《星のや京都》
平安貴族が愛した嵐山の宿で
遊び心に満ちた日本料理を
前編|伝統と独創性が調和する料理とは?
京都・嵐山の大堰川沿いに佇み、季節の移ろいを鮮やかに感じる「星のや京都」。圧倒的な非日常の寛ぎに加え、注目されているここでしか味わえない食体験についてご紹介。
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自由な発想と伝統を融合させた
独創的な「真味自在」

「日本料理店がひしめく京都で、ほかと同じ料理を出してもおもしろくありませんから」と話すのは「星のや京都」料理長の石井義博さん。平安時代の京の都には全国から食材が集まり、最先端の料理が生まれた。平安貴族の別荘地として愛された嵐山で提供する、現代における新しい料理を考えたとき、伝統と遊び心が調和する「真味自在」に行き着いた。「真味とは王道の日本料理。自在とは世界各地の調味料や技法を取り入れた独創的な料理。そのふたつが調和する献立を考えています」。

ホタルイカと山ウド、同じ時期に旬を迎える香り高い食材を合わせて。ホタルイカは酢味噌で食べられることが多く、酢味噌のように仕立てたゆり根がふたつの食材をつなぐ
春の献立は、この時期ならではの山菜や貝を多彩に用いる。まず先附にエスカルゴが登場。フランスのエスカルゴバターを思い浮かべるが、ここではしぐれ煮にして、よもぎ豆腐、焼き新タマネギのピュレとともに味わう。お椀と桜鯛の向附に続いて酒肴が2種。ひとつは、旬の海の幸(ホタルイカ)、土のもの(ゆり根)、野のもの(山ウド)を合わせた春の生命力に満ちたひと皿。もうひとつは、なんと赤貝とパクチーの取り合わせだ。

青々しい香りのする赤貝とパクチーに、オレンジ果汁を用いた酢味噌を添え、オレンジの皮を乾燥させた粉を散らしている。山菜と陳皮を合わせる中国料理から着想を得た料理
「赤貝は、どことなくパクチーに近い青い香りをもっているように思います。合わせてみたらどうかという発想で生まれたのがこの料理。パクチーは柑橘との相性もいいので、オレンジの果汁を使った酢味噌を添えてみました」
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真珠貝と菜の花に、中国の伝統食材ピータンを合わせた一品。濃厚なピータンの黄身は黄身酢に、琥珀色の白身は細く刻んで土佐酢をまとったジュレにし、日本料理のアクセントに
凌ぎの皿は、真珠貝、ピータン、菜の花という異色の取り合わせ。これは、ピータンを日本料理に使えないかと考えていたとき、ピータンが黒真珠を思わせるところから真珠貝を思いついたという。こんなにも柔軟でユニークな発想はどうやって生まれるのだろう。
「星野リゾートには日本料理だけでなく、フレンチやイタリアンなどさまざまなジャンルのシェフがいます。それぞれ得意とする食材や調理技法、知恵を互いに共有し、料理に生かす。うちの強みですね」

春の若いそら豆をペコリーノと一緒に食べるイタリアンを、日本料理に落とし込んだ一品。炭焼きにしたそら豆を、あっさりしたリコッタサラータ、コクのあるウニと一緒に味わう

フランスで親しまれる子羊と貝の取り合わせ。コンソメではなく、酒煎りにしたハマグリの出汁を用いて日本料理に仕立てている。イタリアワインの女王・バルバレスコを合わせて
日本料理とフレンチが手を取り合ったのが、強肴の子羊とハマグリの一品だ。子羊はおからを2時間以上まとわせてから蒸して、臭みと余分な脂を取り除く。軟らかく蒸し上がった羊をハマグリの出汁で炊き、フレンチならばニンニクを合わせるところを、行者ニンニクを添える。和洋の食材が調和し、伝統を重んじながらも自由な発想で新たな料理に仕立てている。
※状況により献立や食材が一部変更になる場合があります。
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料理の個性を引き出す、
ペアリングも充実

酒やノンアルコールのペアリングも見事だ。酒はワインを軸に、時に日本酒や、好みでノンアルコールを挟みながらセレクト。遊び心に満ちた料理の個性を鮮やかに引き出していく。
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古都の文化に触れるひととき
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text: Yukie Masumoto photo: Mariko Taya
2026年5月号「ようこそ!ニッポンのホテルへ」
































