出雲大社の象徴的存在、御本殿に迫る
「建築」-2
出雲大社を象徴する建造物なのが、大国主大神が鎮座する国宝の御本殿。神社のみならず日本最高峰の建築の魅力を紹介しよう。
国内最大規模の木造本殿建築
出雲大社の象徴として境内にひと際大きくそびえ立つのが、大国主大神(おおくにぬしのおおみかみ)が鎮座する御本殿。現在の御本殿は、江戸時代の1744(延享元)年に建てられたもので、高さ約24m、平面規模は柱間が10・9m四方を誇り、木造の本殿建築としては国内最大規模となる。かの芸術家・岡本太郎が日本最高峰の建築と賞賛したその迫力は、訪れる参拝客の誰もが目を見張るほど。さらに、「大社造」と呼ばれる日本最古の神社建築様式でつくられており、国宝にも指定された。御本殿内の特徴は、大国主大神の御神体にある。社殿が南を向いているのに対し、御神体は西を向いている。この理由は、御本殿の構造や西の方角を鎮護するためともいわれている。
御本殿の内部の天井には個性的な雲が描かれた八雲之図がある。八なのに七しか雲がないのは八は永遠を表わす数字のためにその手前の七でよみがえりを表わしているという。
この比類なき建造物を支える、心御柱を中心とした9本の柱も特筆すべきもの。現在の柱は礎石の上に立っているが、17世紀以前は、柱の根を土の中に埋める「堀立柱建物」であった。この9本柱が、檜皮を何層にも重ねた棟木の大屋根を剛健に支えている。
大社造は神明造(しんめいづくり)と並ぶ日本最古の神社建築様式である。屋根の棟と直角方向の面を「妻」と呼ぶが、この面に出入り口である「妻入り」があるのも大きな特徴。屋根は本を開いて伏せるようなかたちの切妻造、今は礎石柱となっているが、もともとは土中に柱を埋める掘立柱で建てられていた。御本殿は高床式になっていて、古くから高さを追い求めた建築物であったことをうかがわせる。神明造が全国各地の神社で見られる建築様式に対し、大社造は出雲地方が中心。間口と奥行の幅が同じ、つまり正方形である御本殿は、俯瞰で見ると「田」の字になる9本の柱で支えられる。正面ではなく西を向いた御神座など多くの謎が残されているが、これは御本殿内でお祭りすることを目的につくられているため、参拝者が外から拝むことを前提にしていないことなどが関係するともいわれている。中央にある最も太い柱の心御柱はほかの柱より太く堂々としたものだが、実際には梁を支えるためのもので、構造上、重要となる棟木は二本の宇図柱が支えている。
出雲地方に多く見られる建築様式・大社造
御本殿で見る大社造の特徴
①千木(ちぎ) 2本の柱を交差させた千木は、伊勢神宮外宮と同じ先端を垂直に落とした外削ぎになっている。
②勝男木(かつおぎ) 鰹節のかたちに似ているからその名がついたともされる勝男木。各神社の御本殿により並ぶ本数も異なる。
③鬼板(おにいた) 銅版でできた鬼板。先に行われた平成の大遷宮において、勝男木、千木、鬼板などは新調された。
④懸魚(げぎょ) 屋根の下につり下げられている懸魚は、水や魚をかたどった彫刻を施したもので防火のおまじないがある。
⑤破風(はふう) 切妻造の屋根を妻側から見た三角形部分の造形を指す。神社や寺院をはじめ、和風建築で多く見られる。
⑥向拝(こうはい) 階段部分に張り出した屋根のこと。参拝者が御本殿にお参りする際には庇にもなってくれる。
⑦長押(なげし) 日本の建築で見られる柱の表面に釘(くぎ)を打ち付けて水平方向につなぐもの。
⑧軒付(のきづけ) 風雨に傷みやすい屋根の軒先を厚く葺き重ねること。軒付のよし悪しにより見た目は大きく変わる。
出雲大社
住所|島根県出雲市大社町杵築東195
Tel|0853-53-3100(出雲大社社務所)
時間|6:00~20:00
アクセス|電車/一畑電車出雲大社前駅から徒歩5分、JR出雲市駅からバスで20分車/山陰自動車道宍道ICから35分
駐車場|あり
出雲大社の「建築」
1|出雲大社の建築的魅力とは?
2|象徴的存在、御本殿に迫る
※記事内の写真は2013年に撮影されたものです
text: Hisanori Kato,Takenori Nanbu,Discover Japan photo: Haruo Nakano,Takanori Suzuki illustration: Hitomi Iha,Mariya Arai coordination: Tsuyoshi Nishikid
2017年 別冊「伊勢神宮と出雲大社」