第4回矢祭ブランド会議開催!
《福島・矢祭町》の愉しみは無限大!?
住民が見つけた、“矢祭ブランド”とは?


東北の最南端に位置する矢祭町。数多くの魅力に溢れるこの町では、2023年秋より住民参加型プロジェクト「矢祭ブランド会議」が進行している。2025年1月に開催された第4回目では、矢祭町の交流拠点となっている施設を視察するとともに、「矢祭町ツアー」を企画するワークショップを開催した。
自然とともに生きる
矢祭町に息づく暮らし

矢祭町は行けば行くほどたくさんの魅力に出合える稀有な地域といえよう。徳川光圀公をも魅了した矢祭山、阿武隈高地の秘境・滝川渓谷、日本有数の鮎の釣り場である清流・久慈川、樹齢約600年の福島県指定天然記念物「戸津辺の桜」など、美しい自然は目にした者の心を瞬く間に魅了する。
地勢は農作物の育成環境としても良好で、昼夜の寒暖差が大きく、冬の日射量も多いことから、ユズやイチゴ、ラズベリーといった特産品の品質も非常に高い。自家農園で米や野菜を栽培する家庭もいまだ珍しくなく、食卓には旬の美味を詰め込んだ料理が当たり前のように並べられる。矢祭町に暮らす人々は古代から山と川と大地に寄り添い、豊かに生きる知恵を脈々と受け継いできたのだ。

しかしながら他の地域と同様、少子高齢化や人口流出などの課題を抱えているのも事実。そこで持続可能な発展を目指し、地域資源の活用や観光客誘致の方向性を模索するべく「矢祭ブランド会議」を発足した。
本プロジェクトは矢祭町と一般社団法人CSV開発機構、Discover Japanの協働による取り組みで、住民主体で情報発信できる態勢の構築を目的としている。第4回目では、宿泊施設「東舘温泉 ユーパル矢祭」(以下、ユーパル矢祭)とコミュニティスペース「ヒガシダテ待会室」が行う情報発信の在り方を視察したのち、矢祭町の魅力(地域資源)が伝わるツアーを企画するワークショップを実施。参加者はまずユーパル矢祭へと向かった。
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身近だからこそ気づかない
町の魅力とは?

ユーパル矢祭は1995年に研修交流センターとして開業。観光、ビジネス、合宿等で訪れたゲストを迎えるとともに、多目的ホールは多様な用途で利用されている。露天風呂やサウナを備える温浴施設は自慢のひとつで、日帰り入浴を楽しむ住民も多い。

レストランでは「鮎尽くしプラン」をはじめ、福島の素材を用いた季節ごとの料理も提供。売店では矢祭町産の特産品を使用したさまざまな加工品の販売を行い、矢祭町のPRにも務めている。

JR水郡線・東館駅舎内にあるヒガシダテ待会室は、地域おこし協力隊がつくったコミュニティスペースだ。築約100年の駅舎を利用したレトロな空間で、フリードリンクを片手に、思い思いの時間を過ごすことができる。
観光情報発信スペースには矢祭町のイベント情報が集約されているほか、ヒガシダテ待会室でも「古着カフェ」や「ひがしだてマルシェ」などのイベントを不定期で開催。「駅の待合室」としての役割はもちろん、「地域の情報発信基地兼交流の場」としても機能している。

両施設は矢祭町の住民にとって身近な場所であると同時に、町外から訪れるゲストを迎える場所でもある。“内からの視点”と“外からの視点”で馴染みの施設をとらえたことで、矢祭町ツアーへのアイディアも湧いてきたかもしれない。
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住民自らが地域の
魅力に触れるツアーを企画!

続いては「矢祭町山村開発センター」へ移動し、5つのグループに分かれて「自然・風土」、「食」、「営み」のいずれかをテーマにした矢祭町ツアーを考えていった。
自然・風土をテーマにしたチーム①は、「黄門様が愛した秘境で整う!? 春風香る東北で温泉・渓谷・サイクリング旅」。サイクリングやハイキング、日帰り温泉を盛り込んだツアーを考案した。営みをテーマにしたチーム②は「五感を刺激する旅 矢祭町で美しく」と題し、バラの土産品付きの美や健康に関連するプログラムに。自然・風土をテーマにしたチーム③は「手軽に手ぶらで田舎生活つまみ食い!!」、という矢祭町の自然を満喫できるツアー。食をテーマにしたチーム④は、ターゲットをパティシエに絞った「希少フルーツ国産ラズベリー体験ツアー!!」。ラズベリー農家を訪ね、ラズベリーを用いた菓子づくりをするなど独創性が高い。自然・風土をテーマにしたチーム⑤は、「矢祭町・桜前線ツアー」として、矢祭町の桜の名所をめぐる内容だ。

矢祭ブランド会議の終盤にはこの日、成人式を迎えた矢祭町出身の松本虎ノ助さんが飛び入りゲストとして登場。
「『矢祭町には何もない』と皆さんは口を揃えますが、日々の暮らしのなかにこそ矢祭町の魅力がある。僕は専門学校を卒業したら、絶対に矢祭町に帰ってきます。そして矢祭町の活性化に力を尽くします」と、まっすぐなまなざしで語ってくれた。

最後は「新しい着眼点が得られました」、「矢祭町はいろいろな楽しみ方、過ごし方ができるんだなと改めて感じました」といった参加者それぞれの感想で締めくくり、第4回 矢祭ブランド会議は幕を下ろした。
2025年3月6日発売の『Discover Japan』でも、矢祭ブランド会議について掲載している。新たな“矢祭ブランド”が光り輝くその日まで、矢祭ブランド会議は供走を続けていく。
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text: Nao Ohmori photo: Hiroyuki Kudoh