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長崎・諫早市《陣野真理》
“個”の求心力で、まちの景色は変わる
|九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 にぎわいづくり部門

2025.9.30
長崎・諫早市《陣野真理》<br><small>“個”の求心力で、まちの景色は変わる<br>|九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 にぎわいづくり部門</small>

今年で4回目の開催となった、JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2025年も始動。宿・食・ものづくり・にぎわいづくりなど、旅心をくすぐる、魅力的な取り組みとの出会い。今回、九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 にぎわいづくり部門を受賞したのは、長崎・諫早の商店街を舞台に4つの店舗を運営しながら、市民を巻き込むマルシェで賑わいを生み出す陣野真理じんのしんりさん。商店街を「自己実現の場」に変え、市民にシビックプライド(誇り)を育む挑戦を続けている。

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ワクワクする未来を
思い描かせてくれる

商店街を練り歩く、人、人、人!この賑わいを仕掛けるのは、長崎・諫早市出身、現在40歳の陣野真理さんだ。その活動の主軸はふたつある。

ひとつ目は両親が創業した「トミーズバーガー」。大学を卒業してフリーターだった陣野さんは、お遍路の途中で母から廃業を知らせる電話を受ける。このままではいけない、地元に恩返ししなくてはと一念発起。現在は商店街で4つの店舗を運営する。両親から継いだトミーズバーガー、商店街で空きテナントになりかけていた場所に「BASE cafe」、経営難の産直市場を引き継いだ「いさはや市場 TETOTE」。そして旧十八銀行の跡地にレストラン「ARCH」をオープン。地域の人材を約70人、新たに雇用している。

ふたつ目は地域活性化事業だ。「高度経済成長期は買い物=ワクワクでした。いまも昔も商店街の方は一生懸命商売しています。しかし昨今、商売をやっているだけではお客さまを満たせなくなり、シャッター街など寂しい現状になっています」と陣野さん。しかし、ショッピングモールやオンラインショップにはない「市民が入ってこられる余白がある」という価値を見出し、商店街をフォースプレイスと位置づけ「自己実現の場」としてさまざまなプロジェクトを立ち上げる。

その集大成が、2021年からスタートし、年3回開催されている「GOO GOO MARCHE」だ。登録店舗は900を超え、毎回200店ほど出店の応募があり、テーマに合う店を選んで、120ほど出店してもらう。来場者は毎回1万人を超えるというから驚きだ。

どう巻き込むか?の継続が、
市民のシビックプライドを醸成!

地元の高校生、主婦やデザイナーなども巻き込み、もてなす側の楽しさを提供。インスタ投稿やLINEの管理、シフト作成、出店者とのやりとりなども任せる。イベント「GOO GOO MARCHE」後は修了書を渡すなど、経験をかたちに残し、次の挑戦を応援する

「重要なのは、マルシェを使って市民をどう巻き込んでいくか」と陣野さん。マルシェの運営は、地元の高校生100人に任せているという。「イベントを通して、しっかりと責任感を与えることで、このイベントを、この街を、私が動かしているんだという思いをもってもらいたい。それが街への愛情やシビックプライドにつながります」。イベントのノウハウも市民団体に広く提供し、毎月どこかの団体が、商店街でイベントを行う状況をつくっている。「衰退すらサービスにしていこうと考えています」と陣野さんはほほ笑む。

「次世代の高校生と、地元に賑わいをつくっているのがうれしいですね」と諫早出身の伝統技術ディレクター・立川裕大さん。「陣野さんのように、皆のハブになる人がいて、“この街にはこの人がいる!”と思えることは地域にとって心強いこと」と俳優・ 宮﨑香蓮さん。街のシビックプライドを育む活動に大きなエールを送りたい。

90余年の歴史がある旧十八銀行跡地に、テナントとして入る陣野さんが手掛けるレストラン、ARCHがプレゼンの会場に

陣野さんが手掛ける店舗・イベントをご紹介!

〈トミーズバーガー(1981年)〉

陣野さんの両親が創業した地元で愛されるハンバーガーショップ、トミーズバーガー。長崎和牛やジビエなどの地元食材をふんだんに使用。諫早のソウルフード・トミーズチキンやクレープも人気。

〈BASE cafe(2019年)〉

「体を基礎(BASE)から整える」をコンセプトにするBASE cafe。地元の素材をたっぷり使うスパイスカレーやスイーツがラインアップ。地元の人が集まる基地(BASE)にもなっている。

〈GOO GOO MARCHE(2021年〜)〉

多彩な出店で多くの人を呼び込み、賑わいを生む「GOO GOO MARCHE」(次回の開催は、2025年11月を予定)。

〈いさはや市場 TETOTE(2023年)〉

中央商店街にある「いさはや市場 TETOTE」。諫早周辺の新鮮な野菜をはじめ、ヴィーガン対応の食材やグルテンフリーの食材なども取り扱い、これからの健康をつくる、新しい産直市場を目指す。

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〈ARCH(2024年)〉

90余年の歴史がある旧十八銀行跡地に、テナントとして入る陣野さんが手掛けるレストラン、ARCHがプレゼンの会場に。店内には諫早の地形をモチーフにした、多様なアレンジができるテーブルが並ぶ。

 

特別賞–NEXT CREATE–を
受賞した皆さま①

 
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ARCH
住所|長崎県諫早市本町5-1
Tel|0957-23-5125
営業時間|11:00~22:00
定休日|火曜

text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」

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