長崎・諫早市《陣野真理》
“個”の求心力で、まちの景色は変わる
|九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 にぎわいづくり部門
今年で4回目の開催となった、JR九州が手掛ける「九州観光まちづくりAWARD」が2025年も始動。宿・食・ものづくり・にぎわいづくりなど、旅心をくすぐる、魅力的な取り組みとの出会い。今回、九州観光まちづくりAWARD2025 金賞 にぎわいづくり部門を受賞したのは、長崎・諫早の商店街を舞台に4つの店舗を運営しながら、市民を巻き込むマルシェで賑わいを生み出す陣野真理さん。商店街を「自己実現の場」に変え、市民にシビックプライド(誇り)を育む挑戦を続けている。
ワクワクする未来を
思い描かせてくれる

商店街を練り歩く、人、人、人!この賑わいを仕掛けるのは、長崎・諫早市出身、現在40歳の陣野真理さんだ。その活動の主軸はふたつある。
ひとつ目は両親が創業した「トミーズバーガー」。大学を卒業してフリーターだった陣野さんは、お遍路の途中で母から廃業を知らせる電話を受ける。このままではいけない、地元に恩返ししなくてはと一念発起。現在は商店街で4つの店舗を運営する。両親から継いだトミーズバーガー、商店街で空きテナントになりかけていた場所に「BASE cafe」、経営難の産直市場を引き継いだ「いさはや市場 TETOTE」。そして旧十八銀行の跡地にレストラン「ARCH」をオープン。地域の人材を約70人、新たに雇用している。

ふたつ目は地域活性化事業だ。「高度経済成長期は買い物=ワクワクでした。いまも昔も商店街の方は一生懸命商売しています。しかし昨今、商売をやっているだけではお客さまを満たせなくなり、シャッター街など寂しい現状になっています」と陣野さん。しかし、ショッピングモールやオンラインショップにはない「市民が入ってこられる余白がある」という価値を見出し、商店街をフォースプレイスと位置づけ「自己実現の場」としてさまざまなプロジェクトを立ち上げる。
その集大成が、2021年からスタートし、年3回開催されている「GOO GOO MARCHE」だ。登録店舗は900を超え、毎回200店ほど出店の応募があり、テーマに合う店を選んで、120ほど出店してもらう。来場者は毎回1万人を超えるというから驚きだ。
どう巻き込むか?の継続が、
市民のシビックプライドを醸成!

「重要なのは、マルシェを使って市民をどう巻き込んでいくか」と陣野さん。マルシェの運営は、地元の高校生100人に任せているという。「イベントを通して、しっかりと責任感を与えることで、このイベントを、この街を、私が動かしているんだという思いをもってもらいたい。それが街への愛情やシビックプライドにつながります」。イベントのノウハウも市民団体に広く提供し、毎月どこかの団体が、商店街でイベントを行う状況をつくっている。「衰退すらサービスにしていこうと考えています」と陣野さんはほほ笑む。

「次世代の高校生と、地元に賑わいをつくっているのがうれしいですね」と諫早出身の伝統技術ディレクター・立川裕大さん。「陣野さんのように、皆のハブになる人がいて、“この街にはこの人がいる!”と思えることは地域にとって心強いこと」と俳優・ 宮﨑香蓮さん。街のシビックプライドを育む活動に大きなエールを送りたい。

陣野さんが手掛ける店舗・イベントをご紹介!
〈トミーズバーガー(1981年)〉

陣野さんの両親が創業した地元で愛されるハンバーガーショップ、トミーズバーガー。長崎和牛やジビエなどの地元食材をふんだんに使用。諫早のソウルフード・トミーズチキンやクレープも人気。
〈BASE cafe(2019年)〉

「体を基礎(BASE)から整える」をコンセプトにするBASE cafe。地元の素材をたっぷり使うスパイスカレーやスイーツがラインアップ。地元の人が集まる基地(BASE)にもなっている。
〈GOO GOO MARCHE(2021年〜)〉

多彩な出店で多くの人を呼び込み、賑わいを生む「GOO GOO MARCHE」(次回の開催は、2025年11月を予定)。
〈いさはや市場 TETOTE(2023年)〉

中央商店街にある「いさはや市場 TETOTE」。諫早周辺の新鮮な野菜をはじめ、ヴィーガン対応の食材やグルテンフリーの食材なども取り扱い、これからの健康をつくる、新しい産直市場を目指す。
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〈ARCH(2024年)〉

90余年の歴史がある旧十八銀行跡地に、テナントとして入る陣野さんが手掛けるレストラン、ARCHがプレゼンの会場に。店内には諫早の地形をモチーフにした、多様なアレンジができるテーブルが並ぶ。
受賞した皆さま①
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ARCH
住所|長崎県諫早市本町5-1
Tel|0957-23-5125
営業時間|11:00~22:00
定休日|火曜
1|JR九州による「九州観光まちづくりAWARD2025」、結果発表!
2|福岡・糸島市「前田和子・大串幸男(白糸の森)」
3|福岡・柳川市「柳川藩主立花邸 御花」
4|大分・宇佐市「神谷禎恵」
5|熊本・南関町「ヤマチク」
6|長崎・諫早市「陣野真理」
7|特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま①
8|特別賞–NEXT CREATE–を受賞した皆さま②
9|「九州観光まちづくりAWARD2025」を振り返ろう
text: Nozomi Kage photo: Hiromasa Otsuka
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」


































