島根県松江市 彩雲堂の「若草」
《福田里香の民芸お菓子巡礼》
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、島根県松江市・彩雲堂の奥出雲の質の高いもち米を使用し、ふっくらとした求肥をまぶした「若草」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。12年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
雲国松江藩の7代目藩主・松平不眛公は、江戸時代を代表する茶人です。いまもその茶の湯の精神は息づいています。大の菓子好きとしても知られていて、今回ご紹介するお茶菓子「若草」も不眛公の御歌から命名されました。「彩雲堂」は、島根県松江市で1874(明治7)年に創業。初代の山口善右衛門が春の茶席菓子「若草」を復活させました。
彩雲堂の代表銘菓「若草」は、熟練の職人が独自の製法で練り上げたふっくらとした求肥に薄緑色の寒梅粉をまぶしたお菓子です。その意匠はまるで萌え出る新緑のよう。シンプルに美しく、春にいただくにふさわしい洗練されたお茶菓子です。ところで島根には出雲民藝館や民藝運動に縁の深い湯町窯、出西窯などがあるお土地柄です。ここ彩雲堂にも民藝の息吹を感じる意匠がありました。実は彩雲堂の包装紙は棟方志功の筆描き絵なのです。版画ではないのが新鮮。「彩雲堂」の文字も棟方の書で、本店に掲げられています。島根で民藝をめぐる旅をするなら、お土産は彩雲堂のお菓子一択です。
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彩雲堂 本店
住所|県松江市天神町124
Tel|0852-21-2727
営業時間|9:00〜18:00
定休日|不定休
http://www.saiundo.co.jp
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
Discover Japan 2023年4月号「すごいローカル見つけた!」