「岡山芸術交流2025」を起点に愉しむアート旅へ。
「瀬戸内ゲートウェイ構想」のこれまでとこれから【前編】
近畿と九州、四国を結ぶクロスポイントに位置する岡山。江戸時代より独自の文化が育まれたこの地はいま、現代美術の国際展「岡山芸術交流」をはじめ、新鋭の現代美術館「ラビットホール」、アーティストと建築家が共創する宿泊施設を街に配置するプロジェクト「A&A」など、アートが浸透している。その根底には、アートを通して岡山を起点に瀬戸内の地域文化を発信する“瀬戸内ゲートウェイ構想”があった――。
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“呼吸する”美術館が、
岡山の観光を変えていく
岡山市の天神町、内山下、石関町に広がる旧城下町エリアは、岡山の歴史・文化を語る上で外せないカルチャーゾーンだ。荘厳な岡山城をはじめ、日本三大庭園のひとつ・岡山後楽園、林原美術館など歴史・文化施設が集積し、時をかけて文化の記憶を紡いできた。

このエリアに、2025年4月、新しい現代美術館「ラビットホール」が誕生した。国内で新設された最新の現代美術館は、現代アートの聖地として国内外から注目を集める瀬戸内エリアへのアート旅を変える存在として、いま注目を集めている。

ラビットホールを手掛けたのは、石川文化振興財団の理事長・石川康晴さん。20代の頃より現代アートに魅せられ、アートの力で岡山の街に新たな魅力を創出するために、さまざまなプロジェクトを先導している。

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“思考”を促す
アートが育むものとは?

ラビットホールは、岡山の文化の一翼を担ってきた林原家のルネサンスビルをコンバージョンして生まれた。城下町としての歴史を伝える石垣と共存するなど、歴史に敬意を払い既存の文化資産と響き合いながら新たな風を吹き込んだ。

展示されているのは、日本で最も先鋭的なコンセプチュアル・アートを中心とした「イシカワコレクション」。キュレーター・黒澤浩美氏、建築家・青木淳氏、ギャラリスト・那須太郎氏、そして石川さんの4名から成るディレクター・コレクティブが運営し、巨大アートからインタラクティブな知覚体験まで、新たな感性の扉を開く約40作品が厳選されている。
「現代アートの最大の魅力は、思考を柔軟にし、新たな視点を呼び起こすきっかけになること。その出合いの場を、街とシームレスにつなげることで、地域に新たな価値が醸成されていく。特に未来を担う子どもたちの多様な視点を育むことを大切にしています」と石川さん。
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「瀬戸内ゲートウェイ構想」
はじまりは岡山芸術交流でした

©Okayama Art Summit 2025 Left: Photo by Andrea Rossetti
アートをきっかけに街の歴史や文化も楽しむことで、岡山が瀬戸内アート旅のゲートウェイとなる――。
その構想は、2016年に開催された国際現代美術展「岡山芸術交流」からはじまった。

世界的なアーティスト自らがアーティスティック・ディレクターを務め、岡山城や廃校となった小学校、美術館など市街地の各所に作品を設置し、街全体がアートになる。暮らしの中で自然とアートに出合う斬新な芸術祭は、これまで3回開催され、延べ約72万人が来場。
そして2025年9月26日より、第4回目となる「岡山国際芸術交流2025」が開催され、世界でも類を見ない新たな試みが注目されている。

また岡山芸術交流で過去に展示された作品をパブリックアートとして街に長期間展示する「A&C(Art & City)」、アーティストと建築家がコラボレーションした宿泊施設「A&A(Artist & Architect)」などのプロジェクトも相まって、岡山市は伝統の中にアートが調和し、新たな風景を刻んでいる。
その最先端の施設であり、瀬戸内文化ツーリズムの起点となるべく「ラビットホール」が生まれた。
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「ラビットホール別館」と
アートで切り開く岡山の未来とは――。
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photo: Kenji Okazaki, Sadaho Naito



































