広島県広島市
御菓子所高木の「蓬莱山」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は広島県広島市にある老舗和菓子店・御菓子所高木の「蓬莱山」をご紹介。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。14年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
新年のお祝いにふさわしいお菓子をご紹介します。広島で長年愛されている名店「御菓子所高木」の「新春棹菓子 蓬莱山」です。
白い薯蕷饅頭の生地を切り分けると、黒いこしあんの中に小さな3色あんのお饅頭が入っています。斬新なデザインに感じますが、歴史ある銘菓です。このお菓子には別名があり、見た目から子持ち薯蕷と呼ばれたり、蓬が嶋とも呼ばれています。子持ちにした3色あんは松竹梅を表しているのだそう。蓬莱山や蓬が嶋は中国の伝説にある不老不死の仙人が住む理想の神山のこと。松竹梅が生い茂り、鶴亀が遊ぶ島として、古来多くの美術品に描かれています。
パッケージは染色家の柚木沙弥郎のデザインです。実は御菓子所高木は約50年前から柚木に折あるごとにパッケージデザインを依頼してきたという歴史があります。蓬莱山もそのひとつ。かわいらしい神山の挿画に思わず笑みが浮かびます。しっとりした薯蕷に包まれたなめらかなあんは甘さ控えめ、上品な後口でお茶が進みます。万人に愛されるお菓子です。
line
御菓子所高木
住所|広島県広島市中区十日市町1-4-26
Tel|082-231-2121
営業時間|9:00〜18:00
定休日|元日
www.okashidokoro-takaki.com
text: Natsu Arai photo: Yuko Okoso
2025年1月号「ニッポンのいいもの美味いもの」