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京都人の「おいでやす」と「おこしやす」
どう違う? 知って楽しい京都のことば

2017.9.6
京都人の「おいでやす」と「おこしやす」<br>どう違う? 知って楽しい京都のことば
(冒頭写真:間澤智大)

京都でよく耳にする「おばんざい」や「おいでやす」などの言葉。
京都で使われるその言葉の意味やストーリーを知ると、京都という世界がより味わい深く、鮮やかに見えてくる。
知って面白い、京都ことばにまつわるお話を、京都や食、日本旅館にまつわる執筆で知られる柏井壽さんに解説いただいた。

『おばんざい』はお店で食べるものではない?

京都のグルメと聞いて、『おばんざい』を思い浮かべる人は少なくないだろう。
この『おばんざい』、本来は家庭で食べる質素なおかずのこと。
なので、お金を出して、お店でたべるものではない、と柏井さんはいう。京都名物のようにして、『おばんざいバイキング』や『おばんざい定食』などというメニューを掲げているのはあくまで、観光客向けの料理なのだ。
京都で「『おばんざい』、どこのお店が一番美味しいですか?」と聞くと、古くからの京都人には「『おばんざい』の美味しい店など知りません」と言われてしまう……かも。

『京の腰抜けうどん』とは?

(写真:笠井爾示)

京都のおいしいものの一つとして挙げられるうどん。昔から「京都らしいうどん」はコシがなくやわらかいもの。
そのコシのなさを表現して、『腰抜けうどん』と呼ぶ。
麺ではなくだしが主役であるため、だしが染み込みやすいように、また、歯のないお年寄りでも歯ぐきで噛み切れるように、やわらかいのが特徴だ。コシがないからこそ、ダシをじっくり味わうことができる。
コシがあるうどんを出す店も増えているが、京都でうどんを食べるなら、ぜひコシのない『腰抜けうどん』を。

「おいでやす」と「おこしやす」の使い分け

京都の店を訪れて、最初にかけられる言葉には、ふた通りある、と柏井さんはいう。
通りがかって、ふらりと入った漬物店なら「おいでやす」と迎えられる。
対して、予約しておいた割烹店。暖簾をくぐり店に入ると、「おこしやすぅ、ようこそ」と女将が迎えてくれるはず。

「『おいでやす』は店に入ってきた客すべてにかける言葉ですが、『おこしやす』は、より丁寧に迎え入れる言葉だと思ってください」と柏井さん。
わざわざお越しいただいて、ありがとうございます、という気持ちを込めての『おこしやす』なのだ。
京都人は、さり気なく、こうした言葉の使い分けをする。この違いに気づけば、自分がどういう迎え方をされているか、がわかるのだ。

京都の旅は「予習」が必要

「京都旅を成功させるには予習が必要。」柏井さんは、そう語る。
京都は千数百年もの長い時間に、起こったことや繰り広げられた歴史が、折り重なっている街。
ここで紹介した言葉だけでなく、料理店、神社仏閣などの名所、お寺の山門や神社の鳥居ひとつとっても、長い歴史と紆余曲折を経て、今の姿でそこにある。
そうした「基礎知識」を知っていれば、京都で目にするもの、口にするものすべてが、何倍も面白くなる。
予習によって得た知識や事実、京都人の知恵などを旅の現場でたしかめることは、京都旅でこそ味わえる醍醐味なのだ。

柏井 壽 PROFILE
京都府生まれ。歯科医院を営む一方で「京都」、「日本旅館」、「食」をテーマとするエッセイ、小説を執筆。
小誌にて「逸宿逸飯」を連載中。近著に『京都二十四節気』(PHP研究所)、『鴨川食堂おまかせ』(小学館文庫)、『別冊Discover Japan_TRAVEL 味わいの名宿』、『Discover Japan TRAVEL 泣ける日本の絶景88』(ともに小社刊)などがある。

(text:Discover Japan photo:Tomohiro Mazawa, chikashi kasai)

※本記事は『Discover Japan10月号』の特別付録『京都の予習』から作成しています。

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