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石川・かほく市《KAJI FACTORY PARK》
繊維を未来へ紡ぐクラフトツーリズム
後編|「KAJIグループ」が目指す、地域・産業・企業三方よしの関係

2026.4.12
<small>石川・かほく市《KAJI FACTORY PARK》</small><br>繊維を未来へ紡ぐクラフトツーリズム<br><small>後編|「KAJIグループ」が目指す、地域・産業・企業三方よしの関係</small>

2025年4月、石川県かほく市に、繊維産業の最先端を体感できる「KAJI FACTORY PARK(カジファクトリーパーク)」が誕生した。ファクトリーツアーやワークショップを通して合成繊維の可能性を知り、地域が築き上げてきた産業の魅力を発信している。

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石川の繊維産業の
技術力を広める

このままでは石川の繊維産業が廃れてしまう。危機感を募らせ、「北陸の産業を元気に、日本の繊維を元気に」と大きくかじを切ったのが、KAJIグループの3代目社長・梶政隆氏だ。

KAJIグループの3代目社長・梶政隆氏

繊維関連の機械やパーツ製作、糸加工から生地づくりまでを一貫して行ってきた伝統と技術を生かし、2014年には軽さと機能性を追求したグッズを展開する「TO&FRO(トゥーアンドフロー)」をスタート。国内外に北陸の技術力を知らしめることになる。2019年に生地ブランド「KAJIF(カジフ)」、翌年は超合理的セットアップブランド「K-3B(ケースリービー)」を展開。そして2025年、繊維業界における日本最大級の体験型産業観光施設・KAJI FACTORY PARKをオープンした。

自社ブランドの設立で持続可能な仕組みを構築
2019年に立ち上げた「KAJIF」。糸や生地づくり、染色、加工の選定までを行い、自社の生地ブランドとして世に送り出した。薄くて軽く、織りが緻密で風を通さない布はたなびく様子まで美しく、パリコレでも注目された

守りから攻めに転ずる中で、KAJIFという自社の生地ブランドを発足させたことは、大きな意味があると砂山さん。
「自社で糸を加工し、生地を織り、編み、さらに染色や加工の選定までを一貫して行っています。下請けだけを担っていた時代は会社の名前が表に出なかったものが、生地ブランドとして前面に出ていける足場が整ったことになります」

KAJIFはスポーツやアウトドアといった分野を越えて、インテリア業界やアパレルのコレクションブランドも注目するようになった。

体験型施設によって生まれる
持続可能な地域の在り方

日本最大級の体験型産業観光施設・KAJI FACTORY PARK

さて、KAJIグループの新しい施設の構想がスタートしたのは2017年。当初は新工場をつくる予定だったそうだ。ところが3年が経った頃、世界を新型コロナウイルスが襲った。すると日本はもとより海外からも注文が途絶え、瞬く間に工場の7割が稼働停止に。先が見通せない中、梶氏は大きく方向転換をした。新しい施設は工場だけではなく、日本中から人々が集い、ここ石川は繊維産業の中心地であるということを知ってもらうためのファクトリーパークをつくることにしたのだ。

地元企業の想いに
クリエイターたちが共感して実現

新潟県の産業観光イベント「燕三条 工場の祭典」を立ち上げた実績のある山田遊氏。梶政隆氏とは2016年、東京・羽田にTO&FROの1号店をつくったときからのつき合い。ともに繊維産業を盛り上げていく

パークのトータルディレクションにはmethod・山田遊氏、内装デザインに佛願忠洋氏、ランドスケープデザインにプラントハンターの西畠清順氏、パブリックアートデザインに建築家・陶芸家の奈良祐希氏という、各界のトップクリエイターを迎えた。完成したパークは、日本の合繊製造の最先端をリアルに体感できる場に。加えて、糸や生地でオリジナルアイテムをつくれるワークショップを展開。自社製品ブランド・TO&FROとK-3Bの旗艦店、北陸の工芸品が揃うショップ、直営レストラン、ふたつの遊具を備えたガーデンなども揃い、ふらりとやってきて満足できる遊び場となった。

リアルな場で魅力を伝え
関係人口の増加を狙う

糸巻きのモニュメントの間を通ってファクトリーツアーへ。最新技術も惜しまずに公開し、誰でも織物の現場を実体験できることで、繊維産業への関心が自然と高まる

砂山さんはこう話す。
「新しくレストランができたというので来てみたら、隣に繊維工場があって、地元石川が繊維の一大産地だとはじめて知ったというお客さまが少なくありません。実はそれこそが僕らの狙いです。石川や北陸の、ひいては日本の繊維を元気にするために、まずは地元の人たちに知ってもらわなければ」

レストランで食事をして工場を見学し、ワークショップに参加して一日を過ごす人も多い。工場は個人で自由に見学できるものだが、団体でファクトリーツアーに参加すれば、工場内をつぶさに案内してもらえる。現在は他県の行政や自治体からの視察に加え、異業種の人たちや学生も訪れるそうだ。

「パークを起点に、新しい業態や若い世代と手を組むことでイノベーションを起こしたい。産地を守るために産業全体を活性化させたいです」と砂山さん。

自社製品だけでなく 北陸のものづくり文化も発信する
能登を中心に北陸3県のものづくりメーカーのプロダクトを扱うのは、北陸や日本のものづくり文化を活性化したいという思いから。継続することが能登の復興支援にもつながる

GWやお盆期間などには「KAJI Fes」と称した大型イベントを実施。ほかにも毎月、繊維にからめたイベントや北陸の工芸品のポップアップを行っている。生産の現場をまちに開いて人を呼び込む先進的な仕掛けで、地域、そして繊維産業を盛り上げていく。

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KAJI FACTORY PARK
繊維を未来へ紡ぐクラフトツーリズム

01|繊維の魅力を体感“繊維の遊び場”が誕生!
02|KAJIグループの地域に根ざしたものづくり
03|地域・産業・企業三方よしの関係とは?

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