TRADITION

かみ添のメッセージカードと便箋
いま知っておきたい逸品

2020.7.27
<b>かみ添のメッセージカードと便箋<br>いま知っておきたい逸品</b>
嘉戸さんがデザインした多様な木版を写した、文様が美しい「二つ折りカード」。封筒が付き、手紙を送る人の心に寄り添う、かみ添の想いが込められた逸品である

職人の手仕事で生み出される本当に良いモノを紹介していく《いま知っておきたい逸品》。今回は暮らしに寄り添うモダンで美しい唐紙をつくる工房「かみ添」の二つ折りカードを紹介します。

嘉戸 浩(かど・こう)
1975年、京都府生まれ。唐紙職人。1998年、嵯峨美術短期大学専攻科プロダクトデザイン学科卒業。2001年Academy of Art University卒業。京都の唐紙の老舗「唐長」で5年修業を積み、2009年に京都西陣に「かみ添」をオープン

その日の温度や湿度で絵の具ののりが変わる。湿気があるほうがやりやすい。「朝、雨が降っていると窓を開けて湿気を取り込みます」

「唐紙」とは和紙に木版による文様を写し取ったもの。平安時代からの歴史を秘めた品性を感じさせるその文様は、光の差し具合で微妙に表情を変える。

京都西陣で2009年に創業した「かみ添」は、平安時代から日本人の暮らしの中にある唐紙の歴史を踏まえ、モダナイズした唐紙を製作する工房。かみ添を主宰する唐紙職人のさんは、「紙にしたためられることで想いが伝わったり、紙を染めたり柄を刷ることで空間に色を添えるような、何かに寄り添うことで価値をもつ」という想いをこの屋号に込めた。

雲母の光沢のある柄が季節のうつろいを感じさせてくれる便箋。透け感のある和紙に、一枚一枚丁寧に柄を摺って仕上げている

京都で生まれ、プロダクトデザインを学び、アメリカ留学したことをきっかけにグラフィックデザインに転向した嘉戸さん。一時帰国の際に偶然訪れた唐紙工房で唐紙に出合った。

「日本に帰国後グラフィックの仕事をしていたのですが、コンピュータが苦手で(笑)。ニューヨークにいたときも出版社でアートプロダクションの仕事をしていたのですが、グラフィックに転向したのも紙と印刷技術自体が好きだったから。データをつくるよりも職人に興味があり、京都でしかできないことは何かと考えたときに、コンピュータはとは逆の方向に行きたくて、木版を選びました」。

唐紙の老舗「唐長」で5年間修業後、元理髪店という現在の物件に出合い、かみ添を立ち上げた嘉戸さん。

デザイナーから職人へ転身したように見えるが、木版もグラフィックも図案をデザインするという点では同じ。唐紙という古典印刷に携わるようになったことはある意味自然な流れだったという。

「家紋を唐紙のデザインに落とし込んだり、植物を図案化するのもロゴを考えるのと同じグラフィックデザインです。現代ではコンピュータで版をつくるところを木版でつくり、印刷会社とやりとりする代わりに自分で絵の具を調合する。印刷という意味ではまったく同じなんですね」。

絵の具を木版に塗る「ふるい」は木工作家に製作を依頼したもの。ガーゼは毎回洗って張り替える

唐紙の和紙は越前和紙を使う。紙の状態や天候、摺るときの手加減で刷り上がりが変わってくるところが唐紙のおもしろいところだ。

「和紙に触れれば職人さんがどう漉いたかが手に取るようにわかります。和紙のつくり手の想いと合わさって一枚の唐紙になるのが楽しいんです」。

文様の豊かさから唐紙に魅せられたというが、意外にも柄をオリジナルにこだわる気持ちはあまりないという。

花崗岩を砕いた顔料である雲母、マットな絵の具のベースに使う胡粉。着色は黄土、ベンガラ、藍の三原色を混ぜて水で溶いて色をつくる

「古材のテクスチャーを刷り写したり、木の柾目(まっすぐに通った木目)を使った柄づくり、建築のなぐり(角材や板に独特の削り跡を残す加工)の意匠が好きでそれを版木として使ったりしています」。

それだからか嘉戸さんがつくる唐紙は、つくり手の作為が目立たず品がある。だからこそ、それらを作品と呼ぶことを嘉戸さんは嫌うが、創造性と美意識にあふれた唐紙は、その歴史を軽やかに更新するアートともいえる。

「今後は修復の仕事にも携わりたいと思っています。技術と経験と知識を積み重ねて厚みのある仕事をして、唐紙職人として認められるようになりたいですね」。

かみ添
住所|京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
Tel|075-432-8555
営業時間|12:00〜18:00
定休日|月曜、ほか不定休あり
http://kamisoe.com

text : Takashi Kato photo : Mitsuyuki Nakajima
2019年12月号 特集「人生を変えるモノ選び。」


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