯楼
住所|静岡県熱海市春日町8-33
Tel|0570-0117-22
料金|1泊2食付3万5950円〜、スイート7万4500円〜(2名1室利用の1名分、税・サ込)
客室数|4室(うちスイートは2室)
カード|AMEX、Master、VISAなど
IN|15:00
OUT|11:00
夕食|日本料理
朝食|和洋食
アクセス|車/東名高速道路厚木ICから約40分、電車/JR熱海駅から送迎車で約3分(要予約)
施設|レストラン、大浴場など
Discover Japan 2023年4月号「すごいローカル見つけた!」
text: Kyoko Sekine photo: Atsushi Yamahira