和歌山から全国へ広がる
「光のまちづくり」【後編】
|地域の誇りを生み出す、光の力とは?
オフシーズンやナイトタイムの観光は、地域が直面している課題のひとつ。和歌山市も抱えていたこの悩みに応えたのはイルミネーションの力。イベントを仕掛ける旗振り役に求められるもの。それは、地域を巻き込み動かす力。和歌山とともに歩んできたタカショーデジテック代表に、“光のインフラ”戦略の真意をうかがった。
タカショーデジテック
代表取締役社長
古澤良祐(ふるさわ りょうすけ)
1977年、愛知県生まれ。イギリス留学から帰国後、和歌山のガーデンライフスタイルメーカー「タカショー」に入社。入社2年目にLEDと出合い、社内ベンチャーとして「タカショーデジテック」を設立する。
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イルミネーションは、和歌山をどう変えたのか?

心躍るようなエンターテインメントと美味なる食。人を集める戦略の基本だが、「もともと地方には美味しいご飯も観光名所もあるのに、なぜ和歌山には人が来ないのだろうと思ったときに、夜の景色が暗いことに気づきました」と古澤さん。その読みはFeStA LuCe(フェスタ・ルーチェ)で実証されたわけだが、「僕たちのイルミネーションはアートというよりも、環境の中に光のインフラを築いていく感覚なんです。やりたかったのは、光でつなぐ和歌山。街が光でつながっていけば、FeStA LuCeだけを見て帰ってしまうお客さんの目を街中にも引き寄せられるのでは、という狙いがありました」と話すよう、真の目的は光のイベントを起点に、和歌山を回遊してもらうことだった。

そのひとつが前述のKEYAKI Light Paradeだが、数千万円もの開催コストがかかる大規模ライトアップイベントでは、大手企業数社による協賛が一般的。だが、この手法では1社が降りると継続が難しくなるといった懸念があった。「継続することでイベントは風物詩になる。風物詩は文化となり、地域の人たちが自慢したくなる街になる。継続できる仕組みづくりが重要でした」。
古澤さんは、和歌山に縁のある企業や店舗、住民全員で街を盛り上げる仕組みとして、規模の大小にかかわらず100社以上の協賛を集めるほか、ともに盛り上げる仲間として協力店舗も募ることに。112店が参加した2024年度の開催期間中には、さまざまな参加型イベントが生まれ、冬の街に活気があふれた。古澤さんはいまでも、新しいことをはじめるときには、継続を念頭にスキームを考えるようにしている。

今後もこの取り組みに賛同する人たちが多く生まれ、街が活性化していくことを古澤さんは願っている。そのためには、継続できる仕組みづくりが不可欠であり、和歌山市との連携協定も結んだ。「行政と民間の両輪で盛り上げていくことが重要かなと。ほかの地方都市にも適合するまちづくりのモデルとして、僕らの活動が連鎖してくれたらいいなと思っています」
同じ悩みをもつ地域同士が情報共有しながら盛り上がれば、地方はもっとおもしろくなる。地方創生のカギは、地域に誇りを生み出すこと。継続と地域の巻き込み力で、2025年度もスケールアップした開催が決定しているKEYAKI Light ParadeとFeStA LuCe。まずは冬の和歌山を訪れ、「光のまちづくり」を体感してほしい。
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光のまちづくりのキーになる3つの要素とは?
古澤さんが光のまちづくりを行う際に戦略としているキーワード「光・エサ・蜜」。
これら3つの要素には人を惹きつける力があり、オフシーズンをオンシーズンに変える。
①夜に出掛けたくなる
「光・エサ・蜜」の戦略
2017年度に初開催のFeStA LuCe in 和歌山マリーナシティにおいて、はじめて「光・エサ・蜜」の戦略を実施。その結果、来場者数は8万人を超え、来年度以降の開催も決定した。

県外からも訪れてもらうために、和歌山マリーナシティの世界観を生かした唯一無二のイルミネーションを設計

期間中は屋台形式の飲食店も出店。食べ歩きながらイルミネーションを回ることで、観光客の夜の滞在期間を延ばした

会場の資産を生かして、アトラクションもライトアップ。昼とはひと味違うアトラクション体験を演出した
②+アイデアで盛り上げる
新しい「光・エサ・蜜」の戦略
2023年スタートのKEYAKI Light Paradeでは、地域の回遊性やイベントの継続性を高めるため、戦略にアイデアを追加。官民連携でショーを開催するなど多様なコンテンツを創出。

和歌山市と連携してドローンショーを実施。2万5000人以上が集まり、イベント開催のための補助金獲得にもつながった

協力飲食店112店舗とスタンプラリーを実施。グルメを通して周辺を回遊してもらうことで、地域への還元も実現した

企業、行政、店舗、地域住民などが夜の街を楽しむ多様な仕掛けを発案。右上)サイクリングなどの参加型イベントが多数誕生した。右下)ナイトタイムエコノミーを学ぶ研修プログラムを開催。左上)大学生発案で実施したクリーン活動。左下)ラッピングバスで移動も楽しめるように
③全国から人々が集まる地に!
和歌山市を訪れる観光客数は年々増加し、いまや一大観光地に。和歌山のFeStA LuCeは累計80万人(全国では100万人)を超え、2024年度のKEYAKI Light Paradeは18万人以上が訪れた。

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この冬に行きたい光の祭典
KEYAKI Light Parade by FeStA LuCe
期間|11月23日(日)~2026年2月28日(土)
会場|JR和歌山駅~和歌山城~南海電鉄和歌山市駅
Tel|073-455-5721
点灯時間|17:00〜23:00
料金|無料
≫公式サイトはこちら
FeStA LuCe in 和歌山マリーナシティ
期間|11月1日(土)~2026年2月23日(月)
会場|和歌山マリーナシティ ポルトヨーロッパ
Tel|073-484-3616
点灯時間|17:00~21:00
料金|一般1800円、中学生〜3歳1000円
≫公式サイトはこちら
text: Natsu Arai
2025年10月号「行きたいまち、住みたいまち。/九州」



































