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《古賀雄大》
ガラスの流動性を生かしたニュアンスのあるうつわ

2022.12.9
《古賀雄大》<br>ガラスの流動性を生かしたニュアンスのあるうつわ

いま注目の若手ガラス作家・古賀雄大さん。美しく個性的な造形が魅力の古賀さんのガラス作品は、定番のステムグラスから色ガラスやオブジェまで、バリエーション豊富で挑戦的。柔軟なアイデアと技術力で生み出される古賀さんのうつわとその手仕事の裏側に迫る。

渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、2022年12月17日(土)~2023年1月9日(月)にかけて「古賀雄大 企画展」を開催。公式オンラインショップでは12月19日(月)20:00より順次販売開始します。

古賀雄大(こが ゆうだい)
1988年に福岡県久留米市生まれる。2011年に東亜大学医療工学部医療栄養学科にて管理栄養士免許取得し、卒業後は琉球ガラス工房「海風」にて職人見習いとなる。2016年富山ガラス工房に所属。2022年に独立しKOGA GLASS STUDIO設立。フリーランスのガラス作家として活動中。

「ガラス作家は人生におけるチャレンジだった」

「小さい頃、あるテレビ番組でガラス作家という職業を知りました。すごく楽しそうにものづくりをしている様子がとても印象的だったんです」

古賀雄大さんは幼少期を振り返りながらこう語ってくれた。
福岡県久留米市の出身だが、高校は島根県の全寮制に通った。一日3回の食事は生徒が当番制で作る学校だったという。当時、料理をすることが楽しく調理師を目指そうと思った時期もあったが、周りのアドバイスもあり管理側の栄養士になるために大学へ進学。しかし卒業を控えて、ふと思い立ったという。

「人生でチャレンジするなら今しかない」
自分は栄養士になりたいのか? 本当は現場で手を動かすことが性に合っているのでは? と一念発起したのが卒業間近のこと。その時、小さい頃にテレビで見たガラス作家を思い出した。

「今思えばですが、おばあちゃんが使っていた琉球ガラスのぐい呑みが気になっていたり、家にはたくさんのグラスがあって、親の不在時に内緒で特別綺麗なグラスでジュースを飲んだりしていて…なんとなく興味はあったんだと思います」

小さい頃の記憶をたどりつつ、「ガラス作家」という職業にチャレンジすることになった。ゼロからのスタート。未経験で雇ってくれるところならばと色々探して、受け入れてくれたのが沖縄のガラス工房だった。

「お土産品と客向けの体験をメインとする工房で、琉球ガラスの製品を量産していました。学校じゃないので手取り足取り教えてもらえず、とにかく見て覚えろ、技術は盗めという感じでひたすら働きましたね。ただ、僕がいるときは先輩が抜けるということがあまりなく、ほぼ見習いの立場で6年働き続けました。あたえられた持ち場で繰り返し繰り返し作業をしていました。辞めた時点では、グラスひとつをようやく一人で作ることができる技術を習得した程度でした」

働いていた沖縄のガラス工房と富山のガラス工房とでは定期的に交流があったという。そこで古賀さんは富山でガラス製作が盛んに行われていることを知った。個人で借りられる窯の設備が整っていたり、ガラスに関しての情報が多く集まるということはガラス作家にとって、とても魅力的だった。
「富山のガラスに多様性を感じました。いろんな場所からいろんな経験をした人が集まっていて、情報が集約されているんです。さまざまな表現が生まれる現場だと思いましたね」
妻の実家ということもあり、古賀さんは富山へと拠点を移すことになった。富山ガラス工房に所属し、その後、独立を果たす。

固体ではない、ガラスの流動性を生かしたニュアンスのある作品。

古賀さんの作品には吹きガラスだからこそのニュアンスと、人の手によって生まれる暖かみがある。それに加えて見る角度や時間帯、場所によって変わるテクスチャーの豊かさは、どのようにして生まれるのだろうか。

「作家として、ガラスを10年扱ってきました。高温で溶けている間の流れる様子、割れてしまったその瞬間だったり、思うようにいかなかった時に出る表情、自分が感じてきた、その一瞬に潜むガラスの美しさを表現したいんです。光をあてることで生まれるガラスの屈折やその影も含めて」

溶けたガラスの“流動性“を生かしたいと話すが、まさにその流れるような表情は、冷え固まって実用性のあるものに生まれ変わったところで全く失われていないのが古賀さんの作品の特徴ともいえる。

最近では自分の作品を使っている人たちのSNSからも情報をもらいながら、よりニーズにあったものを制作したいと話す。個展やイベントの度に新作を発表し、その反応見ながら自分のスタイルを模索している最中だ。常に自分の技術の向上を目指して、よりクオリティの高いハンドメイドの作品を追求している。

描いた作品が表現できる技術力。

「僕は、ガラスを吹く技術で個性を出したいと思っています。サンドブラストや絵付を加えてその人らしくなるということもあるんですけど、そういったことは苦手でして(笑)。例えば『ゆらぎ』は、温度管理で表情の操作ができるんです。温度が高い部分を吹くとすんなり膨らんで、低いところはあまり膨らまないんです。それによってガラスの厚みに差が出ますよね。その状態でまた吹いて縮めると、ガラスがよれて結果ゆらぎが出るんです。どうしたらこういう表情が生まれるか、それはもう経験から得た技術です」
最近では自分の経験に伴ってできることが増えた、とも話してくれた。

「古賀雄大 企画展」の見どころは?

普段制作するものは、一人で過ごす、ゆったりとした時間の流れの中で使ってほしいものが多いと古賀さんは話す。しかし今回は年末年始の人が集まる季節ということで、大きめサイズのプレートや、色のバリエーションを増やしたグラスなどが展開される。秋冬の落ち着いたトーンの色味をメインに、もしかしたら普段あまりない明るめのカラーが登場するかもしれない!

「色のチョイスは感覚的なところがあって、割と控えめな色が多いんです。料理の背景になるというか、料理を引き立たせるような。でも今回、グラスに関しては少し華やかな色にチャレンジしてみようと思っています。今年最後の展示なので、僕の集大成が見えるものにしたいです」

リムカラープレート
口巻き(口の部分に色ガラスをつけること)を施し、縁の部分を折り返しお皿の形に広げる。折り返した部分に空気の空洞ができ、そこに差し込む光が縁の色に反射して表情を豊かにしくれる。(本展ではピンク部分をグレーにしたタイプが登場)
ショートステムビアグラス
グラッパグラス
普段使いしやすいようなサイズ感。口は薄めにつくっているのでワインでも違和感なく使える。カラーはグレーやクリアなどシンプルなものが多く、コーディネートもしやすい。今回は特別に華やかなカラーの新作が登場するかも?
FLOWロックグラス
上部の口元が開いているので結露しても安定感があり持ちやすい。「底の部分は厚みに変化を持たせ、揺らぎを閉じ込めているんです」と古賀さん。水を入れると閉じ込められた揺らぎが解放されたように動き出す。一人でゆったり過ごす時間のお供にどうぞ
ロックグラス(コシノアオ)
富山湾をイメージした、青と緑の間の色は富山ガラス工房オリジナルカラー。モールド(型)にガラスを吹き込んで、縦のラインをつけた後ピンセットでつまんでダイヤ型にする。「青いガラスは柔らかい色で、仕上がった時に口の部分が波打ったようなゆらぎになるんです」(古賀)口当たりも楽しんでみたい

2024年を目指して故郷・福岡県に自分自身の工房をオープンする予定の古賀さん。
「工房が運営できるようになれば、ガラスを体験する場として開いていきたいと思っています。作品をつくるのはもちろんですが、何よりガラスのおもしろさを伝えたいし、もっともっと身近に感じてほしいですね」
沖縄と富山のふたつの土地での経験が、着実に古賀さんの個性となり、生き方、作品に表れている。

読了ライン

 

古賀雄大の作品一覧
 

古賀雄大 企画展
会期|2022年12月17日(土)~2023年1月9日(月)
オンライン|2022年12月19日(月)20:00より順次販売開始
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00〜21:00
定休日|不定休
※最新情報は、公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください!

text=Wakana Nakano

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