沖縄県那覇市
南島製菓の「松風」
《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は沖縄県那覇市にある琉球菓子の老舗・南島製菓の「松風」をご紹介。
福田里香(ふくだ りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中。

夏休みはすぐそこ。GW前にご紹介した琉球王朝の味を伝える伝統菓子舗「南島製菓」ですが、夏に沖縄旅行を計画中の方にもさらに推します。理由は沖縄の手工芸文化が民藝運動に深い影響を与えたからです。柳宗悦は随筆に「沖縄の思い出」(底本『柳宗悦 民藝紀行』1986年)という題名で万感の思いをつづっています。
南島製菓の「松風」は食べる手工芸です。沖縄弁の発音は「まちかぜ」または「まちかじ」。長寿祝いの席で食されるそうです。結び切りにした意匠は縁結びを意味するため、砂糖天ぷらのサーターアンダーギー、塩天ぷらのカタハランブーと3種合わせて山のように飾れば、結納式に欠かせない祝い菓子ともなります。

実は「松風」という菓名は他県にもあります。京都の松風は和風味噌カステラ、熊本の松風は厚さ1㎜ほどの和風チュイールとそれぞれまったく趣が異なりますが、共通点はどの松風にも小粒の種子が振ってあることです。沖縄の松風は大ぶりで鮮やかなピンク色。パリッサクッな歯触りで目と舌がとても楽しい。
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南島製菓
住所|沖縄県那覇市松尾2-11-28 浮島通り
Tel|098-863-3717
営業時間|9:00~18:00、
日曜10:00~17:00 定休日|なし
https://www.nantou-seika.com/
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2025年8月号「道をめぐる冒険。」



































