日本の天然資源《クラフト温泉》とは?

クラフト温泉を知っていますか?温泉地で湯に浸かり、「自宅でも温泉が楽しめたらいいのに」と感じたことはないだろうか。温泉はリラックス効果もさることながら、ミネラル豊富で身体にもよい影響を与えてくれる。温泉地に行かずとも良質な温泉が楽しめる「クラフト温泉」の魅力に迫っていく。
クラフト温泉とは?

クラフト温泉誕生の地であり、研究開発拠点である「ルフロ西麻布LAB」。JAXAや教育機関、民間企業など、多種多様なパートナーとの新たな取り組みもここから生まれている
「クラフト温泉」とは、“日本の湯治を世界のTŌJIへ”をミッションに掲げる「Le Furo」の特許技術を用いてつくられる、超高濃度の温泉原液だ。天然温泉に温泉成分含有の鉱石を溶解し、温泉のミネラル成分濃度を増強。このプロセスを何千回と繰り返すことで、天然温泉比最大約1万倍に及ぶ琥珀色の温泉原液が完成する。
クラフト温泉の誕生は2013年。代表の三田直樹さんの秋田・玉川温泉での湯治体験が、開発の契機となった。
「とにかく強烈な体験で、鼻血は出るし全身に斑点も出る。驚いて医師に聞くと、『代謝が促進され身体機能が正常に戻ったゆえの反応でしょう』とのことでした」
温泉に興味を抱いた三田さんは、その成分に着目する。基本的に温泉の99.9%は水。その中で作用する残り0.1%のミネラルを増強しようと考えたのだ。
「ミネラルは身体を正常に機能させるための“触媒”。『すべての病態、すべての病気、すべての病弊を追究すると、ミネラル欠乏にいき着く』というライナス・ポーリング博士の言葉通りなのです」

三重・多気町につくられた、国内の文化やテクノロジーが集結する商業リゾート「VISON(ヴィソン)」。施設内には、TŌJIスパが楽しめる「Le Furo VISON」がある
三田さんは商社や証券会社で石油トレーディングに携わっていたからこそ、温泉の資源価値にも気づけたという。
「源泉数世界一を誇る日本の温泉資源には、石油と同等の価値があると考えています。これまで温泉は『現地で体験する』選択肢しかありませんでした。しかし、資源化に必須な移動と保管を可能とするクラフト温泉は、温泉の常識を覆します。TŌJIがグローバルなライフスタイルとなり、クラフト温泉が温泉のセカンダリーマーケットを構築できれば、日本の国益にも直結するでしょう。同時に、温泉地で楽しむプライマリーの価値も上がると思っています」
日本や世界に広がっていく
クラフト温泉

2022年3月、ドバイ初のスマートシティ「Digital Park」内に開設した、ショールーム兼オフィス「Le Furo FZE Dubai」。飲料用クラフト温泉の展開から、TŌJIカルチャーを発信していく
クラフト温泉は入浴液や飲料用などで楽しめるほか、各地に展開している「TŌJIスパ」では、クラフト温泉を用いたミネラル浴が堪能できる。さらに2022年、ドバイに初の海外拠点を開設。オマーンにおいては、現在クラフト温泉プラントを備えた温泉施設の建設が進められている。
「中東地域は石油資源の産出国であるがゆえ、温泉の資源価値も理解してくれるはずだと考えました。加えて海外からの評価は、日本人が温泉の価値を再認識するきっかけにもなるだろうと」
直近の目標は1000の源泉の資源化と20カ国での取り扱いだ。クラフト温泉の技術をオープンイノベーションとし、全国にプラントを建設するビジョンも描く。
「本来、資源は争いの火種ではなく、人々を幸せにするためのもの。ですから技術を独占するつもりはありません。私たちが目指すゴールは、日本の温泉資源の価値を上げることですから」
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text: Nao Ohmori photo: Shiho Akiyama
2025年2月号「温泉のチカラ」